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2.使い魔さんの目は死んでいる

本日2話目

 

 我はダンジョンマスターである。名前は当然ある!

 オリビア・ロロッソという。

 たまにロの数を間違えてしまうが誇り高き名前である。


「昨日、『なぁ、我の名前ってロロッソだったか? それともロロロッソだったかのう?』って聞いてきたじゃないですか」


 横で細かいことをいいながらお菓子を食っているのは我の使い魔ヘルガである。二つにまとめた輝く青色の髪に丸眼鏡を掛け上下共に異世界から取り寄せたというじゃーじとかいうのを着込んでいる。ドラゴンの我から見ても色気もへったくれもない服装である。


『知ってるか? ヘルガ。小言を言うと小皺が増えると知り合いのエルフが言っていたぞ』

「小皺より休みがほしいんですよマスター」


 どんよりとした、死んだ魚の目のような眼を我に向けてくるわけだが……

 おかしいのう。拾った当初はこんな目ではなかったんじゃが。


『さっきも休んでいたじゃないか。そこの床で』


 こいつはさっき床で突っ伏すようにして眠っていたからな。なぜか額から血を流していたんだが。


「あれは寝ていたんじゃありません! 歩いていたら意識が遠くなって倒れたんです!」

『そこまで必死になっって仕事をする必要はなかろう』


 なにせこのダンジョンには我がいるのだからな!

 並の人間ならば我が攻撃すれば一瞬で死体へと変わるわけじゃし。


「ええ、私も普通のダンジョン経営ならこんなに必死に働こうなんて思わないんですけどね! 普通なら!」

『なんだ、まるで我のダンジョンが普通ではないような言い方じゃな』


 我のダンジョンは正に王道中の王道のダンジョンだというのに。


「普通のダンジョンはモンスターがゼロなんてことはないんですよ!」


 いやだってあいつらいても邪魔だしのぅ。

 軽く小突いただけで吹っ飛ぶし、踏みつけたら床にシミができるしで綺麗好きである我からしたらあんまりいいモンスターではないからのう。


「さらに言うなら!」

『まだあるのか……』


 ヘルガの奴の小言は長い。

 真面目に聞いていたら眠たくなってしまうくらいに長いのだ。


「なんでこのダンジョンは部屋が三つしかなくて他は全部廊下なんですか!」


 怒りをあらわにするようにヘルガが拳を作りそれをテーブルへと勢いよく振り下ろす。見た目はなんてことはない少女の腕であったが叩きつけられたテーブルはというとまっぷたつである。

 この少女は見た目以上に筋力が有り余ってる。というか素手で我の鱗を剥がす位には強い。

 だがわかってない! ヘルガよ、まったくわかってないぞぉぉぉぉぉぉぉぉ


『ヘルガよ、貴様にはダンジョンマスターの流儀が分かっておらぬな』

「流儀? なんですかそれは? 現金に変換可能なのですか? 食べれるのですか?」


 この娘、凄まじくドライである。

 というか目が怖い。ふざけたことを言ったら殴られるかもしれんな。


『いいか? ダンジョンマスターとは侵入者を迎え撃つものじゃろう?』

「で?」

『つまり戦いに適したダンジョンを作らないといけないわけだ』

「で?」

『ならばどうせ壊れるような物を作るより我が戦いやすいようにした方がよかろう?』

「……」


 ふふふ、この我の完璧な理論を論破できんようだな。

 そもそもダンジョンなどは我一人で充分なのじゃ。

 そう! 我こそが唯一無二の最強たる存在なのだからな!


「……」

『ん、ヘルガ? 何をしているんじゃ?』


 我の言葉を無視してヘルガの奴は無言でなにやら大き目の鞄へと荷物を詰め込んでいっている。


『おーいヘルガ? ヘルガさんやーい』

「……」


 どれだけ声を掛けようとガン無視である。ここまでくると聞こえてないのでは? と考えてしまうがヘルガは確実に聞こえている。なにせこいつはエルフが真っ青になる位の地獄耳だからな。

 やがて荷物を詰め終えたのか鞄を閉じるとそれを背負い、そこでようやくヘルガが我の方へと死んだ魚のような瞳を向けてくると深々と腰を折り頭を下げてくる。


「実家に帰らせていただきます」

『まてぇぇぇぇぇい⁉︎』


 即座にヘルガの足元に転移用の魔法陣が現れ光を放ち発動しようとするのをダンジョンマスター権限でとりあえず阻止する。

 阻止されたのが不満なのかヘルガの奴は濁った瞳を我へと向けてくる。

 まさか契約した使い魔が実家に帰ろうとするとは…… そんな話聞いたことがないぞ。


「なにをするんですか」

『我のセリフだろう! なにをしてるんじゃ!』


 いきなり魔力をかなり食う転移魔法を使うとは!

 あやうくダンジョンの中の魔力が枯渇してしまうところだったぞ!


「だって職場の境遇が改善されないならここで働く意味がないじゃないですか! マスターは脳筋だし! 考えなしだし! 私の出した案は無自覚に潰すし! バカだし! ドラゴンだし! ダンジョン壊すし! バカだし!」

「お、おぅ」


 なんか踏んじゃいけない地雷を踏み抜いた感が半端ないな。泣きながら言ってきてるし。だかその手にいつの間にかどこからか取り出したらしい黄金の剣を持って無茶苦茶に振り回すのは頂けない。ヘルガの拳くらいなら鱗が割れるくらいで済むんだがあの剣はシャレにならない。下手すれば身まで斬れる。いや、鱗が斬られた⁉︎


『わ、わかった話し合おう。幸いなことに我たちは言葉が通じる。話し合えば妥協点が見つかるはずじゃ!』

「妥協点〜?」


 濁りながらもその瞳の圧力にちょっとばかしビビってしまいちびっしまったのは内緒だ!

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