第30話(累計 第76話) 師匠との再戦:ラウンド4 死の空中ダンス!
「トシ坊。流石だねぇ」
「師匠こそ、凄いです!」
二機の神話級ギガスが、明け方の蒼い空の元。
空中で激しく戦う。
ふわりと宙に浮かぶ女性型にして黒地に金の縁取り装甲を持つ「バイラヴィー」。
三鈷杵型の剣を両手に持ち、優雅に飛翔しながら宙に浮かべた多数の剣からビームの雨を降らせる。
もう一体。
白銀の装甲を持つ、六本腕の鬼神「ヴィローチャナ」。
こちらは各部のスラスターから激しい炎を吹き出し、無理やりの飛翔。
両手に持った銃剣付きビームカービンの二丁を振り回す。
そして高機動に機体を軋ませながら、迫るオールレンジ端末を一つずつ撃墜している。
「伯爵様。あれ、どういう戦いなのでしょうか? まるで神話の再来です」
「確かに二機とも神話級じゃからのぉ。あれを使いこなせるトシ殿は見事じゃ。それに引き換え、この愚鈍な愚か者は神話級を貰っておっても弱いのぉ」
地上で残敵を掃討中のラウド騎士団。
大半のゾンビ・ギガスはヴィローにより撃破されており、残りはわずか。
そして敵の大将格。
元カレリア民主労働党 人事委員長パブロが駆る神話級ギガス
純白の重装甲、胸と両肩に三つの象の顔と牙を持つ重量級、「アイラーヴァタ」。
既にヴィローからの砲撃を喰らっていたとはいえ、伯爵の駆るA級ギガス「バーグマー」に弄ばれている。
「く、くそぉ。こいつは神話級なんだぞぉ! ノルニルの乙女たちよ。眼前に立ちしは領主の旗機。こやつを落とせば、我らの勝ちなのだあぁ!」
「これで神話級とはのぉ。ひょいとな」
六本の牙を高周波振動させて突撃をしてくるアイラーヴァタ。
しかし、攻撃が直線的過ぎる為に伯爵の足払いで、どしゃんと派手に引っ転ぶ。
「ち、ちきしょぉぉ!」
「これなら、リリちゃんの願い通りに生かして無力化できそうだわい。ワシもリリちゃんの妹君は殺したくないからのぉ。よいしょ!」
「ぐわぁぁ」
もはや破れかぶれのパブロに対し、余裕ありの伯爵。
転んだ状態から無理やり飛びかかってくるのを、伯爵は電磁騎馬槍で殴り倒す。
「さて、トシ殿。後は任せましたぞ」
伯爵は視線を上げ、蒼天の中に飛行機雲を生み出しながら疾走する二機のドックファイトを眺めた。
◆ ◇ ◆ ◇
「くぅぅ。リリ、エヴァさん。だ、大丈夫ぅ」
「わたし、ぜっこうちょー!」
「わたしも大丈夫ですわ。トシこそ、しっかりしなさい。三時の方向、上からオールレンジ端末来ます!」
激しいGに揺られるヴィローのコクピット内。
慣性制御魔法と身体強化魔法を全開にしていても、なお凄まじい力を受ける僕達。
全周天モニターでは、地上と空がくるくると回る。
そんな中でも的確に指示してくれるエヴァさんの声を頼りに、そちらに手持ちのビームカービンを向け、トリガーを引く。
【端末の破壊を確認! 敵本体、七時の方角、下方から来ます】
「い、インメルマンターンからの攻撃だぁ!」
「きゃー」
「トシ、これきついぃ!」
一気に推力を上げつつ、脚部スラスターや可動スラスターの向きをコントロール。
マザーさんからヴィローが教わった空戦マニューバーの一つ、インメルマンターンからのスプリットS、強引な縦方向へのUターン連続機動を使う。
「ぐぅぅ。よし、背後を取った! 師匠、覚悟を!」
<お見事! でも、まだ甘いよ!>
完全に師匠の機体の背後を取ったヴィロー。
しかし、スラスターからの反動飛行ではなく、重力制御で飛ぶ師匠の機体バイラヴィーは器用にもくるりと向きを変え、背後に飛びながらヴィローの方を向いた。
「こ、今度は木の葉落としだぁ!」
「わーい」
「リリちゃん、喜んでいる暇は無いわよぉぉ!」
師匠からの攻撃を避けるべく、逆噴射しつつ一気に高度を落とす。
そして失速からの反転ブースト。
今度は師匠機体の下方を取り、両手のカービン銃を連射する。
【直撃、二発! 脚部と副腕に当たりました。このまま上昇しつつ背後から更に攻撃します。我が副腕、射出。エヴァ姫、制御お願いします】
「もー、ヴィローは無茶言うのぉ。リリちゃん、管制をお願い」
「まーかせて、おねーちゃん。魔力炉、慣性制御システム全開でいくよー。オールレンジ端末、六時の方角、正面来るの!」
「あいよ!」
スラスターを上手く使い、上昇しつつくるりと回るインサイドループでオールレンジ端末の背後に回り込み、撃墜。
「おにーちゃん、ミサイル六発来るよ!」
「ヴィロー! チャフ、魔力フレアー射出。エヴァさん、撃ち落とし任せます」
「任せて、トシ!」
迫りくる誘導ミサイルを、副腕からのプラズマ球弾で撃墜。
撃墜しそこなった弾頭も、魔力フレアーの輝きに誘導されて自爆する。
「今度はこっちの番。師匠、覚悟を! ヴィロー、空力バリア展開。副腕収納。アフターバーナー点火! 突撃だぁ」
【御意!】
アルコール燃料を燃やすアフターバーナーとやらを使い、更に加速するヴィロー。
重力制御を使って空を舞うバイラヴィーのように優雅には飛べないものの、そのスピードは音速すらも一瞬で越える。
<なにぃ、早い!>
音速衝撃波を纏い飛ぶヴィローに、オールレンジ誘導端末は弾き飛ばされる。
一瞬動きが止まった師匠機に、僕はビームの雨を降らせた。
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