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ある村での生活(2)

フィーの父、ゼムを含む村人の帰りが遅い。

不安がるフィーを家に帰し、夜の森に捜索に出たリーフ。

そこでは賊に襲われるゼム達がいた。

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一人称視点で書いてみました。


誤字、感想などよろしくお願いいたします。

 月明りも届かない地面、周囲に流れる昆虫などの鳴き声。

 そんなある意味で静寂な森の中をリーフは片手に松明を持ち歩く。

 本当に細く小さな道…2ヶ月も歩まなければ周囲の雑草に支配され、消えてしまうような細い道。

 後腰に横に装備している2本の剣もこすれあう音さえ出さない無音の歩み。

 足下の雑草と踏んだ土が擦れる音…リーフが発する音のすべてだった。


 「…」


 歩みを止めリーフが周囲に視線を巡らせる。視界に入るのは暗闇…


 (うわぁぁっ!!)


 リーフの耳に聞き馴染んだ男の叫び声が僅かに捉えられた。

 すぐさま最高速に達した疾走で暗闇の森の中を駆け抜ける。

 頬に掠る小枝や葉が極軽い切り傷を作るが全く気にした様子は無い。

 前方を見つめ見えないはずの樹木を軽いサイド・ステップで躱しながらその勢いは全く落ちない。


 不意に後ろ手に腰の長剣を鞘ごと抜く…

 その長剣は全長で1.5mほどになる。後腰で横に帯びたそれを木々に当てずに暗闇の森を駆け抜ける。

 その右手の鞘から左手が剣を抜く…松明は鞘と一緒に右手に持たれたままだ。


 「みんな、逃げろ!!」


 男の声と…声にならない叫び…が急に開けたリーフの視界に入った。

 …途端に長剣一閃…

 数人の男の背に短剣を叩きつけようとしていたモノの胴が内容物を引きながら落下する。

 既に充満しつつあった血の匂いが濃くなったように見えた。

 一瞬の静止がこの場を支配する。

 俺は長剣を左手に下げながら周囲を確認する。


 「ゼムさん、大丈夫ですか?」

 「…」

 「ゼムさん!!」


 応えないゼム…フィーの父親にリーフは強く叱咤する。


 「あ…なんとか…」

 「彼らは?」

 「知らん。突然襲ってきた…」


 軽装備の戦士といった風体の男が3・4・5・6…7人。死んだ男も入れた彼らがゼム達5人を襲っていたということか。


 「とにかく逃げてください。後はなんとかします」


 リーフは右手に鞘ごと持っていた松明をゼム達の足下に投げる。

 震えた手で松明を拾うとゼム達5人は、傷ついた身体を鞭打つように村に向かう道を走っていく。



 声を出すような馬鹿な真似を彼等はしなかった。

 ただ狂気を表情に乗せ、無言でリーフを囲んだだけだ。

 彼等は知っている…声が相手に思考の余地を与えることを…誰も殺せてはいないが荷物を奪うことには成功している。

 あとは突然現れた男を追い払うか殺せばそれで済む。

 いきなり斬り殺されたヤツには不運だったとしか言えない。

 もっとも…こんな所で『賊』など、やっている自分達が『幸運』などというものに縁のないことなど分かり切っている。

 町でやり過ぎていられなくなったのも不運、こうして族などやっていることも不運、そして適度に獲物にありつけ、生きていることは幸運だと言える。

 だが…


 一見、長身の女にも見える剣士が手にする長剣が何も無い空間を薙ぐ。

 ゆっくりと掃われたそれは牽制でしかない。


「 さて…これ以上悪さをしないというなら見逃すが…」


 突如現れて、獲物を逃がした剣士の提案。その声も中性的で聞き惚れるほどだ。だが受け入れるわけにはいかない。

 ここにいる俺達はこういう「生き方」しかできない連中だ。

 無言で剣を眼前に構えることで返答とする。


 「なら…行く…」


 足元の地に切っ先を向けていた剣士の長剣が突如跳ね上がった…気がした。

 その直後に右肩から左腰に焼けるような痛み!!

