第39話(累計 第85話) 最終決戦:ラウンド4 吠えろ、ヴァーハナ!
「プロトお姉さま、わたしは貴方を止めます! そして、ラザーリ様と一緒に生きていきますわ」
ラウドを襲う火球を撃破して街を救った、金色の機械鳥。
そこからレダさんの声が戦場に響いた。
「……本当に憎らしい子達。どうして、わたくしの元を離れた子達は全員、わたくしに反旗を翻すのかしら? ノルニルにはマスターに対する依存性が高い様に設計されていたのだとしたら、今後は対応を考える必要もありそうね」
朝方の蒼穹を掛ける機械鳥、いや重戦闘機。
アカネさんがアイデアを出し、マザーさんとの協力で生み出した新兵器。
「トシ坊。これから『ヴァーハナ』と合体するよ! 合体シークエンスはこっちで制御するから、アンタは早くそこから飛びあがりな」
「もう、乱暴ですわよ、アカネ様。トシ様、制御はわたしにお任せを。ラザーリ様、大丈夫ですか?」
「うん、レダ。もう同じ失敗を僕はしないよ」
アカネさんからの通信には、同じ操縦席にいるであろうレダさんとラザーリさんからの声も含まれた。
「トシ、いくぜ!」
「はい、レオンさん。ヴィロー、リリ、エヴァさん、もう一度立ち上がろう!」
【御意】
「うん、おにーちゃん!」
「宜しくてよ、トシ」
僕は、軋む機体を立ち上がらせる。
そして、ヴリトラに対し牽制攻撃をしかけつつ飛ぶ重戦闘機、「ヴァーハナ」へと向かい、蒼穹に飛びあがった。
「そんな事をさせませんですわ。砕け散りなさい!」
しかし、簡単には合体させてくれないプロト。
ヴリトラの各部から、ビームやミサイルの雨をまき散らした。
「甘いよ、嬢ちゃん。そんなのは想定内さ!」
しかし、アカネさんの声が示す通り、全ての攻撃をヴァハーナは弾き飛ばす。
まるで透明な球形、ガラス球の中に入っているかのようにビームやミサイルが曲がっていく。
「何? それは、まさか、重力場シールド?」
「ご名答! さあ、トシ坊。こっちに来な!」
「はい!」
僕はアカネさんの言葉を信じ、ヴァハーナの進む方向へとヴィローを向かわせた。
「レダちゃん、いくよ。合体シークエンス、開始。重力場シールド、広域展開!」
「はい、アカネ様。リリちゃん、エヴァちゃん。合体プログラム送りますわ」
「レダちゃん、合体プログラム、受け取りましたの。リリちゃん、制御を手伝って」
「うん、おねーちゃん達。トシおにーちゃん、いくよ!」
「ああ、皆で行こう!」
僕はヴィローの背中をヴァハーナの機首方向に向ける。
ヴァハーナから光のレールが飛び出し、それはヴィローの背中と繋がる。
「合体、第一段階。成功。機首部変形、パトラムは後方へ移動」
ヴァハーナの先端、機首部分には支援戦闘機パトラムが合体していた。
それはアカネさんのコールの様に接続アームを稼働させ、パトラムを後方機上部へと移動する。
「そのままヴィローは速度同期。ヴァハーナとの接続開始」
ヴリトラから豪雨のような攻撃が降り注ぐが、全てヴァハーナを中心とした球形のバリアーに弾かれていく。
「凄い。このパワーは一体?」
【マスター。これは三機全ての魔力炉が同期したうえでの奇跡のパワーです!】
ヴィローも興奮気味に合体シークエンスを語る。
ズシンとショックが背部から響く。
それと同時に、ヴィローとヴァハーナが接続したとモニターに表示される。
それまでレッドゾーンを示していた各部状態が一気にグリーン、欠損した左脚部以外は全力可動状態になった事をモニターは示した。
「接続完了。各武装及び装甲、最大展開」
アカネさんのコールによって、ヴィローのモニターにヴァハーナの全武装が表示される。
高速移動の邪魔になる大きな格闘腕も展開、ヴィローと合体した重戦闘機は重機動兵器となった。
「トシ坊。後は全部任せたよ。アタシらはサポートに回る」
「トシ、やっちまえ!」
「トシ様。わたしとラザーリ様を宜しくお願い致します」
「トシ殿、僕はもう悩まない! レダと共に迷いながらも償いながら生きていく。だから、今はキミに力を貸すよ」
ヴァハーナから皆の声援を受ける。
僕は一旦視線を背後に座る二人に向けた。
「トシ。ここまで来たんだから、存分に暴れちゃいなさい。後はわたしに任せて」
「トシおにーちゃん。可哀そうなプロトおねーちゃんを助けよう」
「ありがとう、皆。ヴィロー行くぞ!」
【御意。マハ・ヴィローチャナ、皆様の幸せを守るべく参ります!】
各部から金色の光を放ちながら飛翔するヴァハーナ。
飛行機形態から、機動兵器型に変形したその姿。
ヴィローが背部に巨大な兵装付きブースターを背負った形に近い。
「そんな見掛け倒し! ビームが効かないのなら、巨体で押しつぶして差し上げますわ!」
攻撃が効かない事に怒ったプロト。
己が駆るヴリトラの巨体をヴァハーナにぶつけに来た。
「トシ坊。一発ドカンとぶっ飛ばしてやんな。エヴァちゃん、武器管制頼むよ」
「はい、アカネお姉さま。四連装レールキャノン、初弾装填。弾種、徹甲榴弾を選択。電磁バレルに通電、冷却機能も可動。トシ、どうぞ」
「重力制御と慣性制御は任せてね、おにーちゃん」
「ああ、いくぞ。レールキャノン、発射!」
ヴィローを挟んで機首の方に伸びる四本の槍、いや砲身。
そこから紫電を放ちながら飛ぶ四つの砲弾が、ヴァハーナにぶつける様に巨体を向けていたヴリトラの亀の腹部分に突き刺さった。
「きゃぁぁ! そ、そこには、アダムが! わたくしの愛する弟がいるの! な、なんて事をするのぉ!」
砲弾は、それまで無敵を誇っていたヴリトラの装甲を簡単に撃ちぬき、内部で炸裂。
大きく空いた入射口から、激しい火炎と黒い煙を吐き出した。
……なるほど、留守中に襲われたらダメと守りが固い部分にアダムくんを入れて連れてきちゃったのか。じゃあ、あんまり宇宙船部分は攻撃したくないな。
「おにーちゃん。あのね……」
「リリ、分かっているよ。宇宙船部分への攻撃はあまりしないようにするね」
心配そうな声を背後から掛けてきたリリに、僕は背中越しにVサインを送った。
「ありがとー、おにーちゃん」
「まったく甘いったらしょうがないのね、ウチの馬鹿ップルたちは」
「はいはい。僕は皆を幸せにするために戦っているんだから、いいじゃないか」
背後の二人の姫から賞賛を受けながら僕は巨体を操る。
そして次の攻撃場所を探した。
「ヴィロー。宇宙船とギガスの接続部を狙うよ。切り離せは敵のパワーを奪えるはず!」
【でしたら、格闘腕による斬撃が効果ありかと】
ヴィローの指示でヴァハーナは、格闘腕を起動。
そこから巨大な光の剣を伸ばした。
「いくぞ、みんな!」
「はい!」
僕は、一旦距離を取って逃げようとするヴリトラに機首を向けた。
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