43.ドラゴンさんは寝かしつける
『くまぁ! くまぁぁぁ!』
『ひぎゃぁぁぁ!』
『うでがぁぁぁ!』
モニターで見るダンジョン内はまさに地獄じゃな。タマが魔力ーサーベルを振るい次々に冒険者を血祭りにあげておる。タマに隙ができた時にダンジョン内の魔装を手にしたゴブリン達が襲いかかっておるようじゃが完全武装のタマに勝てる様子は見えんのう。背後から攻撃されようともアタックユニットの魔力噴射による高速移動で躱し、魔力サーベルや魔力ブラスターで迎撃している。
たまに魔法や剣や槍による攻撃を喰らってはおるがタマの鎧による防御を抜けるほどではない。
「あと十分くらいかのう」
タマをダンジョンで暴れさせておくとDPがうまいんじゃが全滅さしてしまう可能性がある。冒険者共にはダンジョンに入ってDPを落としていって欲しいからの。適度に生きて帰ってほしいんじゃよ。
「ま、マスター」
「なんじゃ反省したのか?」
苦しそうなヘルガの声に我は座っていた椅子を回転さすようにして振り返る。
その視線の先には正座をするヘルガの姿があった。しかもただの正座ではない。
正座をしている床はトゲトゲ仕様で触れると痛いやつに変えとるし、更に足の上には重い岩を乗せとるからな!
「地味に痛いんですけど」
「……普通は痛いだけじゃ済まんのじゃがな」
おそらくは身体強化の魔法を使っておるんじゃろうがヘルガが座っておるのは魔力を吸い続けるトゲトゲ床なんじゃがなぁ。全く魔法が弱くなっておる気配がないんじゃよな。
というかDPを無駄遣いした罰じゃろ⁉︎
「効率よくするためですよ。あ、あとタマをそろそろ戻してください。ダンジョン内の冒険者とゴブリンの数が六割をきりそうですし、タマの方もそろそろ魔力切れになります」
「う、うむ」
全く悪びれておらんのう⁉︎
しかも無駄に優秀じゃから腹が立つわ! ダサいジャージとメガネのくせに!
何となく腹ただしい思いをしながらもタマへと戻るように念話を送っておく。
我の念話を受け取ったらしいタマの奴も振り回していた魔力サーベルを背中のアタックユニットへと戻し、更には魔力噴射を噴射しながら冒険者やゴブリンと距離を取る。
それを確認した我はボタンを押し、タマの待機する床を下降させる。
それを隙と捉えたらしいゴブリンがタマへと襲い掛かるべく飛び掛かったが魔力ブラスターの砲身に見つめられて簡単に爆散しよった。
よ、容赦ない。
タマが悠々と姿を消していく中、ゴブリンや冒険者達は警戒しながら見ていることしかできん。
「どうですか、マスター! 私のタマの出来栄えは!」
「うん、悪かった。ヘルガは働きすぎなんじゃな」
罰を受けてるはずなのに瞳が爛々と輝いてるヘルガに若干引く。
ちょっとこやつを働かせ過ぎたかもしれんな。
よく考えたらこのダンジョンの運営はほぼヘルガがやってるわけじゃしな。人手不足というものじゃろう。タマも頑張ってはいるがそれは主に冒険者やモンスター共相手の戦いの部分じゃし。
「とりあえず寝とけ」
「はあ? マスター私は元気なんですけど⁉︎」
目の瞳孔がなんか変な感じに広がっててヤバいヘルガの額に向けて割は手加減してデコピンを放つ。
デコピンを喰らったヘルガの額からボカンという音が響き、ヘルガが一瞬で白目を剥いて気絶。ぐったりと力なく倒れおった。
「タマ、こやつを寝かしといてくれ」
「くまくま」
トゲトゲ床から解放されたヘルガを殺戮から戻ってきた血まみれのタマの奴が足を持って床を引き摺り、なんかそこらじゅうにヘルガの頭をぶつけるような挙動をしながらモニタールームを後にした。
あれって偶然じゃよな?タマの奴ってヘルガに懐いてるんじゃよな?
タマのヘルガへの忠誠を若干疑うような光景を見ながら我はヘルガを休ませることにしたのじゃった。