囚われの少年は何を見た?
※西洋FT、創作SS、囚われ少年&衛兵
牢獄。
纏わりつくような湿気を帯びた冷たい鉄格子で仕切られた場所。
牢の一角で、少年は膝を抱えて蹲る。
通路の壁に備え付けられたランプは、等間隔に周囲を照らしているものの数も少なく、足元が分かる程度だ。
淡いオレンジの色が少年を照らすが、その光すらも拒むように顔をあげない。
定期的に見回りに訪れる衛兵の足音のみが響く。
「……おい、坊主。少しは喋る気になったか」
半ば諦めたような口調で衛兵の男は問いかける。
四十路手前ほどだろうか、胸当てに皮製の靴、その他は麻や木綿と衛兵にはよくある軽装だ。
腰には長剣が提げられていた。
少年の反応はない。
明るめ茶色だった少年の髪も、今や汚れてぼさぼさだ。
服も破れや汚れが目立ち、見え隠れする腕や足も十歳の少年とは思えないほど細い。
石造りの壁のごく僅かな隙間から吹き込んだ風が、ランプの灯りを僅かに揺らした。
鼓動を数十数えた所で、衛兵は深く息を吐く。
「今日もダンマリかい。まぁ、俺の仕事にゃ直接関係ないから構わないが」
主な仕事は牢内の見回りだ。
上からの命令で形ばかりだが、声をかけているだけに過ぎない。
衛兵は少年の牢の前から足を進めた。
少年が何を見たのか、いまだ誰も知らずにいる。
了