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会議を始めようか

 携帯電話を持ち帰った僕は、起こったことを頭の中で整理しているうちに眠りへと落ちてしまったらしい。

 目を覚ませば、けたたましい母親の声。

「いつまで、寝てるの!」

 朝ごはんも出来たわよと、僕の部屋のカーテンを開け放ち、慌ただしく階段を下りていく足音。

「今、何時だよ」

 寝ぼけながら、夏休みに入って時計としての役割をするだけの目覚まし時計を確認する。

 予想していているよりも睡眠をとりすぎてしまったらしい。

 おはようからこんにちはだ。

 かーちゃんが先程残していった、朝ごはんも出来たわよという言葉は嫌みととっても構わないのだろう。

 のっそりとTシャツと半パンに着替え。

 階下に降りる。朝メシ仮昼メシを平らげ、すぐに出かける。

「どこ行くの?」

 真佐美の家、と自転車に跨がりながら答える。

 僕は昨日の出来事を簡潔に話すつもりだ。自転車を漕ぎながら、どのように話そうか考える。

 信じてくれるかどうかはわからない。ま、最終手段として現場にあの三人を引っ張って行くつもりではある。

 しかし、万が一に僕がキチガイになってしまった場合を頭の片隅に留めておいたほうがいいだろう。

 もし、そうだとしたらここまでだ。

 自害してしまおう。

 たぶん、無言電話やメールがあったのは真佐美と勝人、和博だけではないのだろう。

 特に、異性の方達には気持ち悪くてたまらないに違いない。

 勝人や和博ですら、昨日のあの反応だ。


 眠りにつく前に、真佐美からメールが届いていた。

 明日、12時にわたしの家に来て。

 そう、そっけなく書かれたメール。ちなみに、ただいまの時刻は12時15分。

 真佐美に怒られるかもしれない。だぶん怒らないと思うけど。

 勝人も真佐美の家にくる予定ならば、1時間は約束の時刻を過ぎると考えていい。

 あいつは、いつもなんらかの理由をつけて遅刻する。

 それにしても、昨日は一人であたふたしていたため尋ねなかったが、真佐美は勝人をどうやって秘密基地計画に引き込んだのだろうか?

 あいつは、暗記物の教科を必死で詰め込んでいるはずだ。理系の教科を捨てて上位の大学を狙っている。

 そのため、暗記科目の知識をアウトプットしている。

 辛いだろうに、借金をかかえてのスタートはそりたつ壁のように感じるだろう。てっぺんは雲に隠れ見えないことだろう。

 中学、高校の予習復習の重さを身に染みて感じている頃だろう。

 ざまーみそづけ。

 しかし、その勝人をこうも容易くこちらに引き込んだ。

 真佐美は侮れない。

 あとは和博だ。勝人に対抗するため勉強に力を入れはじめた。勝人に次ぐ成績の悪さではあるが、勝人と異なる点は自分の成績の酷さを恥じていた。

 恥じてはいたが、それを改善することはしなかった。

 夏休み間近、担任が受験生の自覚を持ちなさいと締めくくる。みんなが様々な思い思いの夏休みを夢見ながら、教室を出ていく。その教室で和博はメガネ軽く持ち上げる。

「俺は最後に勝つ」

 こう、断言していた。

 だから、今年の夏休みに自分を地獄へとたたき落とす。はいあがった時、真佐美と根太に追いついているだろう。

 夏休みが終わったら、お前らと同じ目線だ。

 そう、言い残して去っていった。

 だから、和博は勝人よりも手強いと僕は分析している。

 自転車を停めて、真佐美の家の前に立つ。

 本当にでかい。僕の家の敷地の10倍はあるであろう。庭にはプール、植物園、そして自由に駆け回るゴールデンレトリバー。

 何回通っても、どこか緊張せずにはいられない門構え。

 インターフォンを鳴らして、真佐美を呼び出す。

 誰かが応答する。

「すいません。岩城根太ですが、飛田真佐美さんはいらっしゃいますか?」

 主が答える。

「おー、こんたか」

 主ではなかった。

 この声は、野崎和博。なぜ和博が。

 だんだん真佐美がどうやって説得したか気になりはじめる。

 僕はもんもんとしながら、真佐美の家に足を入れた。


 勝手に上がって、勝手に真佐美の部屋にこいと、なぜか和博に指示される。

 カンに障るところがあるが、素直に真佐美の部屋に向かう。

 この家には螺旋階段があり2階が真佐美の部屋。天井は吹き抜けになっており、広い家がさらに広く見せている。

 部屋のドアを一応ノックして中へと入る。

 真佐美の部屋にいるのは、和博。ソファーで足を組み、紅茶を右手に持ち、和博の前の小机にケーキセットが置かれている。

 その和博が僕を見上げて出迎える。

「ようこそ。真佐美の部屋へ」

 あのフチナシメガネを叩き割りたい衝動に駆られる。

 真佐美はというと、自分のベッドにチョコンと座り、はにかんで笑っている。

 真佐美のてにはペットボトルのば~い、お茶。

 聞かなければいけない質問をする。

「なんで、おまえがケーキを食べていて、真佐美がお茶なんだ」

 こんなこと聞きたいわけではないかったのに。まんまと和博のペースに乗ってしまう。

 なぜか、真佐美が合いの手を入れる。

「最近太り気味なんだよー」

 そして、和博が言う。

「最近痩せ気味なんだよー」

 和博なんてこんな奴だ。

 勝人が到着してから、全てを聞こう。


 インターフォンが響く。

 時計は北東を指す。約束の時間を2時間遅れ。

 勝人にしては合格点の遅刻だ。遅刻の合格点があるのかないのかは別として。

「真佐美の部屋は涼しーいなあ。外は灼熱地獄だぞ」

 うちわで仰ぎながら真佐美の部屋に入場。

 これで、いつもの四人がそろった。バランスのとれない四人。

 さて、会議をはじめよう。







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