妹と我が家の朝
「...ちゃん!」
幸福感あふれるまどろみの中から、俺を引きずり出そうとする声。
「...ぃちゃん!けいこ...]
あー、けいこちゃん。小学校の時のクラスのマドンナ。かわいかったなぁ、元気かな。
「にぃちゃん!けいこ遅れる!朝ごはん!」
その声は寝ぼけて小学校時代にトリップしていた俺を現実へと引き戻した。
しかしここで起きてはならない。起きたら負けだ。
「よし、なら必殺☆内臓爆裂パンチをやるしか...」
「んー、いい朝だなぁ!おはよう、里緒奈!」
「おそい!おなかすいた!」
「よーし、すぐ支度するから、1階で待っててくれ。」
「はやくしてね!」
そういうと我が妹、小学5年生にして空手世界チャンピオン、里緒奈はトコトコと階段を降りて行った。
あぶねえ、主人公が二話にして早くも死ぬところだった。
てかなんだよ、必殺☆内臓爆裂パンチって。☆って書けばなんでもかわいくなると思うなよ。
なんとなくだが、この愛すべき妹の出番は少なそうだな。勘だけど。
そんなことを思いつつ、制服に袖を通す。
今日から新学期。春休み中、ずっとお休みしていたこれを着ると、気が重くなる。
ブレザーに袖を通し、重いからだを引きずるようにして自分の部屋から這い出ると、階段を降りて、台所へ向かう。
すでに里緒奈は四人掛けテーブルにちょこんと腰かけて、テレビを見ていた。
我が家はめざまし派だ。
俺はイスにかけてあるエプロンを手に取り、腰に巻き付ける。
この家では、俺が料理担当なのだ。
ちなみに両親はというと、3年前に「ポケ〇ン探しにいくわ」と言ってどっか行った。いるといいね。ポ〇モン。
キッチンに入ると、まずボウルに卵を落とす。手際よくかきまぜ、塩コショウをふる。フライパンにそれを注ぎ、ぐちゃぐちゃにかき回す。タイミングを見極め、プレートに盛り、その後ソーセージも炒めて、プレートに。
そしてとどめに冷蔵庫の大量の野菜を40秒で切って、盛り付け。
これが3年間で身に着けた早業!スクランブルエッグプレート!!!
「里緒奈、できたぞー」
そういってプレート二枚とサラダの器をテーブルに。
「また野菜ばっか。」
そんな文句を言いつつも、すべて平らげるのが、俺の妹のかわいいところ。