54.ドラゴンさんは選ぶ
「特技は水泳です」
「ダンジョン運営に役立ちませんゴミ屑。帰れ。次」
「特技は早食いです!」
「人間食べれますか? もしくはモンスターとか? 無理? ただの食べ過ぎな輩はいりません死ね。次」
「特技というか自慢はこの肉体美です!」
「ドリルにも耐えれますか? 十秒耐えたら採用で、あ、ちなみに私のドリルはオリハルコンすら削り切りますけど。あ、無理? じゃ帰れ」
魔界に広告とポスターを配布して数日。
とんでもない数の履歴書や面談の申し込みが来ておった。
そして今はそんな大量に送られてきた履歴書の確認や面談の真っ最中、正直に言おう。だるすぎる!
「なあなあ、この資格に書いてあるひよこの雄雌がわかるとかいうのはダンジョン運営に必要なのか?」
「……いると思います?」
「じゃよねー」
くだらない内容の履歴書が多すぎるんじゃよ!
なんなんじゃ、このジャンケンで絶対勝てるとか!必要か⁉︎
送られてきとる履歴書の大半がこんなのばっかりなんじゃよ。魔族は変な奴しかおらんのか!
じゃが、じゃんけんか。必ず勝てるのはすごい気がする。
「仕分けが終わらない……」
「なんで楽するために苦労をせんといかんのじゃ……」
ヘルガと共に履歴書の仕分けを始めて数時間。全く減る様子がない。じゃが面談担当をしとるスピアよりもマシかもしれん。
タマ? あやつはクマしか喋れないから部屋の掃除をして貰っておる。字、読めるかわからんし。書類を整理させたら爪で書類を切り裂いとったし。
「ご主人」
「なんじゃ?」
モニター越しに基本的に無表情のはずの機械族であるスピアがかなり怒った様子を見せて声を掛けてきたから返事をする。
「試験内容を変えても?」
「……どんな内容に?」
いやな予感はするけどスピアが暴発するほうが怖い。
まだ付き合いは短いがなんとなくやばいというのはわかるのじゃ。
「私が一発殴りますのでそれを耐えたらOKに変更を……」
「それって脳筋しか集まらん気がするんじゃが?」
「ある程度魔力がある者は多少は知恵があるはずです」
「ま、殺さん程度にするんじゃぞ?」
「はい、ドリルまでしか使いません」
ドリルってあれか。異世界のロボットが装備しとるやつじゃろ? 削るやつ。
肉削る気なんじゃろうか。
まあ、魔族ならそう簡単に死なんよな? 多分、きっとおそらく……
よし、何かあれば丸投げしよう。
「マスター、とりあえずは何人か雇わないと改善しませんよ」
「ヘルガが適当に選んだらどうじゃ?」
「私が選んでいいんですか?」
「…… 我が選ぶ」
此奴の運は明らかに悪い。
適当に選ぶと絶対に碌でもない奴を引き当てそうじゃ。そう、絶対に使えないような奴だったり、悪どい事をしてそうな奴をな!
まだ、我が選んだほうがマシな奴を引くはずじゃな。
とりあえずはと履歴書の山から適当に2枚の履歴書を引いた我はそれをヘルガに手渡すのだった。




