第59話(累計 第105話) 終わり良ければ、すべてよし。
「おにーちゃん。落ちてた隕石、全部砕けたよ」
「良かった。でも、ごめん。二人を巻き込んじゃった」
「まあ、しょうがないわ。そんなトシとリリちゃんが大好きなんだから、わたし」
今、僕たちは暁色の空の元、大地へむかって落下している。
必殺の大技。
残る全ての魔力と重力制御系のシステムを全部使って、疑似マイクロブラックホールを撃ちだす必殺の兵器。
『黒洞・爆縮』。
一億トンを超える超重量による無限大の潮汐力によって、100メートルを超える氷塊も完全に砕け散った。
「ああ、このまま終わっちゃうのかなぁ。まあ、世界を救えたとは思うけど」
「諦めるのは早すぎよ、トシ。わたしがいて、そんな悲劇を迎えさせるはず無いでしょ?」
「おにーちゃんのばかぁ。まだリリ達は生きてるのよ。ね、ヴィロー」
【はい。姫様がたのおっしゃる通りです】
沢山の星のカケラが流星雨として降り注ぐ空。
ヴィローは姿勢制御する余力も無くし、空力加熱をうけて装甲が溶解しそうになっている。
まだ、構造強化魔法が効いているうちは大丈夫だろうが、それすら切れたら空気の壁にぶつかり、機体はバラバラになるだろう。
「だって、もう余力も無いのに、どうやって……。ヴァハーナもかなり離れちゃったし」
マイクロ・ブラックホールの「蒸発」、大爆発によってヴィローはかなり吹き飛ばされ、今からヴァハーナに接触するのは不可能。
ヴァハーナも必死に僕らを回収しようと動いてくれているが、これまでの無理がたたっていて、動きが明らかに鈍い。
「あら、アタシは弟子に早々と諦める様な教育をしていないわよ、トシくん」
「そうですよ、トシ様。まったくわたしやデイお姉さまを撃破した方にしては諦めが早すぎですの」
「トシ坊! 俺は兄貴分として情けないぞ!」
「え? 師匠? それにレオンさん??」
生還を諦め始めた時、ヴィローに対し通信が入った。
半分壊れかけたレーダーには、下方から飛んでくるパトラムとそれに合体した量産型ヴィロー。
師匠の機体が迎えに来てくれた。
「どうして、僕らの位置が?」
「プロトさんが必死に連絡してくれましたわ。後は、魔力反応を追っかければね。まだまだ甘いわよ、トシくん」
落下するヴィローをしっかりとキャッチし、有線通信で僕にダメだしをしてくる師匠。
「はい、反省します。そういえば、地上の被害はどうなのですか、師匠? 小さい破片とはいえ、結構落ちてしまいましたが」
「ラウドは、被害なしね。落ちそうな破片は、わたしが撃破したし。カレリアの方はラザーリさんが守り切ったみたいね。上空から見た感じ、大きな爆発は見られないから、他の街も大丈夫そうよ」
師匠の機体に掴まれた後、慣性制御や重力シールドが効いて機体が安定する。
そして、離れていたヴァハーナも近づいてきた。
「もう、驚かせないでよぉ。わたくし、もう一人になるのはイヤなんだからぁ」
明らかに泣いている声のプロトさん。
また、僕の無茶で多くの人々を悲しませてしまった様だ。
「ごめんなさい、皆さん。また、ご迷惑をおかけしまいました」
「みんな、あんまりおにーちゃんを責めないで。隕石をちゃんと壊したんだから。ね、お願い!」
僕が謝ると、リリが必死に庇ってくれる。
「しょうがないわね。リリちゃんがそういうのなら、許してあげますわ。さて、わたくし。トシ様に何で心配させた事をお返してもらいましょうか? そうですわねぇ、一夜の睦事なぞ……」
「だめぇ! おにーちゃんはリリのモノなのぉ。プロトおねーちゃん、リリからおにーちゃんを取っちゃ嫌ぁ。今晩は、わたしが一緒のベットで寝るの、おにーちゃん」
「じゃあ今日は、わたしも一緒に寝かせてね、リリちゃん。貴方たちが悪い事をしないように監視しちゃうの。プロト姉さまもご一緒にどうですか?」
……睦事って……!? エッチな事じゃないか! リリ、良く分かったね。でも、僕の意見は何処に??
先程までのピンチは何処に言ったのやら。
しかし、今度は別のピンチ。
ノルニルの超美人姉妹に添い寝以上を要求される事のなってしまう。
「おにーちゃん。さあ、皆のところへ帰ろうね」
「うん。さあ、ヴィロー。凱旋だ!」
【御意。ではでは!】
◆ ◇ ◆ ◇
「で、ベット。とっても狭いんだけど。夜は寒いから、暖かいのは嬉しいけど?」
無事、ラウドに帰還した僕ら。
沢山の人々の歓喜の声で迎えてもらった。
そして、伯爵様の主催する宴会に招かれ、しこたまお酒や御馳走を御馳走になった。
……レオンさんは嬉しかったからか、呑み過ぎて『へべれけ』になるし、ナオミは僕らの事が心配で泣き疲れてたから、宴会途中で寝ちゃったんだ。
そしてあてがわれた自室に帰ると、そこにはキング。
いやエンペラーサイズとも言える巨大なベットが二個くっつけられていた。
……部屋にあるはずの机や棚、タンスとかが全部取り除こされていたのにはびっくり。重い家具だから、F級とかのギガスで運んだに違いないや。
嫌な予感がしつつも、個室にあるシャワーを浴びてからドアを開けると、部屋の空気が違う。
そう、どこか甘い香りが充満しているのだ。
「おにーちゃん、待ってたよ。一人、寂しいから寝てたナオミちゃんも連れてきたの」
「お兄ちゃん。お、お疲れぇぇ」
「うふふ。トシ、四人の乙女に囲まれますのは、極楽か。果たして生殺しの地獄でしょうか」
「トシ様。さあ、わたくしの豊満な胸の中でお休みを」
ベットの上には、三人のノルニル姉妹。
そして僕の実妹が僕を待っていた。
「はぁ。今晩は眠れそうもないや」
僕はため息一つついて、女の子達が待ち構えているベットに飛び込んだ。
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