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19.ドラゴンさんはビビる


「マスター、勇者らしき連中が姿を現しました」

「え、もう来たの?」


 ヘルガが勇者への襲撃準備を終えて数日。漫画を読みながらお菓子を食べてだらけていたら我のダンジョン領域内に反応があったらしい。

 我もダンジョンマスターじゃから領域内に入ったのは感知することはできるんじゃが、我のダンジョンは山全体が領域じゃから、ただの生き物が外から入ってくるだけでも頭に通知音がなるんじゃよ。

 これ、どうでもいいのでも音が鳴るから頭が痛くなるんじゃ。だから我の方は通知はオフにしておる。

 ヘルガはちゃんと判断しているようじゃが我には無理。つまりは丸投げじゃな!


「で、以前言ってた通りにするんじゃろ?」

「はい、DPアイテムで人為的なダンジョン災害(ハザード)を引き起こして勇者に嫌がらせを行います」


 なんかヘルガの奴、楽しそうじゃなぁ。武装も本気じゃし。

 現在のヘルガは背中に竜殺しの黄金剣を背負い、黒いジャージ姿に胸の部分には銀色の胸当て、そして同じような色合いの小手を付けておる。

 あの胸当ても小手も全て失われた技術(ろすとてくのろじー)とやらで作られているらしく見た目以上に頑丈なんじゃ。

 我が本気で引っ掻いても傷がちょっと付くくらいじゃったしな。しかも次の日には自動的に修復されてたし。

 そんな装備に身を包んだヘルガが笑っとる。怖!


「あーほどほどにするんじゃぞ? 間違っても街にモンスターを仕向けるように動かすんじゃないぞ?」

「いや、マスターじゃあるまいしそんなことしません」


 心外と言わんばかりの表情を我に向けてきとるがな、ヘルガの奴もしっかりしとるように見えて我と似たり寄ったりのポカをするからのう。

 最悪、溢れたモンスターが近くの村や街を襲うのはまだいいとしてじゃ、隣のダンジョンであるあね様、フィンブルスの管理する街に何かしらの迷惑をかけたら我がロクな目に合わんからな。


「では、モンスターを外に出します」

「うむ、好きにしてくれ」

「では、『引きこもり、外に出る』発動!」


 ヘルガの奴が嬉々として取り出したアイテム、『引きこもり、外に出る』と言われる物、本のような物を使用する。

 ヘルガの声と共に彼女が手にしていた本が青白い炎を上げて燃えた。

 どんな効果、いやどうやってダンジョン内にいるモンスター達を外に出すのか興味があった我も漫画を読む手を止めてヘルガと共にダンジョン内が映るモニターを眺めていた。

 壁に掛けかけられているモニターに映っている場所は第二階層。つまりはスケルトンの溜まり場じゃな。

 第二階層のスケルトンやゾンビといったアンデッドも順調に増えておるようじゃ。

 なにせ死んだゴブリンや拉致されて死んだりした生き物がダンジョンに吸収される事なく第二階層に自動的に落とされスケルトンやアンデッドへと変異する。

 全く無駄のない作りじゃよな。

 そんなモニターに映っている第二階層を目的もなくカタカタと音を立てながら歩いていたであろうスケルトン達が唐突に音を上げる事なくぴたりと止まる。さらに周りでうめき声を上げていたゾンビの声も止まる。

 第二階層にいたアンデッド全てが動きを止めとるのか?


 全く音が鳴らなくなった第二階層だったわけじゃが、次に現れた物によって一気に状況が変わった。

 その現れた物を見た瞬間、我は不覚にも恐怖を覚えた。いや、だって体がめっちゃ震えるんじゃもん!


「あれめっちゃ怖いんじゃが⁉︎」

「わ、私も怖いですマスター!」


 思わず隣にいたヘルガと抱き合う。

 いや、ヘルガも震えとるし。

 モニターに映るのは見た感じは着物とか言う服を着たただの人間、しかもかなり高齢の御老体じゃ。

 体だけを見れば我がブレスを吹き付ければ軽々と吹き飛ぶじゃろう。

 問題なのは御老体の手にある剣みたいな武器じゃ。あれを直視するだけで体が勝手に震えるんじゃ。


「ひきこもりは……」


 御老体が手にした剣をゆっくりと振り上げる。


「お前らかぁぁぁぁぁぁぁ!」


 全く見えない速度で剣が振り下ろされたて爆音が響く。ついでに雷まで周りに落ちてる。地下なのに! 地下なのに!

 あとモニター越しだけど怖い! ちょっとちびった。


「ひきこもりは外に出んかぁぁぁぁ!」


 再び剣が見えない速度で振るわれて第二階層に雷鳴が轟いた。

 その雷鳴というか御老体から発せられる圧に屈したのかスケルトンとゾンビが今まで見たことがないくらいの勢いで第一階層へと続く階段へと駆けて出しいた。

 骨が取れたり腕が取れたりしているけどそんな事は全く関係ないと言わんばかりの爆走じゃ。


「もっとキビキビ動かんかぁぁぁぁぁ!」


 御老体が走っているスケルトンやゾンビの後ろを追いかけ、怒声を上げながら剣を振るい更に落雷を発生さていく。

 それはスケルトン達が第一階層に入ってからも続き、第一階層を根城にしているゴブリンを巻き込んでも終わらない。

 結果、御老体いや、『引きこもり、外にでる』によって一時的に顕現したモンスター雷親父によってダンジョン内のほとんどのモンスターが外へと引っ張り出され、ヘルガの言う人為的ダンジョン災害(ハザード)が発生したのじゃった。

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[一言] 凄いモンスターが出ました。
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