第47話(累計 第93話) ラストバトル01:皆で生きて帰るんだ!
「皆さん、まもなく母船の警戒範囲に入ります。今回の作戦はオデッセアの未来を決します。ですが皆さんの命も大事です。くれぐれも自分を犠牲にすることをお考え無いように」
「任せな、トシ坊」
「了解です」
「おう!」
「はい」
惑星オデッセアの北極上空。
澄み渡る蒼穹の中、白い平原が広がる遠方に高い塔。
いや、目的地の宇宙船がクレーターの中に突き刺さっているのが見えてきた。
望遠映像では、塔の周囲を飛び回る小型の「何か」も見えてくる。
そんな中、ヴィローのコクピットに座る僕は、一緒に来てくれた仲間達に言葉を送った。
死ぬなと。
「特にリリ。僕は君を目的地まで必ず届けるし、絶対に一人にはしない。だから、必ず生きて帰ってこよう。僕の方が先に寿命を迎えるだろうけれど、それでも最後までずっと一緒に居てください」
「うん! おにーちゃんとリリはずっと一緒。帰ったら結婚式しよーね」
「約束だよ!」
「あらあら。じゃあ、わたしはトシの第二婦人かしら。妹と義理の弟を生暖かく見守ることにするわ」
【皆さま、おめでとうございます。不肖ヴィロー。皆さまをお守りし、必ず幸せをお届けしますぞ】
「ヴィローも一緒じゃなきゃ、いやん。わかってる?」
【はい、リリ姫様】
何かとんでもない事をヴィローのコクピット内で話している気がするが、敗北フラグにならない事を祈るばかりだ。
「では、先手行きましょう。流れは、先日打ち合わせた通り。ヴィローが先行しますので、妨害除去をお願いします」
「あいよ。ヴァハーナから砲撃後、背後のカーゴを開放。各自、散開して囲まれない様に敵を薙ぎ払うんだよ。レオンくんは、トシ坊の背中を頼む」
「分かったぜ、アカネさん。プロト姉さん、アルクメネさん、レダさん。今は死ぬ時じゃないから、戦勝パーティで両手に華をさせてくれや」
「レオンさん。貴方って人は、ここまでエッチなんてね。伯爵様がお怒りになるわよ。さて、ノルニルの妹たち。ここが頑張りどころよ。隕石の落下を永久に阻止しなきゃ、人類の支配どころじゃないわ。なんとしても、リリちゃんを送り届けるのよ」
「はい、お姉さま」
「了解です」
今回の作戦。
ヴィローを母船中枢部まで届けるというのが主目的。
その前に、宇宙船を護衛している無人ギガスの群れを突破しなくてはならない。
その為に、プロトさんだけでなく、アルクメネさん、レダさんも協力してくれた。
……もちろんパートナーも全員共に。
「デイアーナお姉さま、いきますわよ」
「はいな。トシ坊達には指一本近づけないわよ」
「ラザーリ様、ご無理申し訳ありません」
「いやいや。人類全てを守る戦いに、僕みたいな罪人が共に戦わせてもらっているだけでも感謝さ。少しでも罪滅ぼしになれたらとは思うけれど」
皆、それぞれの事情は違うけれど、今回同じ思いで戦ってくれている。
今、ここにいない人々、伯爵さまを始め多くの人が今日まで沢山協力をしてくれた。
僕らはその恩義に報いなければならない。
この星に生きる全ての人々に安寧を与える為に。
【そろそろ主砲射程に入ります。向こう側もこちらに気が付いたようですね。ステルスでかなり近づけたのは幸いです】
「アカネさん。お願いします!」
「あいよ。四連レールキャノン、始動。バレル冷却開始。弾種、近接信管型榴弾を装填。ターゲットは敵集団中心部。着弾と同時にミサイルも発射。時間差でカーゴのハッチを解放。各自、発進。牽制でオールレンジ端末も同時発射。皆、いくよ!」
「了解です、マスター・アカネ!」
「各武装、展開します」
機体の前に飛び出た四本の長い砲身が、紫電を放ちながら霜に覆われだす。
そして、どすんという反動の後、プラズマ化した四個の砲弾が砲身から飛び出し、遅れて轟音が周囲に響いた。
「……3、2、1、弾着、今!」
ノルニルの少女らが可愛い声でカウントを行う。
そして敵集団の中央でまばゆい閃光が走った。
……カレニア人事委員長の機体をコントロールしていた、リリの妹たちがアカネさんをサポートしてヴァハーナを操ってくれているんだ。
「続けてミサイル発射。カーゴ、解放と同時に廃棄!」
「プロト00、行きますわ!」
「デイアーナ・パドレス。参る!」
「パブロ・レリヤ、発進します!」
ヴァハーナ後方に繋げていたカーゴがハッチを解放。
中から三機のギガスが蒼穹な空に飛び出した。
ミサイルの雨も、同時に敵集団に降り注ぐ。
「僕も行くよ。トシミツ・クルス、マハ・ヴィローチャナ。発進!」
ヴァハーナの前に繋がれていたところから発進したヴィロー。
すぐさま、レオンさんが操るパトラムと合体。
加速して、一気に混乱をしている敵集団に切り込んでいった。
【今日の私は一切出し惜しみはしません。目の前の敵は全て切り伏せます】
迫りくる飛行型ギガスを、すれ違いざまに高周波ブレードで切り裂く。
また、サブアームから放つ瑠璃色のプラズマ光弾も、続々と敵を撃墜していく。
「リリちゃんのジャマはさせないわ。ノルニル長女の意地、ここで見せます!」
プロトさんの駆る機体が、僕らの前に出てあっという間に敵を切り裂いていく。
「プロトちゃん。それはアタシの仕事だよ。アルちゃん、次弾をチャージ」
「はい、デイお姉さま!」
師匠の機体も僕らの前に来そうな敵集団を熱分解光線砲から放つ光の剣で薙ぎ払う。
……結局、師匠の改造箇所。自爆や停止装置なんて付けられていなかったんだって。プロトさんのイタズラだったとか。
「こ、怖いけど。でも負けないぞー」
「パブロ様。レダはいつも一緒でございます」
パブロさんの機体は、両手持ちのガトリングガンで一気に敵を殲滅していく。
……皆の機体は、それぞれ前に乗っていた神話級機体の中枢部を移植したA級機体。マザーさんのところにあったヴィローの量産型タイプの機体をカスタマイズしたものなんだ。ここまで出来るのに一か月以上かかったけど。
華麗に舞い、群がる防衛ギガスの集団を順調に破壊していく僕ら。
後方に一旦下がったアカネさんの乗るヴァハーナからも、時折支援砲撃が飛ぶ。
「このまま、一気に踏み込みます。皆さん、宜しくお願いします」
僕らは勝負に出た。
面白いと思われた方、なろうサイトでのブックマーク、画面下部の評価(☆☆☆☆☆を★★★★★に)、感想、いいね、レビューなどで応援いただけると嬉しいです。