21.使い魔さん出陣
「まあ、勇者(仮)が死ぬのは問題あるまい」
むしろダン連からしたら喜ばれることはあっても怒られることはないはずじゃし。
いや、でも弱い勇者ならダンジョンに監禁してポイントを稼ぐという手段もあったか。勿体無いことをしたのう。
いや、あれは害虫みたいに復活するから問題ないはず、それはさておきじゃ。
「問題は死んだ勇者(仮)が全くダンジョン災害を減らせなかったことじゃ」
我とヘルガの予想では腐っても勇者なわけじゃから全滅するとしても多少はモンスターの数が減らされると考えていたんじゃがな。
いやー減らなかったのう。
勇者(仮)達が死んで増えたDPを差し引いて増えたDPの量からして換算してゴブリン一匹分くらいか?
雑魚じゃのう!
「あんな雑魚だなんて聞いてませんよ!」
ヘルガの奴が地団駄を踏んでおる。
いや、我も想像できんくらいに弱かったからのう。
ゴブリン一匹しか討伐できない勇者パーティ。うん、雑魚じゃのう。
「まあ、ヘルガよ。起きてしまったことは仕方あるまい」
勇者は死んだ。これが結果じゃ。
問題はこれからじゃ。
「問題はあの勢い付いたモンスターの大群が進んでおる進路上の村とか街じゃ」
「消えますね。地図から」
そうじゃよなー。
まともな防御方法がないと消えるよなー
「おぬしのせいでな!」
「ぐふぅ!」
我が指摘してやるとヘルガの奴が唸りよった。
まあ、どう考えても責任はヘルガにあるからのう。
「でもマスターも一蓮托生ですよ! 街が何個も襲われたら絶対討伐軍とか作られますし!」
「そんなもんゴブリン共に相手を……あ」
言葉の途中で思い出す。
そうじゃった!
ダンジョン内のゴブリンもほとんど外にいってしまったんじゃった!
むう、そうなると討伐軍とか来られると面倒なことこの上ないのじゃ。
ダンジョンには今まともに防御するだけのモンスターがいないわけじゃし。
防衛用にモンスターを喚び出そうにもDPはこの間、DPがそれなりに溜まった記念とか言って高級お酒と高級焼肉パーティで調子に乗ってヘルガと一緒に使って楽しんでしまったから心許ないしのう。
「じゃが、我がダンジョンにいるから防衛は大丈夫じゃがな!」
「また借金が増えますよ?」
ジト目でヘルガの奴が我を見てきよるな。
ふふん、じゃが我も馬鹿ではない。我が暴れたらダンジョンが壊れてしまう事も織り込み済みじゃ。
そのために我が控える部屋だけはDPを使って壊れにくい部屋を作ったんじゃからな!
「DPを使って壊れにくい部屋を作ったから大丈夫じゃ!」
「また無駄遣いしましたね⁉︎」
「修繕費よりマシじゃ! あと我だって暴れたい!」
「なら今からゴブリン相手に暴れてくださいよ!」
「あいつらは臭いから嫌なんじゃ! それにここは責任をとってヘルガが行くべきじゃろうが!」
「うぅぅぅぅ!」
今のは我は正論を言っとるから正義じゃな!
「ほれ、さっさとペットのタマと行ってこんか! 暴れたかったんじゃろ? あ、顔はバレないようにするんじゃぞ?」
「うぅぅぅぅ! マスターの裏切り者ぉぉぉ!」
ヘルガは涙を流しながら顔隠し用の仮面を片手に我の部屋の入り口から飛び出していった。
そんな主人の後ろを慌てたように鎧クマであるタマが忠犬のように追いかけて行ったのじゃった。
クマなのに。