第31話(累計 第77話) 師匠との再戦:ラウンド5 決着!
「師匠。そろそろ投了してくださいませんか? もう、そちらの機体は飛ぶのもやっとでしょう」
「とはいえ、雇い主は死ぬまで戦えっていうでしょうねぇ」
朝日に照らされている砂漠の上。
二機の神話級ギガスが睨み合う。
師匠の駆る女性型ギガス「バイラヴィー」は副腕を全て失い、右足や胴体の各所から火花が出ている。
そして僕たちの乗るヴィローは殆ど損傷も無く、両腕に持った二丁のビームカービンを師匠に突き付けて降伏勧告をしている。
「師匠さん、もう辞めようよぉ。そこにわたしのお姉さんか妹がいるんでしょ? わたし達が戦う意味なんて何も無いんだよ?」
「投降しなさい。そうすれば、甘いトシとリリちゃんの事だから貴方達には誰からも手出しさせないわ」
「何を言うの! このノルニルの裏切者! デイお姉さまは、どれだけ貴方、トシと戦うのを苦悩なさっていたのか、分からないの!? わたしには無理して楽しいなんておっしゃっているけど、愛した弟子と戦うのを楽しむなんてありえないわ。その上、プロト姉さまに命を握られて……」
リリやエヴァさんの投降を訴える声に言い返す少女の声。
これが、おそらくリリの姉妹。
……師匠が僕と戦いたがっていたのは半分は本心だと思うよ。いつも、立派になった僕と命を奪い合わない戦いならしてみたいって言っていたし。それでも命を握られての強要は許せないよ!
少女の叫びで、師匠が僕と戦う事になった理由が読めてきた。
おそらく僕を庇った戦いで瀕死になった師匠は、プロトに救われたはいいが何か仕掛けられたに違いない。
「もう恥ずかしいじゃない、アルちゃん。まあ、そういう事なのさ、トシ坊。だから、アタシと戦って。それはアタシの望みでもあるんだから」
「……分かりました。では、今の僕を見せてあげます」
「もう、分からずやさん! ぷんぷん」
「頑固者は一度倒すしかないわね、トシ、存分に」
僕はカービン銃を背中のラックに戻し、ヴィローの両腕の剣を抜く。
そして二刀流、「上下太刀の構え」の変形。
左手の剣は下段。
右手の剣を中段にした構えをした。
「ありがと。アルちゃん、いくよ」
「はい、お姉さま」
師匠の駆る女性型ギガスも宙に浮かんでいた最後のオールレンジ端末な剣を左手で握り、僕同様に二刀流となる。
右手を精一杯まえに突きだして右半身。
左手側は、いつでもスイッチできるように剣先を前に向ける。
「参ります!」
「来なさい!」
渾身の力で砂を踏みしめ、特攻気味に踏み込むヴィロー。
同じく剣を前に全力の突きで迎え撃つバイラヴィー。
ガキンという衝突音の後、二機の神話級ギガスはすれ違う。
「……師匠、貴方は強かったです」
「そうかしら。でも今回は、坊やの勝ちね」
ヴィローの右肩装甲は激しく抉られ、スラスターごと吹き飛ばされている。
そして、腰と頭部から火花を放っていたバイラヴィー。
一瞬の停止の後、上半身がドズンと地面に転げた。
「ふぅぅ、危なかったぁ。ヴィロー、補正ありがとう」
【いえいえでございます。初撃をギリギリで躱すマスターの度胸と腕があればこそです】
迫りくるバイラヴィーの突きを左半身になりつつ右肩スレスレ。
いや、右肩装甲とスラスターを犠牲にしつつも、左前に踏み込んで回避。
左刀で腰部を薙ぎ、右刀の突きで頭部を貫いた。
……ヴィローの剣筋補正が無きゃ、コクピットごとぶった切っていたよ。
制御系頭部を破壊された上に下半身を失ったバイラヴィーは、完全に停止した。
「師匠、生きてますよね。これで僕の完全勝利です。投降を」
僕は剣を仕舞い、再びカービンを背後から取り出して銃口をバイラヴィのコクピットに向ける。
「トシ。向こうの戦いも完全勝利ね。伯爵様が殺さずに撃破なさってますわ」
「すっごーい。アルおじちゃん!」
視線をサブモニターに移すと、純白だった装甲にいくつも穴を開けられた機体が砂地に転がっている。
「出てこい、元人事委員長パブロ・レリヤよ。さもなくば、このままコクピットごとぶち抜くぞ!」
「だ、誰が出ていくかぁ! デイアーナ、わ、私を助けろ! え、倒されているぅ? し、死ぬのは嫌だぁ。ノルニルの乙女たち、私を助けるのだ」
まだ揉めている様で、コクピットが開く気配はない。
「エヴァおねーちゃん、あっちに行っていい? あそこにわたしの妹ちゃんがいるみたいなの」
「そうね。こっちは、今コクピットを開いて出てきたから、大丈夫。でも気を付けてね」
メインモニターに視線を移すと、リリに似た少女の手を握りつつコクピットから出てきた長身な女性が見えた。
「あ、師匠。そ、そんな姿になっていたんだ……」
「機械で生かされているのね、多分。だから、プロトお姉様に命を握られていたのかしら」
脱ぎ捨てたヘルメットの下の頭部。
師匠の長かった髪は短く切られ、右頭部と目までの顔が鉛色な機械で覆われている。
また、パイロットスーツが一部破れている手足にも、鉛色のものが見えた。
「やあ、坊や。こんな姿になってまで生きてるアタシは見苦しいかい?」
「いえ。今も昔も師匠は綺麗です!」
僕はヴィローをひざまずかせ、コクピットハッチを開く。
肉眼で数年ぶりに見た師匠は、傷ついて尚も美しかった。
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