ヒーローたちのいない世界
以前投稿したものの再投稿です。
友人にこれ好きだった!と言われたので、思い切って出してみました。
たのしんでいただければ幸いです。
モソモソと噛み締めるトーストの味が、一気になくなったような気がした。
たまたま早く起きて、たまたまニュース番組をやっていたってだけ。
それをたまたま見ていたってだけ。
もっとも、これくらいのニュースがあれば、バラエティーでも速報かなんかで伝えられていただろうけど。
それでも、十分な衝撃だった。
お母さんがトントンと包丁を扱う音も、カチコチという時計の音も、確かに聞こえていたはずなのに、テレビから聞こえたそのたった一つの事柄だけが、鮮やかな色を持って目の前に迫っていた。
ありえないようなことのはずなのに、戸惑って当たり前なのに、アナウンサーは淡々と繰り返す。
『ただいまお伝えしましたように、小惑星クリシスが他星との衝突によって軌道を変え、八月三十一日の夕方に地球に再接近、または激突する兆候が確認されました。激突した場合、地球全土が壊滅する可能性があり_________』
1
「地球、壊滅だってさ」
学校へ登校する途中、全く軽い調子でそういったのは、幼馴染の北斗朔弥だった。
特徴的な金髪頭をゆらしながら、まるで遊びの相談でもするかのようなその口調に、思わず呆れ返ってしまう。
「あんたね、生きるか死ぬかの話でしょ。もうちょっと神妙になんなさいよ」
それを、天乃まどかが神妙さのかけらもない言葉で咎める。
まどか、それ言えないよ?
私、宮江晴乃は、思わずほおを引き攣らせた。
「でもさ、真面目なハナシ、今回のこと二人ともどう思ってるの?」
そう問うと、二人はあっけらかんとした様子で答えた。
「え?俺は、大して驚くことでもないかなって。どうせいつかはこういうこと起こるわけだし」
「ぶつかるかもだけど、今から悲観的になってもね」
いや、二人とも理論が大人びすぎている。
今時、大人でさえこんなに客観的な見方をできる人なんていないだろう。
その言葉を喉の奥で押し込めたまま、私は笑みを作る。
「・・・・・・そうだね」
「でも、こんな時、ヒーローになって地球を救えたらさ、絶対いいよな」
「いいって?」
「絶対、かっこいいし、憧れるし」
朔弥は私たちに向き直るとぴっと足を広げて敬礼をした。
「サクヤレッド、地球を救いまーす」
「あ、そういうことね」
まどかが呆れたように息を吐く。
「なんだよ、かっこいいじゃん?」
「そう思ってたいなら思ってれば?」
いつもの小突き合いを始めた朔弥とまどかの後をなぞり歩きながら、私は雲ひとつない快晴の空を見上げた。
◆
もし、地球が滅びるとしたら。
誰もが一度は考えたことのあるであろう、それ。
かくいう私だって、小学校で何度も話題にして盛り上がったことがある。
小学生って、そういうスケールの大きな現実味のない話題でも、なんでも楽しく話せるお年頃なのだ。
まさか、現実になるとは夢にも思わなかったけど。
『もし、もうすぐ地球が滅びるとしたら、どうする?』
そんな漠然とした問いにも、純粋に答え、想像を膨らませていくのが小学生というものであろう。
『お金いっぱい使って、好きなことする!』
クラスのムードメーカーだった明るいあいつは、そう答えた。
『やり残したことをやり切って、満足してからその瞬間を迎える〜』
少し浮世離れした雰囲気を纏っていたあいつは、そう答えた。
『大切な人と一緒に過ごす』
小学生にしては妙に大人び過ぎていたあいつは、そう答えた。
幼稚園の時から、三人で四六時中一緒だったまどかも朔弥も、きっと似たり寄ったりの回答をしたのだろう。
その時はぼんやりとした偶像だったその状況が、すぐそこに、目の前に来ている。
