第21話(累計 第67話) 偵察中の接敵!
「現在位置は何処、ヴィロー?」
【只今、ラウドより北西。約120キロ地点。高度一万フィート。貴族連合との境界付近です。今のところ、周囲八千メートルに飛行物体なし】
「魔力レーダーにも周囲100キロ範囲に大きな反応無いよ」
今日も定期の早朝偵察飛行。
リリと一緒の単独飛行。
合体支援飛行攻撃機「羽」とエヴァさんは温存している。
……神話級ギガスの修理部品も入手は難しいけれど、パトラムの予備部品となれば、リリが眠っていた場所、遺跡宇宙船の中にしかないからね。エヴァさんは普通にお休み日。リリとエヴァさんは交互にコ・パイロットしてくれているんだ。
大規模改修後のヴィローチャナ。
単独での長距離飛行能力は十分あり、音速を出さない範囲なら少々遠くまで飛べる。
【今日も何もなしですね。しかし、プロト女史とやらがいつまでも大人しいはずもないですし】
「ヴィローは心配性ね。わたしとトシおにーちゃんとヴィローなら、絶対大丈夫なの!」
「その通りなら良いんだけどねぇ。実際、次に戦うのも多分神話級機体だろうし」
ラザーリがレダさんと共に貸与された「デーヴェーンドラ」。
そしてワイズマンがエヴァさんと共に駆った「イシュヴァーラ」。
どれもこれも、改修前のヴィローを上回る機体だった。
……ヴィローのモチーフは修羅鬼神だけれども、デーヴェは天帝神。イシュに至れば破壊神だものね。明らかにモチーフ元が格上。
「ヴィロー。マザーさんのところで他の神話級ギガスの話を聞いているんだよな。他にはどんなのがいそうなんだ?」
【既に移民船団の初期事故にて失われた機体も多いので、なんともです。ただ、天空竜や創造神、女性三神などをモチーフにした機体が存在したとは聞いています】
「なんか、皆強そうなの。でも、おにーちゃんとヴィローなら無敵だよね」
この時、僕らはすっかり油断をしていた。
これまで空中で襲われた事はほとんどない。
こと、偵察飛行中に飼稼働中の敵機に発見されたことも無かった。
そう、この時までは。
「ん! 何? この悪寒は??」
【マスター! 膨大な魔力反応を感知。位置は……。一時半の方向、距離五千。ステルスされてましたぁ!】
「敵の熱源反応が急速増大。おにーちゃん、ビームが来るの!」
「ヴィロー! 急ぎスラスターをカット。逆噴射しつつ、高度を落とすぞぉ。リリ、シートベルトとヘルメットを」
僕が、これまで感じたことも無い悪寒を覚えた瞬間。
ロックオン警報が突然コクピット内に響く。
ヴィローやリリからの情報提示、そしてメインモニター内に閃光が見えた瞬間、僕はヴィローの軌道を無理やり変えた。
【分解光線砲、来ます】
「くそぉ。リリ、何処かにしがみつけー!」
僕は落下方向にスラスターを最大噴射。
重力加速度も加えて、急速落下。
迫りくる閃光の射線からヴィローを外した。
【敵機体の位置を確認。望遠映像に出します。お! これは女性体ギガスに見えます】
ヴィローがモニターに表示させた敵ギガス。
手持ち型の大型分解光線砲を構え、空中に浮かぶ。
ヴィローがいう様に、これまで対峙してきた敵よりも装甲や骨格が華奢。
黒地に金の縁取り装甲
胸部は膨れ上がり、腹部はほっそり。
反対に腰から下が膨れ、一見女性に見える体形。
「じゃあ、さっき話していた?」
「神様のお嫁さんなの?」
【おそらく、女性三神のうちの一機かと。あ、敵機より高熱原体が多数射出されました。速度は音速の倍! 更にこちらにまっしぐらに向かってきます。これは誘導弾です】
僕らを仕留めきれなかった敵ギガス。
今度は、誘導弾を一気に撃ち放つ。
【敵機は、更に機動を開始。ミサイルで当機を追い込んで本体からの射撃で仕留めに掛かると判断!】
「ヴィロー! こっちも高度を稼いで逃げるぞ。敵機の方が空中戦が得意。更に誘導弾まで使ってくるんじゃ、圧倒的に不利だ」
「おにーちゃん。出力をオーバーブーストにするね。機体保護と魔力炉の制御は、わたしに任せて!」
一旦落ちた高度を再び取り戻し、加速していくヴィロー。
しかし、ビーム回避時に失った運動エネルギーは大きく、あっというまにミサイルがヴィローに迫る。
……くそぉ。高度を下げなきゃ避けれなかったのが悔やまれる。もしかして、最初から追い込まれていた?
「ヴィロー! 魔石ダミーとフレア、チャフを展開。ミサイルを回避するぞ」
【御意。あ、敵機が更に誘導兵器らしきものを数機射出。今度は速度は遅いですが機動が更に複雑。オールレンジ攻撃媒体と推定】
……ビームで足止め。ミサイルで追い込んで、更に四方からオールレンジ兵器。切り合いをせずに殺しに来るかぁ! 無茶苦茶、手ごわいぞ!
ヴィローがばらまいた魔石が砕ける瞬間、巨大なマナの閃光が発生。
そこにミサイルは吸い込まれる様にぶつかり、爆発した。
……ミサイルの次は……。見えた!
目まぐるしく変わるモニター画面の端。
そこに火炎を吐き出して飛翔する剣を見た。
「空飛ぶ剣かよぉ。ヴィロー!」
【はい! こっちも腕を飛ばします】
「おにーちゃん、敵がこっち見てる。止まったら撃ってくるよ!」
副腕を四本飛ばし、囲み込むように飛んでくる剣を叩き落とす。
しかし本体の動きがどうしても遅くなるので、敵機はその隙を狙って一発で仕留める気なのだろう。
「ヴィロー! こっちも撃つぞ。腹部分解光線砲、用意! 目くらまし気味に撃ち込んだら、地上に降りて隠れる」
【御意】
「うん、おにーちゃん」
このまま空中射撃戦をすれば、どんどんこちらに不利になる。
本体の飛行速度は互角、もしくは向こうの方がやや上。
遠距離攻撃能力は、正直勝負にならない。
……この追い込む射撃優先の戦い方。何処かで見た覚えが?
デジャブらしき感覚が脳内を走るが、今はこの「死の包囲網」から逃げるのが優先。
「ビーム出力は三割。光量と魔力散布、拡散度を高めに調整宜しく」
【御意】
「敵機の動きが止まったの。今!」
敵機が空中停止、大砲をこっちに構えたのが見えた。
「おお! 拡散ビーム発射」
敵機目がけて、最大光量に調整された拡散ビームが射出される。
閃光がカメラに入ったのか、敵機の動きが硬直した。
「このまま地上にトンズラするぞー」
【御意】
「地上に魔力散弾撃って、土煙を起こすの!」
地上で起きた爆発と土煙。
僕は、墜落する勢いで土煙の中にヴィローを突撃させる。
後は、砂丘の中を僕らは必死に逃げ回った。
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