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醜悪な仮面を被る者
※西洋FT、創作SS、騎士×お嬢様
夜道に揺らぐ松明の灯り。
風に乗って騒ぐ木の葉の音に、カツカツと足音は夜闇に響く。
レースとシルクで作られた柔らかな素材のドレスを着た少女は、庭園のある木の下で立ち止まった。
視界に映るのは月光を浴びて綺麗に光る銀甲冑だ。
「――それで貴方は、いいの?」
青年に問いかける。
少女の黒髪と、青年の茶髪が風に靡く。
かしゃんと甲冑と腰に帯びた剣が音を立て、青年は振り返った。
「いいと言った。俺にはこの道しかない」
低く静かな、透き通った声。
決めたことだと青年は言った。
全ての罪を被って、この国を去ると。
どれほど醜悪に、手酷く蔑まれようと信じた道を貫くのが騎士道。
こんな風にしか生きられないからと、青年は告げたのだ。
「……いつか、帰ってくるのでしょう?」
切なげな問いのみが綺麗な星空の下に響いた。
了