真っ青な空に、ぽっかりと浮かんでいるその星。
それが、二日後には地球に再接近、または衝突するのだ。
馬鹿らしい、衝突しない、と笑いとばせばいいのか、もしもの時に備えればいいのか。
まるで子守唄のような授業を聞きながらも、自分の上に視点がもう一個あって、自分を客観視しているような気持ちで、なんだかおかしかった。
ふわふわと足元が浮くような感覚で、今自分が生きているここが、現実だという気がしない。
薄いすりガラスを一枚通して世界を見ているような、そんな感覚。
地球が壊滅、なんてなったら勿論私だって即死だ。
死にたくはない。
まだまだ中学生、青春真っ盛りどころかスタートラインに立ったばかりだ。
だけど、そう思うほど執着する理由がない。
こんなこと言うとメンヘラの病みアピのようで嫌なのだが、生きていたいと思うほどの何か、そんな強烈な何かを、まだ感じたことがないのだ。
『もし、もうすぐ地球が滅びるとしたら、どうする?』
『私は_______』
物語然としたその問いに、私はなんて答えたのだろう。
人生最後の状況で、自分はどう行動すると答えたろう。
そんなことすらも、今はもう思い出せなかった。
◆
「あたしは衝突すると思うよ、クリシス」
こんな状況下でも、のほほんとした空気が流れる昼休み、まどかが前置きもなく切り出したその話に、私は思わず持っていたサンドイッチを屋上の床に取り落とした。
「・・・・・・なんで?」
「だってさ、もし、もしだよ?クリシスが確実に衝突するとして、それを国が正直に発表すると思う?」
告げられた言葉に、ハッとした。
なんで気がつかなかったんだろう。
衝突する、しないが半々だと言われている今でさえ、うつ病を発症する人がいたり、八つ当たりの暴力が横行していたりするのだ。
それが「ぶつかる」となったら。
時事に詳しくない私も、どうなるかは簡単にわかってしまった。
まどかは、私よりずっと多くのものが見えていたみたいだ。
私の反応を見て、まどかは続ける。
「ね。それに、これが寿命だ、とも思うから」
「寿命?」
「そう、地球の、寿命」
寿命。
命あるものには必ずある、それ。
人だって、いつ死ぬかはわからないのだ。
病気で死んでしまうかもしれないし、天寿を全うするかもしれないし、もしかしたら明日にでも不慮の事故で死んでしまうかもしれない。
目には見えなくとも、誰しもが持つ爆弾のようなものが、寿命だった。
失念していたけれど、地球でさえもどこかで限界を迎える日があるわけで。
それが、二日後であったってだけ。
まどかが言いたいのは、そう言うことだ。
そんなふうに割りきれるまどかのことを、素直にすごいと思った。
私は、そこまで大人にはなれない。
かといって、子供のようにバカにして笑い飛ばすこともできなくて。
「いいね、まどかは」
思わずそうこぼすと、まどかは不思議そうに目をパチリとさせた後、へらりと笑って言った。
「あたしは、割り切ってるわけじゃないよ。こうでも思わないと、狂っちゃいそうだから」
その笑顔は、ふわふわしているように見えて、それでも儚く、壊れてしまいそうで。
芯のあるまどかのこんな顔なんて、幼稚園からの付き合いだけれど、見たことがなかった。
クリシスは、そこまで人を狂わせるものなのだとわかってしまって。
心臓が、ひやりとした。
「そんな顔しないでよ、ただの、あたしの持論なんだからさ」
私の顔を見たまどかが、そう言った。
陽光に照らされたその顔は、今度は普段の頼もしげなものだった。
「クリシスの瞬間、一緒にむかえない?朔弥も誘ってさ」
断ることなんてできやしないその問いに頷くと、まどかは満足そうに笑って「晴乃、ごめんね。あたしのわがままに付き合わせて」と言った。
