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4.ドラゴンさんは語る

 

「さて、マスター。これで私たちのダンジョンが如何に危ない状況かというのがよくわかったかと思います」


 一頻り暴れたことでストレスを発散したらしいヘルガが取り乱すことなく冷静にそんなことを言って来る。部屋はすでに半壊。我の体も一部切り飛ばされて再生に魔力を費やしている状態である。

 まぁ、確かに我が戦闘を行うたびにお金が減っていってては赤字にもなるというものだ。だがヘルガが暴れてもいろいろと赤字が出てる気がせんでもないがそこは言わないでおこう。


『ああ、よく理解した。如何に今我のいる環境がいつ命を落としてもおかしくないという状況をよぉぉぉく理解した』


 ヘルガの機嫌を損ねると死ねる!

 なにせこいつが持っている黄金の剣、あれはドラゴン種なら誰もが怖がるドラゴン殺しの聖剣じゃからのう。それをツッコミのハリセンの如く容易く使うヘルガは有能ではあるが恐ろしく危険な娘じゃ。


『…… 取りあえずその素振りしている剣を下げてくれんかのう?』

「マスターが私の話をきちんと聞いてくれるのであれば置きますが?」


 まるで我が話を聞かないかのような言い方じゃな!

 しかし、素振りを終え、無言で床に突き刺した黄金の剣とヘルガが怖いので口には出さない。


「とりあえずのダンジョンの方針としましては借金のDPの返済です」

『そうはいうが先立つものがないだろう?』


 すでに借金をしているのだ運営するだけのDPは底をついているはずだ。やりくり上手のヘルガがやって赤字なのだから余分なDPなど残っていなかろうに。


「すでに一億も借金があるのです。ここから多少借金が増えたところで誤差の範囲内です。幸いと言ってもいいほどにマスターの強さだけは! ダン連にも認められているほどですからさらに多少の借金ができても大した問題ではありません。いっそ臓器とか担保にして五億くらい借りません?」

『サラッと怖いこと言うのう⁉︎』


 確かにドラゴンの臓器なら色々と価値があるからそれくらい貸してくれそうじゃが嫌じゃよ⁉︎

 そしてダンジョン連絡協会。通称ダン連。

 ダンジョン運営のアドバイザーなどを派遣したり、さらにはDPの融資などもするダンジョンマスターは必ず登録している協会だ。

 人間側にもダンジョンの情報を流したりしてダンジョンを活性化させようと活動もしている。

 ダンジョンのランク付けなどもダン連の連中が行なっているらしい。あいつらならヘルガがいうように我の臓器を担保にしそうで怖い。


「最悪、マルコシアス商会にマスターを何日か貸し出して融通しようとしましたが、思いのほかマスターの私室にバカみたいにあったコレクションと財宝を売却し、多少のダンジョン運営の費用へと当てれそうなのでやめました」

『おい⁉︎』


 こいつ今なんて言った?

 マルコシアス商会に我を貸し出す⁉︎ コレクションの売却? 財宝の売却?


「安心してくださいマスター」


 にっこりとメガネ越しにもわかるほどのいい笑顔をしたヘルガ。なんだ…… もうすでに嫌な予感しかしない。


「コレクションはすでに九割は売却済みです。なぜかわかりませんが同じ物が三つあったりしたのですがそちらはセット販売などをしてモンスターオークションズに登録したところ予想外の高値がつきました。財宝は言わずとも売れてますね」

『な、なんだと……』


 我は慌てて人化の術を唱え、ヘルガと同じくらいのサイズになると長い黒髪をはためかせながら自分の部屋へと走る。


『ぁぁぁぁ⁉︎』


 そして扉を開け放つと、至高の存在たるドラゴンでありながらも大声を上げた後に膝をつきうな垂れた。

 我の私室はいつもならば扉を開くと煌びやかな黄金の輝きが出迎えてくれるのだがまずそれがない。山のように積んであった財宝の山はすでになく、二、三枚の金貨が床に転がっているだけだった。

 さらに我の趣味で集め壁に飾ってあったコレクションの人形もほぼ姿を消していた。残っているのは大した価値のないむさ苦しい男ものの人形(フィギア)で我が愛でてやまない美少女物の人形フィギアは数体ほどに減っていた。


「概要の説明をしますと」


 うな垂れている我を無視するかのようにしていつの間にか追いかけてきたらしいヘルガが目録のような物を眼を下ろしながら淡々と告げる。


「マスターの趣味のお人形さんは約三百万DP、財宝は二百万DPとなりました。なぜあんな人形が財宝よりも高値で売れたのかが疑問ですが」


 売られた金額よりもヘルガの一言に反応した我はゆらりと立ち上がる。


『あんな、だと⁉︎』

「ひ!」


 いきなり立ち上がり振り向いてきた我に驚いたのかヘルガが悲鳴を上げる。今の我はかなり厳つい顔をしていたことだろう。それ程までに我は勝手にコレクションを売り払われていたことに憤りを感じていたのだから!


「あの人形はな! 我が異界から買い集めた逸品の数々じゃぞ! それをあんなだと⁉︎」

「だ、だって魔力も込もってないただの人形じゃないですか……」


 こいつはまるでわかっておらんのう!

 我は棚に残っている美少女フィギアの一つを手に取るとヘルガへと詰め寄る。


「ひぃっ!」


 突然詰め寄られたことに驚いたらしいヘルガが小さく悲鳴を漏らす。


「お前にはわからないのか! この実現の人間では現しようのない脚線美! そして現実では年を重ねれば垂れるしかないが人形によって永遠に保たれるOMUNEの美しさが⁉︎ これらの美しさに比べたら現実リアルの歳をとるとともに垂れたりシワが増えたりする女なんてゴミに等しいんじゃぞ! いや、むしろ経年劣化がある分価値がないに等しい! そう考えたらヘルガ! お前だって歳をとれば人形フィギア以下の存在なんだからな!」


 怒涛の勢いで喋り続けたせいかヘルガは下へ俯いているようだな。もしかしたら泣いているのかもしれんな。

 ふ、少し熱く語り過ぎたようだ。語りすぎたわい。大人気なかったかもしれないな。


「ふ、」

「ふ?」


 よく見ると俯いているヘルガは涙を流しているわけではなく、肩を震わしているようだが……


「服を着ずに何を熱く見苦しく語っとるんですか! このハレンチどバカマスターがぁぁぁぁぁ! ついでに私を人形と比べるナァァァァァ!」


 顔をあげたヘルガの瞳には涙などなく、顔を赤く染めているだけだった。だが次いで繰り出された速く鋭い蹴りが我が持っていた人形事手を砕き、さらにはは人化している我の横腹へと突き刺さった。


「んぁぁぁぁ⁉︎」


 無様な悲鳴を上げた我は蹴り抜かれた腹を抑え崩れ落ちるしかなかったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 全然大事にされてませんね。
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