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日浦さんと金魚鉢  作者: お絵描きガーディアン


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1話

2010年8月1日

「お母さん!金魚すくいしたい!」

キッカケは、近所の公園のお祭りで金魚すくいをお母さんにさせてもらったことだった。

母は金魚すくいの屋台のおじさんに五百円を差し出し容器とポイをもらい、僕に渡した。

僕は一生懸命に金魚をすくおうとしたが、一匹しかすくえなかった。

「…金魚おうちで飼ってみたい?」

「うん!」

それから僕は毎日金魚のお世話をすることになった。

ペットを飼うという経験は初めてだったため精一杯にお世話をした。

それから一ヶ月が経ち金魚は、三センチほどだった体が七センチほどにまで育った

「金魚に名前はつけないの?」

僕が金魚を眺めていると母が話しかけてきた。

「名前…めいでいいかな。」

「あら、かわいい名前。どうして?」

どうして…特に意味はないが可愛らしい名前をつけたかった。

「かわいいから…」

すると母は微笑んだ。

「金魚…ほんとに飼ってよかった…悠人今まで夢中になれるものがなかったじゃない?でも金魚を飼ってから毎日が楽しそうで…ほんとに嬉しい」

「…僕もめいを飼ってから少し毎日が楽しくなった、ママ!これからも育てるのがんばる!」

「ふふ、育てるって…親みたいね。じゃあ今日から悠人はめいちゃんのパパだね」

「…パパ!めいちゃん!今日から僕が君のパパだよ!」

僕はめいに笑いかけた。


2019年9月7日、僕が十五歳の頃

ペットの金魚、めいが死んだ。

それから世界が灰色にみえるようになった。

めいとの時間以外で夢中になれるものがなかったため勉強にひたすら集中するようになった。

だいたい八時十五分ほどに学校に向かって、学校では授業をぼんやり聞いて休み時間もぼんやりして家から帰って勉強をして風呂に入って食事をとって睡眠…休みの日は勉強だけをして…

そんな毎日を繰り返すばかりだった。

一匹の金魚がいないだけで、こんなにも日々が変わってしまうなんて…

あの一匹の真っ赤なりんごのような金魚に、

今も僕の心は奪われたままだ。


2026年3月20日

僕は大学を卒業した。

だけどやりたい仕事がないため、お母さんが管理する神社の神主を引き継がせてもらうことになった。

自分から頼んで引き継がせてもらったため、毎日神社の掃除やお祓いお供えなど神主の仕事を全うしている。

神主の給料は意外とよく三十万円だ。

神主としての立場を譲ってくれた母はというと、現在看護師をしている。

実はと言うと母は神主としての仕事を気に入ってなく、また看護師として仕事ができて満足みたいだ。

本当によかった…母が仕事を譲ってくれなかったらやりたい仕事がなく無職になってたところだった…

僕はそんなことを考えながら夕焼けに照らされた神社で、掃き掃除をしていた。

よし、もうすぐ掃除が終わりそうだ。

でも掃除が終わってもやることがないんだよなぁ。

終わったら家の掃除でもして夜飯でも作るか。

今日の献立はどうしようか…なんかうどんが食べたい気分なんだよなぁ。

俺の腹が炭水化物を求めている。

今日はカレーうどんにでもするかな。

スーパーにでも行ってカレー粉と、玉ねぎ、豚肉、うどんの麺とそれに…

「あの!日浦悠人さん!」

「!?」

いきなり聞き覚えのない声が聞こえてきてびっくりした。

声の主を探そうとして左右や上下を確認すると、少し視線を落とした先に小柄で小さな女の子がいた。

「えっ…えと、どうしたのかな?」

僕はにこっと笑いかける。

「あっあの…!」

その子と目があった。

その瞬間僕はその子に見惚れてしまった。

鮮やかな赤髪をツインテールに結び、ぱつりと揃えられた前髪の奥から、まっすぐこちらを見上げてくる。その視線は年相応のあどけなさを残しながらも、どこか不思議と落ち着いている。

彼女の纏う着物は、青と淡い色が縦に流れ、その上を黒や赤の金魚がゆるやかに泳いでいる。

帯の矢羽模様が彼女の着物の柄を魅力的に引き立てていて、とても美しい。

その見た目はまさに僕の好みにど真ん中で…って何考えてるんだ!?

この子は見た感じ十三歳だぞ!?僕はロリコンだったのか!?

だめだだめだ!落ち着け、俺!

「あっ…あの、ちゃんと聞いてます?」

「あっ…ごめん、どっどうしたのかな?」

僕は我にかえった。

「…実は私、この神社が好きでその…せっかく十六歳になったからこの神社で巫女として働きたいなって思って…だからその…話しかけちゃいました…」

「…」

十六歳だったのか…そうには見えないな…ていうか、困ったな…この神社、過去に一人巫女を雇ったことあるけどもう雇ってないんだよなぁ…。

僕はどう返すか考えてると、

「…ごめんなさい…迷惑ですよね…やっぱり…大丈夫です。」 

「!?いやっそんなことないよ!偶然巫女でも雇おうと思ってたんだよ!ぜひこの神社で働いてくれ!」

僕は悲しむ彼女を慰めるように、巫女として雇うことを決めてしまった。

まあ、とりあえず雇用の書類に名前書いてもらうか。

「まあとりあえず、君を雇うために書類にサインしてもらわなきゃいけないからついてきて。」

僕はこの子を境内の奥にある自宅に案内した。

家に上がらせると、巫女としての契約のために書類にサインをさせた後、彼女を帰らせた。

僕は彼女を帰らせた後テレビをぼんやり眺めながら色々考えていた。

…巫女を勢いで雇ってしまったけれどこれからどうするかなぁ…。

僕はとりあえず机の上のお茶をズズッと啜った。


赤髪のツインテールの少女は日浦神社の鳥居の目の前で、オレンジ色に染まった空を見上げて静かに立ち尽くしていた。

「…やっと会えたね…パパ…今度は私がパパを幸せにしてあげる番…」

橙色の空を、紫がじわじわと侵していく。

そろそろ時間だ。

「また明日会おうね、パパ」

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