第13話(累計 第59話) カレリアに現れた謎の少女達。
「人事委員長殿。中央委員長、ラザーリ殿はどちらにいらっしゃるのですか? お尋ねしたい事が山ほどあるのですが?」
「現在、ラザーリ殿は、私室にてお休み中です。昨晩、遅くに街の外に出られていましたそうですから」
カレリア公館内の通路にて、強面な公安委員長が人事委員長パブロに対し、強い口調で問いかける。
しかし、今日も横にはべらせ頬を赤らめた美少女メイドの尻を撫でているパブロは、事も無しに答える。
「では、人員管理をしています貴方にお尋ねします。現在、機械整備倉庫にて機械人形を整備している少女たち、そしてプラント施設内で勝手に作業をしている少女らは何者ですか? 皆、同じような顔と姿で見分けがつかず、実に不気味で気持ち悪いです」
公安委員長は、各所で今まで見たことが無い少女らを多数見かけた
彼女たちは、全て感情が乏しい。
されど全員は美しい同じ顔。
白い肌、華奢な体形、栗色の髪、藍色の目も全員同じ。
やや尖った耳を各自していて、全員機械に取りつき無言で作業を行っている。
「ああ、あの子らですね。ラザーリ様からは、『ノルニルの子達』だと聞いています。あのギガスを持ち込んできた組織の構成員たちで、全員が姉妹、双子みたいなものらしいですね。実に愛らしい子達なので、私個人的に一人は欲しくなりました」
今度はメイドの膨らんだ胸を触りながら下品に話す、恰幅良いパブロ。
その驚愕な答えに、公安委員長は理解不能と驚愕した。
「全員がきょうだい? まさか、数十人もの双子? そんな事はありえない! 三人でも死産となる場合も多いのに?」
「つまり、そんな事が可能に出来る超科学技術の組織ということです。貴方も硬い頭を柔らかくして考えましょう。優秀で美しい子らを作り出せる。それは、我らが目的。『清純なる子供たちによる世界構築』と同一ではないでしょうか。事実、ラザーリ様も彼女らと同種の少女を私室にて愛していらっしゃるご様子。ああ、実に素晴らしい」
ニヤニヤとしながら、自らの夢。
見目麗しい子供たちに己が囲まれた花園を夢見るパブロ。
そんな彼を、恐怖の眼差しで公安委員長は見た。
……あのギガスとやらも得体がしれん。我々は、一体何者と手を組んだのだ? 我らが同志代表は、何を考えていらっしゃるのだ?
◆ ◇ ◆ ◇
「フハハハ! もう、これでボクらがカレリアは無敵だ!」
「ラザーリ様、落ち着いてくださいませ。今回は無事に兵装が稼働しましたが、まだデーヴェーンドラは調整中の機体です。更に、まだまだ秘匿すべき状態ですの。後は、我らがノルニルに全てお任せくださいな」
窓も雨戸も締め切り、灯りもつけない暗い寝室。
興奮するラザーリを落ち着かせるべく、レダは慈母の表情でぎゅっと抱きしめる。
「うん、分かったよ、レダ。ギガスの調整は君たちに任せる。出来れば、同時にプラントの整備も頼めれば助かるのだけれど」
「ええ。プラントにも機体整備同様にノルニルの子達。量産型の妹らを既に派遣していますわ。ラザーリ様は、安心してくださいませ」
「ありがとう、ママ」
ラザーリはベットにレダを押し倒す。
そして、二人は愛を確かめ合った。
◆ ◇ ◆ ◇
何処とも知れぬ場所、建物。
その中の一室、高度な情報機器に囲まれた執務室で二人の娘たちが居る。
「プロトお姉さま。ノルニルの子たちのカレリアへの派遣、完了しました。我々の妹たちを、今の段階で表に出して宜しかったのでしょうか? 神話級機体の提供もそうです」
「そこは気にしないで良いわ、アルクメネ。どっちにしろ、妹たちもそろそろ起こした方が良かったの。彼女達にも、自我を得るチャンスは与えてあげたいですし」
栗色髪で金の瞳を持つ少女アルクメネから報告を受けるノルニルシリーズの妙齢な長姉、プロト。
彼女は憂鬱そうに金色の髪をかき上げ、妹からの報告を受けていた。
「アルクメネ。今現在、貴族連合・結社と共和国の軍事バランスは、やや共和国側が優位。しかし、共和国も貴族を嫌う以外は共通項の無い烏合の衆。共和国の結束を崩す意味でも、今回のデーヴェーンドラの派遣は最適ですわ。あの機体は遠距離魔術戦を得意としています。戦闘は素人で『駒』な同志代表とやらにも問題無く操れるでしょう。後は、適度にお互い疲弊してくれれば良いのです」
「プロトお姉さま。確かにおっしゃる通りですが、このまま貴族連合に対しカレリアが攻撃を開始すれば、ますます貴族連合側が弱体化します。更には増長したラザーリは、街、都市部をも襲いかねません。わたくし共、ノルニルは人類滅亡につながりかねない都市攻撃は望みませんですわ」
プロト00は、ラザーリを駒と扱い共和国と貴族連合間の軍事バランスを崩そうと考える。
お互いに適度に疲弊し、大きな戦闘にならない事を願う。
しかし、アルクメネは愚かなラザーリの暴走を危惧する。
彼女たち、ノルニルシリーズと比べ、ヒトは愚かな種族。
ノルニルらによる支配が無ければ、暴走し簡単に滅亡すると彼女は思っていた。
「そこは安心よ、アルクメネ。あの近くには貴族連合から離れたラウドがありますの。そして、かの地には力を持つお人好しでお節介焼きが居ますわ。必要以上に破壊をすれば、必ず『あのお人好し』が介入するに違いないの」
「つまり、リリやエヴァが駆るヴィローチャナで邪魔になったデーヴェーンドラを処分なさると? ラザーリは用無しとしても、レダ04は回収せねばならないですね」
「そこは、あの子次第かしら。エヴァ02に関しては、本人にこちらの存在を知らせずにワイズマンの元に送りましたから、こちらの想定外の行動をしました。ですが、レダ04は元よりわたくしが直接命令を下して派遣しています。後の事は、あの子自身の判断に任せましょう。わたくし達はヒトによる作り物であっても、自我ある存在。ヒトの上位種が愚かな判断を行わない事を祈りますわ」
机に置かれたグラス、その中に満たされた琥珀色の液体を美味しそうに飲み干すプロト00。
情報機器のモニターのみを照明とする部屋の中、彼女の碧眼が怪しく光った。
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