2
光のような速さで過ぎ去った二日間の間だって、学校も授業もあった。
こんな非常事態に、とは思うけれど、周りが変わらないから、私も変わらないでいられた気がした。
もうすっかり大きく見えるクリシスを見つめるまどかと朔弥だって、きっとそうだったんだと思う。
「これが落ちてくんだよな」
「ね。信じらんない」
丘の上のこじんまりとした公園には、私たち以外に人がいなかった。
在庫もすっからかんなコンビニからなんとか買い漁ったスナックをつつきながら、三人で取り止めのない話をする。
これが人生最後になるかもしれないと思うと、どうしてもいつも通りにはいられなかったけど、ぎこちない作り笑いでさえ、救いになるような気がした。
夕闇の中に、たくさんの光が揺れている。
あの一つ一つのなかに家族や人が寄り添って、運命の瞬間を待っている。
地球、人生、人類最後の日かもしれない時を、笑って過ごせている人が、一体どれほどいるんだろう。
好きなことをしたい、と言ったあいつは、やりたいことをできただろうか。
大切な人と過ごしたい、と言ったあいつは、大切な誰かといるんだろうか。
やり残したことをやりきりたい、と言ったあいつは、満足できただろうか。
「改めて、二人ともありがとね。一緒にいてくれてさ」
ポテチのカスを制服の膝から払い落としながら、まどかが言った。
「大丈夫だよ」
人生最後になるかもしれない日に一緒にいてくれる友達なんて、一生モンの宝物だろう。
その一生だって、今は存在が危うくなっているけれど。
この状況のせいで、普段よりも感慨深くなっているらしい。
しみじみと空を見上げた私の横で、朔弥が小さく呟いた。
「いや、これが〝正解〟だから」
きっと、まどかの礼にこたえたものではあるのだろうけど、意味がわからなくて。
まどかもそれは同じだったようで、小さく首を傾げる。
「あの_____」
意味を聞こうとした言葉の続きは、音にならなかった。
不意に、クリシスが燃え上がったのだ。
比喩などではない、真っ赤に光り輝くその姿は、恐ろしくも妖艶だった。
大気圏に、入ったということだ。
あと少しで、私の、人類の、地球の、命運が決まる。
たった一つの、星のおかげで。
「ねえ、晴乃_______」
_______幸せに、なれた?
確かにそう動いたまどかの口が、白く焼け付く。
違う。
口ではない。視界が、白くなったのだ。
真っ白に、全て焼き切れるほどの光が、目の前に有った。
幸せに、なれたかなんて。
そんなの、いま決めることじゃないけれど。
いままどかや朔弥と一緒にすごせる自分は、たしかに幸せだと、そう思った。
物の輪郭が消える。
ぼやけて、溶ける。
色は白く染めつけられて、まざって、一つになっていく。
ゆがむ、壊れていく。
世界滅亡の瞬間にしては、ファンタジックだけど。
こんなのだって、特別悪くない。
足元が浮いたような心地になりながら、強く目を瞑った。
◆
ゆらゆら、ゆらゆら。
ゆりかごに、揺られているみたいだ。
飛行船のような、船にも似てる揺れ。
ふわりふわりと揺蕩うような感覚の中から、どうにか意識の糸を引っ張り出して、私は薄く目を開けた。
周囲は真っ白。
真っ白、というか、純白の教会のようなところだ。
まどかも一緒にいるようで、周囲をしげしげと眺めながら首を傾げている。
部屋の真ん中あたりのところに、白いフードを被った少年がいた。
「ここ、どこ?」
まどかが至極当たり前の質問をした。
答えを求めるでもなく、頭を整理するかのように発せられたそれに答えたのは、少年だった。
「神の間、だよ」
少年がゆっくりとフードをとる。
特徴的な金髪が、天井からの光に輝いた。
「さ、くや?」
どう見てもその顔は、先ほどまで一緒にいた北斗朔弥だった。
