表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

除夜の鐘【WEB】

作者: 雨澤 穀稼

挿絵(By みてみん)

デザインワークス:アホリアSS様


   除夜の鐘


 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 拾弐月参拾壱日(おおみそか)、除夜の鐘が鳴り響く。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 山奥の小さな村々に、除夜の鐘が鳴り響く。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 猪たちがうねうねに荒らした畑に、除夜の鐘が鳴り響く。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 しんしんと降り積もる雪。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 揺れる赤いブランコ。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 玄関に乱雑に脱ぎ捨てられた靴。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 つんつくてんつんつくてと滴る雫。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 椅子に座るフランス青い瞳の人形。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 吹きすさぶ風。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 押し入れに詰め込まれた想いでの欠片。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ぞろぞろ……ぞろぞろ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ふにゃあとあくびをするカエル。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ご迷惑をおかけしますと御辞儀しっぱなしの工事の看板。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ちゃぶ台の上の欠けた夫婦茶碗。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 綺麗に揃えられたカセットテープ。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 山積みのビデオテープ。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 壊れた8ミリカメラ。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 描きかけの自画像。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 本の重みで抜けた床。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 雪の大地から伸びる朽ち果てた鳥居。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 凍えながらじっと見詰めるカラスの黒い目。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ギシシ、ギシシと雪の重みに軋む家。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 どんぐりを頬張る夢うつつの月の輪熊。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 冬毛の狐がじっと見詰めている。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 冬の帳のしたで寄り添い春を待つ魚。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ぽったん……ぽったん……ぽったん……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 みしし……みしし……みししししし……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 流れる雲。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ばたたん、ばたたん、ばたたたたんと木戸が打ち付けられる。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 川蜷がゆっくりゆっくり移動している。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ぞわぞわ……ぞわぞわ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 母にギュッとしがみつく娘子。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ズシッ……ズシッ……ズシッ……ズシッ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 立派な角の男鹿がじっと見詰めている。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 お寺へと続く長蛇の列。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ゴオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ……。

 ぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろぞろ……。


「今年も百と捌っつ鳴り終えたか……御苦労様で御座います。人里離れた廃寺のこの寺に大晦日だけ百と捌っつの牡丹餅を御供えにやってくるのも今年で……最期かもしれんな……ここが廃村となって、来年でもう百年経つんじゃな

……お皿を片して下山するかな」


 ウオンウオンウオンウオンウオン……と、大晦日の夜、籠る鐘の音だけが響いていました。

 

挿絵(By みてみん)

デザインワークス:島猫。樣


挿絵(By みてみん)

デザインワークス:なないろかめれおん

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ホンマに108あるんですか?Σ(゜Д゜)←数えられなかった 点在するものを並べてひとつの風景を創るようなの、好きです(ㅅ´ ˘ `)♡ ごうごう豪雪を掻き分けて鳴り響く幻のような音 カエルさんだけ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