34.使い魔さんは換金アイテムを手に入れていた
「マルコシアス商会には連絡をしておきました。すぐにくるそうです」
「そりゃぁ、よかったのう」
淡々と告げるヘルガとは逆に我は自分の部屋の床に座り込み、肩で息をしているのを必死に整えようとしていた。
変態のマルコシアスに会うなんて嫌じゃったから逃げようとしたんじゃが、この鎖、なんでか引きちぎれないんじゃ!
おそらく装着した者を捕獲するように魔力封じやら弱体化の魔法が付与されておるんじゃろうが、いくら能力低下のペナルティを喰らっていても我ドラゴンなんじゃぞ? ただの魔導具なら引きちぎれるはずなんじゃが。試しにタマに引っ張ってもらったんじゃが、我の首が締まるだけじゃった。なんかペットみたいな扱いでムカついたからタマの奴は殴っておいた。
「マスター、無駄な努力はやめた方がいいかと」
諦めずにガチャガチャと音を立てながら首輪に付いた鎖を弄っていたらヘルガが呆れたような顔をしながら近づいてきた。
「これはオリハルコンを加工して作られた首輪と鎖です。なんと装着者の能力を首輪を付けた人が自在に低下さすことができるというとんでもない代物なんです」
「なんじゃと!」
お、オリハルコンじゃと⁉︎ 神代の遺物じゃないか! そんなヤバい代物、我は持っとらんかったはずじゃぞ! というかそんなものあるならば人形が売られる様を見たりせずに済んだじゃろうし、即座に売っとるわ!
「買いました。マスターのツケで。マルコシアス商会から」
「ツケ⁉︎ マルコシアス商会から⁉︎」
こやつ、我の名前で何勝手しとるんじゃ⁉︎ しかもマルコシアス商会からじゃと⁉︎ しかもオリハルコンじゃぞ。
聞いた話ではオリハルコンの欠片だけで国が買えるやら、そのちょっとした欠片を巡って国が争い幾つも滅びたとか聞いたことがあるんじゃが……
この鎖と首輪、一体どれだけの金額になるかなど想像もしたくないんじゃが。
「何を勝手に!」
「マスターの寝顔写真と着用していたパジャマ等を提供したところ快くお友達価格で売ってくださりました」
「我の着ておったパジャマが無くなっておったのはそれでか!」
昨日寝ようとしたら下着しかなかったしな。ヘルガが洗濯してくれていると思って裸で寝ていたがまさか売られているとは……
「マスターは寝る時はノーパンでしたので下着は回収できませんでした。もし、下着も回収できていたら更なる値引きも期待できたのですが」
「おぬし、我の服を換金アイテムか何かと勘違いしとらんか⁉︎」
たまに我の服とかが無くなっとった理由がわかったわ! 売られとったわけじゃな!
「借金ってつらいですから」
「いや、明らかに今回はお主が買ったコレが原因じゃよな?そもそもマルコシアスに会わすために借金をするなんて本末転倒じゃよな⁉︎」
金額を聞きたくない。聞いたら絶対に借金がとんでもない額になってるに決まっとるし!
「丁度マスターに首輪を付けたいなと思ってましたし、丁度いいかなと思いまして。アクセサリーとして」
「丁度いいで我の借金を増やすでないわぁぁぁぁぁ!」
「美少女に首輪ってそそりますよねー」
「変態みたいな発言するでないわぁぁぁぁぁぁ!」
私室に我の心の底からの絶叫が響くのだった。