服も変わっているし、どうしてここのことを知っているのかもわからないけど、私が見紛うはずない。
十何年と一緒に過ごしてきた相手を、間違えるわけがない。
だけど、フードから顔を出した朔弥は、普段の飄々とした態度とは違って、なんだか儚げな大人びた雰囲気を纏っていた。
「あなた、だれ。そもそも、神の間、って・・・」
まどかが途切れ途切れに発した言葉に、朔弥は口を開く。
「神の間は、神の間。俺は、北斗朔弥だけど、まどかとか晴乃が知ってる北斗朔弥じゃない」
「は・・・・・・?」
「・・・・・・どういうこと」
「俺は、未来から来たんだ」
「未来って・・・・・・」
まどかが絶句する。
かくいう私だって、声も出せなかった。
つまり、この朔弥は、未来から来た。
何か、変えたい過去があったから、ということなら。
クリシスは、衝突したのだろうか。
「正確にいうと、クリシスが激突した未来。地球が壊滅した未来から来た」
「なんで。なんのために?」
独り言のように呟いた問いを拾った朔弥が、少し目を細める。
そして、語り出した。
「それは______」
______クリシスが衝突したって言っただろ。
今はフィフティー、フィフティーだって言われているけど、本当は確実に衝突するんだ。
軌道、速度、質量、どれをとったって、地球を壊滅させるのに十分な物だった。
混乱を避けて政府は隠蔽したようだけど、時間の問題で。
国によっては全て公表しているところもあったけど、そういう国は集団自殺や犯罪が爆発的に増えて治安が格段に悪くなり、国家が崩壊するというのがほぼだった。
日本は、クリシスの存在すら発表するのは比較的遅かったけど。
俺、未来から来たって言ったろ。
実はこれ、3回目なんだ。
ここ、神の間は、何かと引き換えに、何かを守ってくれる場所だって、最初来た時に聞いた。
だから、最初はちっさい頃からずっと大事にしてた人形を捧げた。
結構な値打ちもんで、市場にもほぼ出回ってないくらいのもん。
それでも、全然足りなくて。
だから次は、自分の命を捧げたんだ。
この身ひとつ、すごく大事な物だったから。
だけど、それでも足りなかった。
神が受理するか、しないかだからあっちの好みだけど。
だけど、これ以上捧げるものなんてなくて。
過去二回、ここに来た時も二人とクリシスを見てたからさ。
一緒にここに来たのは、初めてだけど______
「______で、今ここにいるってわけ。」
流れる水のように滔々といってみせた朔弥は、まだ状況を飲み込めない私たちを置いて教会の扉に手をかけた。
大きく、重い扉がギイと音を立てて開く。
こんなファンタジーじみた空間の扉も開くんだな、と場にそぐわないことを考えてしまうのはしかたないことだと思う。
だけれど、扉の先にあるのは、ファンタジーとは似ても似つかないものだった。
「なに、これ・・・・・・」
唇から掠れた声が漏れる。
まどかも理解ができないと言うふうに口をぱくぱくと動かした。
そこにあったのは、暗闇。
なにもかも飲み込んで拡大していくほどの、真っ暗闇。
底も果てもなさそうなそれは、吸い込まれそうな魔力のような、そんな何かを持っていた。
「ここに、投げるんだよ。捧げるものを。カミサマが受け取ったら、契約完了。晴れて願いが叶いますよーってこと」
なんとも軽い調子で告げられた言葉は、到底常識の範疇を超えていて。
それでも、情報はスッと頭の中に入ってきて、どこかで納得してしまう自分がいた。
ということは前回は、朔弥が自分の体をこの闇に投げ出したということだ。
それって、どれだけ怖かったんだろう。
底の見えない虚空に自身から飛び込んでいくことって、一体どれだけの負担が心にかかるんだろう。
