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プロローグ 昔話
あなたは手に触れるだけで、その人が誰であるのかわかりますか?
あなたは手を握ることで全てを伝えることが出来ますか?
私は手が無くなることを恐れています。いつも握っている、あの手を離すことをしてはなりません。どんなに辛くても、その手を握っていなければならないのです。
一瞬で私は迷子になりました。目の前が、白い世界に覆われたのです。隣には私の大切な人。少しずつ白に覆われていく。あなたの体が、顔が覆われていく。最後にはつないだ手も覆われていく。何も見えないこの白の世界。彼が私を突き飛ばす。握る手は離されました。私は黒の世界へと押し込まれる。彼はまだ、白の世界。彼は重い鉄板でゆっくりと塞いでいく。確実に分離されいく、私と彼の世界。彼が何か言っている。私は聞こえなかった。笑っていたように思います。私は泣いていたのに。耳を割くような音。ここも崩れてしまうのでしょう。あなたがまた、私の手を引っ張ってくれるのを心待ちにしております。それまで私は地球の真ん中で眠っております。だから......だから......次に目覚める時はあなたの手で。