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64.機械メイドは削り取る

 

 魔力物質構成能力マテリアライズ

 これが機械族が持つ種族としての固有能力じゃ。

 自身の身体を魔力によって分解、そして自分のイメージする物へと再構成する能力じゃな。

 スピアは今片腕を魔力物質構成能力マテリアライズして魔力を発射する砲身へと変化させて攻撃したわけじゃ。

 放たれたのは魔力の弾丸。しかも魔力じゃから色はない。更には速い。そしてモヒカンヘアーには恐らくは魔力を知覚するような能力はない。もしそんな物が彼奴の身にあるのであれば自身の魔力を全く隠してない我の魔力に気づいたじゃろうし、スピアの魔力物質構成能力マテリアライズが発動した段階で逃げると思うんじゃよ。そんな素ぶりは全く見られないモヒカンヘアーに対して、不可視の一撃がかなりの至近距離で放たれたわけじゃ。

 そして我の優れたドラゴンアイは圧縮された螺旋状に回転する魔力がスピアの腕の先にいるモヒカンヘアーに向かい放たれ、その頭で存在感を示すモヒカンヘアーと毛根を削るように宙を奔り、そして消し飛ばしていくのを捉えた。

 目の前には腕の砲身から煙を上げるスピアと象徴であったモヒカンヘアーが消し飛ばされた元モヒカンヘアーA改め、唯のハゲ、そしてモヒカンヘアーBとCという異様な状況じゃ。

 毛根って削れるんじゃな……


「へ、外しやがったか。ビビらせやがって!」


 どうやら元モヒカンは頭の上がスッキリしたことに気付いていないらしく、スピアの奴がただ、外しただけだと思っとるらしい。


「あ、兄貴……」

「あ? なんだ?」


 震えるような声でモヒカンBが現実を知らないハゲに声をかける。やめるんじゃ! 今現実を突きつけるのはよくない!


「兄貴の頭が!」

「俺のモヒカンがどうかしたのか?」


 なんか誇らしげじゃな。モヒカンってそんなに偉大なのか? 人間ってよくわからんな。


「モヒカンが無くなってるんだ!」

「何いってやがる?」


 ハゲはモヒカンCの言葉を鼻で笑っとるんじゃが、現実にはモヒカンは無くなっており、更には毛根までお亡くなりになっておるのじゃ。モヒカンが再起する事はもうない!


「俺のモヒカンがなくなるわけ……」


 確認するかのようにハゲが先程までモヒカンがあった場所へと手を伸ばし、空振る。そりゃ無くなってるんじゃから空振りをするわけじゃ。

 一度空振ったにも関わらず、最早ないモヒカンを探すように手を動かし、次に頭をペタペタと手で触るハゲの姿は滑稽を通り越して哀れと言えるじゃろうな。


「俺のモヒカンが……」


 ついに現実を認めた様子のハゲがさっきまで我等を恫喝していたとは思えんくらいに弱々しい声で呟きな、崩れるように膝を付いた。

 え、モヒカンってそんな心神喪失するくらいに大事な物なのか?


「あ、兄貴!」

「てめえ、よくも兄貴のモヒカンを!」


 崩れ落ちたハゲを介抱するモヒカンC、そしてスピアの武器を見た後にはオモチャにしか見えないようなナイフを構えてモヒカンBがスピアへと飛び掛かる。

 ハゲ、慕われとるのう。モヒカンに。


「Rブレードヒート」


 飛びかかってくるモヒカンBに対してスピアは慌てる事なく二度目の魔力物質構成能力マテリアライズを発動。右腕が砲身から鋭利な刃へと構成され、熱を帯びるようにその刃が赤く染まり、紅い軌跡をえがくように宙を閃く。

 モヒカンBがナイフを繰り出すよりも速く、宙を駆けた赤い閃光はモヒカンBのナイフを瞬時に細切れにし、刃は更なる獲物を狙うかのようにやはり頭部のモヒカンのみを切断。さらにとんでもない熱エネルギー持つ刃がやはりというかやっぱりと言うべきか元モヒカンBの頭へと乗せられ、肉の焼ける臭いを漂わせながら毛根を焼き尽くした!


「ぐぎぃやぁぁぁぁぁぁ!」


 元モヒカンB、もといハゲBになった奴が頭にできた巨大な火傷のせいか馬鹿でかい悲鳴を上げる。

 そりゃそうじゃ。なにもない皮膚にいきなり熱々の刃を乗せられたらと考えたらどれほどの痛みが発生するのか我には壮絶もつかん。というかやられたくない。

 絶対に痛いだけですまんし。

 実際にやられたハゲBはモヒカンを失ったショックかその痛みからかはわからんが泡を吹いて、更には白目を剥いて気絶しよった。

 これは仕方ない。


「まだやりますか? というか斬ります」


 スピアが右腕の剣の切先をまだ残るモヒカンCへと向ける。

 なぜじゃろう? なんか副音声でモヒカン狩るぞ!って声が聞こえてきたんじゃが、幻聴か?


「く、覚えとけよ!」


 残されたモヒカンCが意外と機敏な動きを見せ、更に意外なくらいな腕力を使いハゲA、Bをが担ぐようにして逃げだした。

 いい判断じゃよな。


「逃すわけ……」


 そんなモヒカンを逃す気などないスピアが脚を踏み込もうとして、ゴキっと言う音を鳴らしながら脚を捻り転倒。


「あっ」


 更には倒れた拍子に先に地面に付いた右腕のブレードの上に咄嗟に倒れるのを阻止ようとした左腕を乗せてしまい、自分のブレードで自分の左腕を切断するというドジをしでかしよった。


「く、まさかトラップを仕掛けて撤退するなんて」

「いや、完全にお主の一人ドジじゃろ……」


 一瞬で自分の機動力と戦闘力を奪うとはなんてドジっ子なんじゃ……

 しかもそれが自分のドジのせいと気づいておらん。恐るべし、デメリットスキル。



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― 新着の感想 ―
凄まじい戦闘力を持つ機械メイドがドジっ子って怖すぎでしょう。
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