49.魔法使いさんは出会う
かなり久々の投稿になります
「いらっしゃいませゴミ屑♩」
「いきなり暴言を受けた⁉︎」
ダンジョンの入り口横に出来た建物に入るとメイド服を着た女にいきなり笑顔で暴言を吐かれた。
俺様、何もしてないに⁉︎
「新入りか」
「あの嬢ちゃんの暴言は気にすんな。いつもの事だからな」
「店の店員だ」
「あの拳で殴られたい……」
すでに建物内にいたらしい他の厳つい面をした冒険者達がティーカップを片手に俺様達の姿を見て教えてくれた。いや、いつも通りで暴言吐くのか? 店の店員だろ? いや、それよりもなんでこいつらはカフェスペースみたいなところで優雅なティータイムをしてるんだ?
「お客様もこちらのダンジョンに潜る命知らずな方々ですね♩ さっさとくたばれ」
「基本でこの暴言なのですか?」
すごい笑顔で罵倒してくる女を見てカティの奴が顔を引き攣らせてる。
いや、こんな罵倒されまくったら当たり前か。
「ああ、普通だ。なにせこいつは人間じゃないしな」
「人間じゃない?」
「お客様、ベルを下等な人間と一緒にするな♩」
和かな笑みを浮かべたメイド、ベルと呼ばれた女の子は店のカウンターを挟んでいた筈なのにいつの間にか俺様の目の前に立ち、いつ抜いたのかわからないフォークの切先を俺様の首筋に添えていた。
俺様はおろか戦士のナタリーすら全く反応できなかった。
「お、おう」
「わかればいいんです。このゴミクズ野郎♩」
首に添えられていたフォークを戻しながらベルは朗らかな笑みを浮かべてまたカウンターの奥へと戻っていった。
「新入り、ここではベルの嬢ちゃんに逆らうなよ?」
「油断すると死ぬからな」
「ああ、踏まれたい」
「紅茶がうまい」
なんか変な奴がいるけどとりあえずは助かったらしい。
「こ、ここは店だよな?」
見ると店内には回復用のポーションや武器や鎧といった物が置かれている。
リズィの奴は飾られたやたらとデカい宝玉が付いた杖を感動するような瞳で見上げてた。
「はい、ダンジョン探索をお助けする魔導具や武器、そしてガチャを提供させていただいております♩」
「ガチャ?」
「ガチャって何かしら?」
聞き慣れない言葉にカティが頭に疑問符を浮かべていた。俺様も聞いた事ないな。
「ガチャというのは言わばくじ引きです。
中身がランダムな武具などを入れさせていただいています。ただし、こちらは運営がダンジョン側が行っていますので確率はシビアです♩」
「……それ当たりあるの?」
ダンジョン側が運営なら当たりを入れないなんてことも出来るんじゃないのか?
「当たりが出ないように出来るんでがそれをやったら魔界のお偉方がやってきて罰金を取られるのでしません」
「そうなんだ……」
魔界も意外と細かいんだな。
というか魔界ってなんだ?
「実際に当たりはたまに出てるな」
「魔剣とかも見たな」
「紅茶の茶葉も当たりだな」
周りで見ていた連中も口々に言ってるところを見ると本当に当たりがあるみたいだな。いや、冒険者なら紅茶の茶葉は当たりじゃないだろ……
「ちなみに今の大当たりはバテルティアの宝玉杖で……」
「ガチャをしたい!」
基本的に無口で物静かなはずのリズィが身を乗り出すようにしてベルに詰め寄っていた。
「ガチャありがとうございます♩ 1回金貨1枚、10回回す10連ガチャでまとめて回すとお得な金貨9枚になります。
また魔石でもガチャを引けますが魔石の場合は魔石の大きさで回数が決まりますのでご了承ください。それとガチャはあちらの機械で行ってください」
ベルが和かに笑みを浮かべながら壁際の人混みへを手を向ける。なんか周りには涙を流して項垂れてる人が大量にいるんだが……
それを確認したリズィは魔法使いとは思えないほどの速度で向かっていった。速⁉︎
「バテルティアの宝玉杖は私が手に入れる!」
「でもリズィ、お金なんか持ってないでしょ?」
「そこのすぐに酒代に消える間抜けと違って私には貯蓄がある!」
リズィの手にはかなりの数の金貨が握られていた。こいつ、どんだけ溜め込んでんだよ!
「私は必ず当ててみせる!私の貯金はこれに出会うためにあったんだ!」
「嫌な出会いだ!」
リズィの目は完全に欲望に眩んでいた!




