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第49話(累計 第95話) ラストバトル03:吶喊、ヴィローチャナ!

「プロト00として各機に命令(コマンドワード)します。『命令なんて、くそくらえ!』。各自、勝手に戦い、生き残りますわよ!」


「はい!」

「おうよ!」

【御意!】


 プロトさんの一言、コマンドワードは戦場に響き渡る。

 下品ながらも、味方への激励の言葉は、AIやシステムだけでなく操縦士たちにも広がった。


【マスター。出力が戻りました。いけます!】

「おにーちゃん!」

「トシ。包囲網を一気に抜けますわよ」


「うん。いくぞ、四方斬・三連撃!」


 スラスターから吹き出す火炎が少なくなり、地面へと重力に引かれて落ちていたヴィロー。

 プロトさんのコマンドワードで、止まりかけていた魔力炉が復活。


 再び空に舞い上がり、取り囲んでいた敵機を一気に切り払った。


「これ、まとまって来たから全方位攻撃できるのなら、逆に有利ね」

「ですわ。デイお姉さま」


 師匠は、温存していたオールレンジ端末を一気に展開。

 同じく取り囲んでいた敵機を殲滅していく。


「こ、怖いよぉ」

「その調子ですわ、ラザーリ様」


 ラザーリ機もガトリングガンを振り回して、敵機を続々撃墜していく。


「トシ様。さあ、お先へどうぞ。露払いはわたくしがしますわ」

「ありがとう、プロトさん」


 一通り周囲の敵を倒したヴィロー。

 背中のパトラムからも激しい火炎を吐きながら、目的地。

 しばし遠くなった母船内部への侵入口を目指す。


 そんなヴィローの前を先行し、敵を切り払うプロトさん。

 この間までは強大な敵だった人が、今は最高の味方だ。


「プロトさん。さっきのコマンドも含めて、ありがとうございます。どうして敵だった僕に、ここまで協力を……」


「もー。今は野暮な事は後にするの! 今は可愛い妹たちと妹婿を守る立派な姉でいさせてね、トシ様」


 何処か涙声で伝えてきたプロトさん。

 彼女のこれまでの人生を思えば、葛藤は起きるはずだ。

 特に目指すは、自分の一言(コマンドワード)で惑星に落ちてきた移民船団の母船。

 もう二度と見たくもない筈なのに、率先して戦ってくれる。


「トシ様。わたくし、これで奪ってきた命に対し、少しは顔見せできますかしら?」

「ええ。必ず」


 ぼそりと呟いた言葉。

 そこに、今までの罪と向き合ったプロトさんが居た。

 ならば、これからは妹や弟たちと笑いあえる環境を作ってあげればいい。

 それはリリの笑顔に繋がり、僕の幸せにも繋がっていくだろうから。


「いくよ、トシ坊!」

「いきます、トシ殿」


 師匠とラザーリさんの機体から、熱分解光線砲ディスインテグレーターが放たれる。

 それは、僕とプロトさんの前にたむろって、破孔に向かうのを沿いしていた敵機を一撃のもとに無に帰した。


「行きなさい! 背中はわたくしが守ります」


 プロトさんは僕の背後に回り、今度は背後からの攻撃を押しとどめてくれる。


「いっけぇぇ!」


 どんどん大きくなる母船。

 今度は、母船に付属する砲台からビームが飛び出した。


【止まりなさい! 止まりなさい! どうして止まらない!?】


 母船AIは叫ぶように停止コマンドを叫ぶが、更に上位存在たるプロトさんの命令を上書きできない。


「ぐぅ」

「レオンさん!?」


 雨の様に降り注ぐビーム。

 その全部を完全には避け切れず、バリアーの隙間からパトラムの羽部分に攻撃が当たった。


「だ、大丈夫だ。まだ飛べる。トシ坊、俺は足手まといになる。後は頑張れ!」


 突然パトラムとの合体が解かれる。

 パトラムは羽部分から煙を上げながら旋回し、攻撃範囲から遠ざかる。


「レオンさん、なんで!」


「トシ坊。俺は弟が出来たみたいで嬉しかったぜ。リリちゃんと頑張れ!」

「は、はい!」


 僕は涙をぬぐいながら、スロットルを全開にする。


「ヴィロー! 疾風怒濤。このまま破孔に飛び込む」

【御意!】


 ヴィローの周囲にらせん状に渦巻くバリアーを発生。

 ビーム攻撃を避け、弾きながらヴァハーナのリニアカノンで開けられた破孔に機体を飛びこませた。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「はぁはぁ。プロトさん、大丈夫ですか?」


「まだまだ大丈夫ってリリちゃんやエヴァちゃんの前で見栄をはりたかったけれど、そろそろ限界が近いわね。でも。最後まで貴方たちの背中は、わたくしが守りますわ」


 ヴィローの後について船体内に入ってくれたプロトさん。

 機体各部から火花が出ている上に、他の機体と違いプロトさんが機体操縦と各種オペレートを同時に行っている。

 そして尚も迫りくる敵機を薙ぎ払う。


 ……船内に入った途端、『上下』。重力方向が変わったのにびっくり。でも、考えてみたら宇宙を飛ぶ時も『上下』があった方が人は暮らしやすいし、縦に地面に突き刺さった今も元の『上下』を維持しているんだろうね。


 負担も大きいだろうが、リリやエヴァさんの良き姉であろうとしてくれているプロトさん。

 これまで自らすら駒として見てこなかった彼女が、ラウドの下町で幼子から花を貰った時の笑顔と涙を僕は忘れない。

 だから、今は完全に信用して背中を預けている。


「ヴィローにダウンロードされたマップによれば、この隔壁の向こう側にある人用の通路を通った先にメインコンソールがあります」


 僕たちはギガスでも通れる大型通路を移動。

 出来るだけ、システムのメインコンソールに近づこうとマザーさんから貰ったマップを参考に船内を進んだ。


 ……幸い、船内じゃ砲撃タイプの敵が居なかったのは幸い。自分の攻撃で内部を壊す程、馬鹿じゃないんだろう。


「じゃあ、そこでわたくしはヴィローと一緒に貴方たちの還りを舞っているわ」

【マスター。姫様がた、御安心を。無人機ごそきに遅れをとるヴィローではございません】


「お願いします。さあ、隔壁をぶっ飛ばすよ」

【御意!】

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