32.ドラゴンさんは叫んで喧嘩を売る
最果ての地ウォーケン。
モンスター大量発生が頻発する土地。
モンスターを狩り生計を立てる連中にとっては聖地。一般人にとっては死が隣人の大地。
それでもいいなら寄っといで!
by冒険者ギルド一同
「なんじゃこの紙切れ」
勇者達が死んでドロップした戦利品を回収し、ヘルガと共に売れる物を調べているとよくわからん謳い文句が書かれた紙切れが出てきたのでそれを読んだ我は首を傾げた。
「ここって世界の果てじゃったのか?」
「マスター、そんなわけないじゃないですか」
我が疑問に思ってせっせと目録を作っているヘルガへと尋ねるとため息混じりの返答があった。
「ここが最果てと呼ばれているのは人類がここまでしか住めるような環境じゃないからです。実際にはちゃんと土地がありますし。まあ、人類が進出しようとするものなら人類なんてすぐに淘汰されるような土地ですけど」
「なるほどのう」
我の記憶でもこの地の先に住んでおる魔人やドラゴンとかもおったから、この紙切れを見た時は大地が小さくなったのかと不安になったぞ。
「魔神竜とか来たら人間という種が消えるじゃろうな」
「マスター、魔神竜じゃなくても邪竜クラスでも人は簡単に消えます。自分を基準にしないように」
我を基準になどしてはおらぬが、邪竜クラスで人間死ぬのか。いや、この前のダンジョン災害でも街とかなら消えかねん規模だったと考えたら当たり前か。
我なら邪竜クラスなら瞬殺、魔神竜クラスなら…… ギリギリいい勝負して勝てるかどうかかのう。
うちの姉妹なら多分、ボコる。あの二人には邪竜も魔神竜もさして差など無いに等しい。徹底的に逆らってはいけない相手という事を魂に刻みつけるまでボコり続けるじゃろうな。そのあとにペットにされるか食べられるな。
「で、なんか売れそうなのはあるのか?」
「装備一式は問題ないかと。まあ、普通の場所では売れませんが」
普通に考えて勇者達の装備品じゃからなぁ。普通の道具屋に売ることもできん。なんか輝きが違うし。
となればそういった物を曰く付きの物を取り扱う場所を使うのがいいんじゃろうな。
「となるとあそこか」
「そうなりますね」
曰く付きの物を買い取ってくれる所に心当たりはあるんじゃが気は進まんのう。
「あそこ以外で……」
「あそこが一番高く買い取ってくれます。なにせマスターの事が大のお気に入りですし」
「むぅぅ」
我、嫌なんじゃがなぁ。
あそこ、というかマルコシアル商会は。
やたらと高く買い取ってくれるんじゃが、あそこの主と話をする、いや、同じ空間にいると我のSAN値が下がるんじゃよなぁ。
「なんならマスターの使用済みの下着も売りましょう。マルコルさんなら高く買い取ってくれますよ」
「え、嫌なんじゃが……」
何普通に我の下着売ろうとしてるの?
というか我いい加減にドラゴンの姿に戻りたいんじゃが?人の姿は窮屈なんじゃ。
「マスターがドラゴンに戻る能力は私の権限でロックしています」
「なにやってくれとるんじゃ!」
そんなことされたら我はこのか弱そうな人間の姿で生活をしないといけない羽目になるじゃろが!
というか、ダンジョンの最奥におるのがロリとか情けなすぎるわ!
「最近流行ってるみたいですよ? 美少女TUEEEってやつ」
「それは創作物の中の話じゃろうが! 実際にロリが玉座に座っておったら唯のゴッコ遊びにしか見えんわ!」
「あ、今世界中の合法ロリに喧嘩売りましたよマスター?」
「売っとるのはお前じゃァァァァァァァァ!」
馬鹿にしてるとしか思えないヘルガの発言に我はダンジョンが震えるくらいの怒鳴り声を上げたのだった。