想像することすら、私には難しかった。
「じゃあ、短い時間だったけど、じゃあな」
「は?あんた、何するつもりなの」
まどかのその問いに、朔弥はまるで当然だとでもいうように言った。
「当たり前だろ、捧げにいくんだよ。俺の命を」
言葉を失ったまどかに、朔弥はなんとも軽い調子でぴっと敬礼した。
「サクヤレッド、地球を救いまーす」
つまり、これって。
また、飛び込むと。
そして、自分が地球を、人を救うのだと、そう言うことか。
考えていたら、無性に腹が立ってきた。
私は、光の少ない瞳で教会の外を見つめる朔弥に、並び立った。
呆然とする朔弥をおいて虚空の淵に足をかけて、飛び越そうとする。
が、まどかが、私の腕を掴んで、叫んだ。
「なにやってんの!?」
「馬鹿、おまえ・・・・・・」
朔弥も声を震わせて、信じられないとでも言うように私をみた。
私は片足が宙に浮いたまま甘んじてその怒りを受け入れる。
だけど、私だってなにも無鉄砲に飛んだ訳ではないのだ。
馬鹿はこっちのセリフだ。
ないに等しい体幹と腹筋を駆使して再び床に足をつけると、私は一息に朔弥に詰め寄った。
呆然としている二人を置いて、言葉を叩きつける。
「ばーか」
大きく、目が見開かれた。
「なんだよ・・・・・・」
「どうしたのよ、晴乃」
こちらを見つめる二人に、私は口端をつりあげてニッと笑って見せた。
そして、どこかで見たような敬礼をする。
「ハルノブルー、地球を救います!」
朔弥が、幼子のようにまくしたてる。
「ばか、なんで、お前が。俺一人でいいんだよ。俺は、お前らが幸せに生きてればそれで・・・・・・!」
「朔弥、冷静に考えてよ。地球とあんたの命が等価値なわけない」
つとめて冷静に返すと、朔弥は黙り込んだ。
「って言うのは建前で、私だってヒーローになってあげるって話だよ」
続け様に言ってのけた私に、今度はまどかが私の横に並び立った。
そのまま、本日何度目かの敬礼。
「マドカグリーン、地球をすくいます」
そして、笑顔のまま言って見せた。
「一人でいなくなるなんて、ゆるすわけないでしょ?二人の覚悟が決まってんなら、あたしも付き合うよ」
「ほら、朔弥。一緒に地球救お?」
ぱっと私とまどかが差し伸べた手を掴んだ朔弥は、ここ最近めっきり見なくなっていた無邪気な笑顔を見せた。
「サクヤレッド、三人で地球救いまーす」
◆
「ね、こわい?」
「な訳ないでしょ」
私の問いに、まどかが返す。
「本当は怖いけど、二人ともいるから平気よ」
三人で手を繋ぎ合ったまま、だれも合図せずとも揃った声が、教会に響き渡った。
「「「地球を救います」」」
せーの、で全員でジャンプする。
闇がぐんぐんと迫ってくるけど、不思議と恐怖は感じなかった。
「ね、まどか」
暗闇の中で、まどかがこちらを向く。
「私、幸せだよ!」
もう直ぐ死んでしまうとしても。
地球の代償に、命が消えるとしても。
二人と繋いだ手の温もりがあれば、それでいいと思った。
二人という素晴らしい人間と出会うことができた自分は、確かに幸せなのだ。
『幸せに、なりたい』
小学校の時の、地球最後の日の願い。
真っ暗でなにも見えないけど、まどかが笑った気がした。
◆
九月一日、朝。
衝突すると言われていたクリシスは、なぜか突如として消え去ったらしい。
代わりに、とある中学校に空席が三つできた、とか。
だが、誰もそこにいたはずの生徒を覚えていなくて、存在していなかったかのように持ち物も何もなかったことから、空席が増えたのはいたずらだと言われている。
雨が降っていた。
ぽつりぽつり、世界を祝福するように、美しい雨が降っていた。
ヒーローたちのいない、ヒーローたちのいらない、平和な世界を。
閲覧ありがとうございました。