 全く押されることなくその場に落ちる。それだけで意識が遠くなり、視界が利かなくなる。



 一番近くで剣を構えた男に接近一閃。左袈裟に切りつけると、剣先の勢いを殺さぬように手首を返しながらそのまま身体を一周させる。

 俺の長剣はその長さが災いし、切り返しには向かないが、切っ先の勢いは常の剣を遥かに超える速さを実現する。

 速さはそのまま一撃の「重さ」になり、長剣の元々の重さも加わることで簡単には弾かれない痛烈な一撃となる。

 剣が以前の業物とは違うので大した切れ味は発揮しないが、普通の相手なら十分な脅威になる。

 (5…)

 頭の中で残りの人数を数えながら、囲まれないように…かつ太い樹木に近づかぬように自分の位置を変える。

 多少、人の腕くらいの木々なら無視できる切れ味を持つ長剣だが、それ以上だと邪魔になる。

 横から胴を狙う賊の剣を長剣の柄元で相手の身体の外側に向けて弾き、返す勢いで真直に切り返す。

 確かな手応えを得るとともに賊の身体を蹴り飛ばし視界と空間を確保。そのまま周囲に目を配り追撃を阻止。

 (4…)


 (こりゃぁ…全滅だな)

 俺は対峙する剣士から目を離さずそう結論づけた。かなり戦場慣れした剣士だ。

 この「森」という長剣には戦いにくい場でその利を失わない立ち回りができる。

 冷静、かつ大胆な戦い方。剣の腕もそうとうなものだ。

 (だからと言って、逃げるわけにはイかねぇよなぁ)

 賊に落ちているとはいえ、俺たちにだってその生き方に矜持がある。賊には賊なりの生き方、相応しい最後ってのがある。

 相手に降伏ってのはありえねぇ。

 今まで、狩ってきた者に対して意地が通らねぇ…

 くそったれな意地でもそれが意地ってもんだ。

 賊のリーダーになんとなく納まって通してきた意地、貫かせてもらう!

 カイという名の賊は…名乗ることも無くなって随分と経つが…は、常から覚悟を決めていた事をここで改めて覚悟した。


 「おい、行くぞ!!」

 「おう!!」


 リーダーらしく怒声で声をかけると、残りの4人も剣士をにらみ…2人ずつ時間差で斬りかかった。



 前…左右に分かれて斬りかかってくる2人に横薙ぎの一閃。鈍い抵抗が2つ。

 視界の横をすぎる「それら」に見切りをつけ、次の2人を見る。

 後に流れた長剣の返しも間に合わないタイミングで左袈裟と右横に振るわれた剣を天地が逆になるほど高い後転跳躍で躱し、跳躍の際に手放した長剣の切っ先に着地。反動で跳ね上がった長剣の柄を左手が掴む。

 同時に長剣の切っ先が賊3人に向かって土を飛ばす。

 次撃の体制に移っていた賊の腹を突く…

 (2…)

 剣身の中程まで突き込まれた長剣を手放し、もう一つの剣を逆手に抜き、傍にいるもう一人の胴を薙ぐ。

( 1…)


 「おおぉぉっ!」


 戦声に相手を殺す意志を乗せ、カイは剣士に斬りかかった。

 次の一撃など全く考えない一撃。躱されればそれで死。

 その一撃を剣士は右蹴りで力の乗らない柄元を蹴り勢いを逸らし…そのまま回転の勢いに換えて右逆手の剣でカイのガラ空きの胸を斬った。


 (ふぅ…)

 賊7人を斬殺し、周囲の気配に人のそれが無いことを確認すると俺は賊の服で剣2本の血脂を拭った。

 そのまま傍の樹の枝に登り気配を消す…

 返り血の匂いは賊7人の匂いにまぎれて簡単には捕まえられないだろう。

 しばらく様子を見て後続がいないことを確認し、日が昇り始めるのを待って村に帰り始めた。


次は村の話に戻りますが…

町まで行けたらいいなぁ…とか、思っています。


次話、不定期ですがよろしくお願いいたします。

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