31.勇者さんは復活する
「神よ、愚かなものを復活させたまえ!」
野太い声が耳に聞こえる。その声が聞こえると共に意識が上昇しているような感覚を覚えた。
「なんなんだあの女⁉︎」
神殿で生き返った俺様、ソラは復活後の第一声を大声で叫んだ。
「やかましい」
ガッ!
そして蘇生してくれたであろう側にいた神官に頭を殴られた。棍棒で。
「他の人に迷惑だ。静かにしろ」
「す、すいません」
「チっ」
舌打ちした神官は不機嫌そうに棍棒を手にしたまま去って行った。
いや、だったら言葉でまずは注意するべきじゃないのか? 神官だろう? 神に仕える者なんだろ?
いや、神の使徒にしてはあの神官やばいだろ。
顔には幾つも剣で斬られたみたいな傷があるし、片目はアイパッチしてるし、なにより神官服がはち切れんばかりの筋肉! 神官じゃなくて戦士って言われた方がしっくりくるぞ!
「ソラ様!」
棍棒で殴られた頭をさすっていると名前を呼ばれたのでそちらへと視線を向けるとおっぱいが走っていた! それも上下に凄い運動をながら!
「おお、おっぱ…… いや、カティ! 無事だったか!」
「今おっぱいって言おうとしませんでした⁉︎」
「静かにしろ」
ガッガッ! ボン!
また殴られた。棍棒で。
しかも俺様だけではなくカティも一緒に。
いや、俺様はたんこぶができるくらいだったんだがカティの奴は当たりどころが悪かったのか頭が吹き飛んでたぞ⁉︎ 首無し死体が俺に抱きついてきたから死ぬほど怖いんだが⁉︎
「だから言葉でまず言えよ⁉︎」
「ここは神殿で、さらに言えば俺は神官だ。つまりここの法は俺次第だ。そして今の法は俺が二日酔いだから静かにしろ。だ」
「いやだから……」
「そしてここで俺に逆らえば死罪。もう一回死んどくか?」
「静かにします!」
片目で睨まれ、更には手にしてる血が滴る棍棒をゆっくりと振り上げる様を見せつけられたら流石に俺様も黙る。
復活するとしても命が惜しい。勇者候補生の俺ではこんな見た感じが歴戦の勇者みたいな神官にはフル装備でも勝てるとは到底思えん。
というか二日酔いの神官ってなんなんだよ……
酒を飲んじゃダメなんじゃないのか?
「おう、勇者生き返ったか」
「ん、無事で何より」
神官には逆らうまいと考えていると一緒に死んだ戦士のリズィと魔法使いのナタリーが姿を現した。相変わらず二人の巨乳は素晴らしいな!
「ああ、二人とも無事だったか」
「おう、死んだから装備はなくなったがな」
「最低保証の布の服だけでは心許ない」
「カティが今、また死んだからしばらくは金がないぞ」
「マジかよ」
「ゾンビになる前にお金を貯めないといけない」
勇者である俺様のスキルでパーティの仲間は死んでも神殿で復活することができる。普通の人も金さえ払えば死体がある状態なら復活できる。そして蘇生にはそれなりの金を神殿に寄付しなければいけないがな。そして復活してもしばらくの間は弱体化するし、更には装備品もなくなる。死んだ場所に行けば装備品はあるかもしれんが丸腰では無理だな。
あ、死んでから一週間以内なら死体を神殿に持っていけば後蘇生はしてくれる。お金はかなり取られるけど……
一週間経つとゾンビになるらしいがな。
カティを蘇生さすためにもまずは金だな。
「しかし、ここはどこの街だ?」
「さあな。私も来た事ないからしらん」
「辺境ということしかわからない」
頭がなくなったカティを神殿からレンタルした棺桶(もちろん有料)に入れ、蓋を閉じ、棺桶に付けられた紐をひっぱりながら神殿の外へ向かって歩く。
「あん? お前らここがどこか分かってなかったのか?」
ついさっきカティの頭を棍棒で殴って撲殺した神官が今度は棍棒ではなく酒瓶を煽りながら声を掛けてきた。
人は殴るわ、酒は飲むわって、こいつ本当に神官か? 不良神官じゃないか。
「ここは世界の果て、最果ての都市ウォーケンだ」
「「「さ、最果てぇぇぇぇ⁉︎」」」
不良神官の酒臭い息と共に吐き出された言葉に俺様達は悲鳴に近い声を上げたのだった。