18.ドラゴンさんは丸投げする
「それでマスター報告ですが」
「なんじゃ、我はもう何もしてらんぞ。そんなに我を虐めたいのかこのいじめっ子め!」
すでに行きたくもない人間の街に行って行列に並ぶという罰ゲームが確定しとるというのにまだ我を虐めたいというのか!
「人聞きの悪い事を言わないでください!」
どうやら我を虐めるわけではないらしい。いや、そう言いながらお説教をする気じゃな!
あれか! ちょっと前にダンジョンの壁の一部を蹴り壊してしまった事か!
あれはタマと戯れていた時にたまたま発生してしまった事故のようなものなんじゃが……
それにタマには口止めをしておいたはずじゃ。
「裏切ったなタマ!」
「何を考えてるのかわかりませんけど多分違います」
なに? 違うのか。
じゃが、部屋の隅にいたタマは肩をビクッと震わせておったんじゃが告げ口しとらんじゃろな? あと要確認じゃ。
「報告というのは近くを通る勇者たちの事です」
「あー、そういえばそんなのあったのぅ」
異世界のまんがとやらを読むのに夢中で忘れておった。
最近はダンジョンも第一層のゴブリン王国のお陰で定期的なDPが入ってくるようになってきたし、ゆとりみたいなのが出ててきたせいかさっぱりと忘れておった。
「そんな事だろうと思いました。はぁ……」
なんじゃ、その人を馬鹿にしたような眼は…… あと露骨に目の前でため息をつくでないわ。
「いえ、マスターの頭は鳥並みなのですぐ忘れるのは想定済みです」
「馬鹿にしすぎじゃろ!」
「昨日、私が怒った事覚えてます?」
はて、昨日怒られたのは……
「…… 出した物は片付ける?」
「それは一昨日に怒った内容です! 昨日怒ったのはそこら中に服を脱ぎ散らかさないです!」
怒られたんじゃが!
今日は片付けてるのに怒られたんじゃが⁉︎
あと服も今日は洗濯カゴにいれたんじゃが⁉︎
「で? 報告する内容でもあるの?」
ヘルガの奴が暴れたそうじゃったから飽和状態になっておるゴブリン供を追い立て、ダンジョン災害を意図的に引き起こし、それと同時に変装して姿がバレないようにしたヘルガが突っ込むという話じゃっだはずじゃが。
「はい、まずばダンジョンのDPがある程度貯まりましたので階層を一つ追加しておきました」
「うーむ、まあ、防衛力が上がるのはいい事じゃな!」
そもそもダンジョンの階層がフロア一、ボス部屋のみというダンジョンなんか我のダンジョン以外見た事ないしのう。
というかDPがなかったから作れんかっただけじゃが。
「で、なんのモンスターを置いたんじゃ?」
「スケルトンです」
スケルトン。
骨のモンスター。
弱い。
「なんでそんな雑魚モンスターなんじゃ! もっとカッコいいのがいいのじゃ!」
思わず叫んでしまったわ!
骨のモンスターじゃぞ? 殴られただけで砕けるような雑魚ではないか!
我みたいにかっこいい、かつ、子供が憧れるようなドラゴンとかがおすすめじゃな。
「マスター、DPに余裕ができるようになったとはいえ、ドラゴンなどは無理です。あと今のマスターは人型なのでかっこいいというより可愛い系です」
「むぅ、ドラゴンは無理なのか。でもスケルトンはないじゃろ」
なにせ殴れば防御力がないから砕けるし、魔法に対する防御も皆無なわけじゃしな。下手したらゴブリンより弱いぞ?
「スケルトンは別に渦を購入したわけではありません。死体をアンデッド化する魔導具、死者の十字架を使ってるので死体があるが限りタダです。つまりはエコです」
「タダか」
タダっていい響きじゃよね。
「第一階層で出たゴブリンや人間の死体を第二階層へと落として死者の十字架でアンデッドへと変化させる。死体を調達しなくても上の階層から勝手に送られてくるので自然に手駒が増えるわけです。アンデッドへの変化ですから今はスケルトンだけですがいずれはそれ以外も発生するでしょう」
「いいのう!」
タダで増えるというのはいい事じゃ!
そしてスケルトン以外にも増えるというのもいいのう! ゾンビとか臭いのじゃなければいいんじゃが……
「そしてこのゴブリンと大量変化したスケルトンを使って人為的ダンジョン災害を発生させて勇者達を襲います」
「おお!」
ゴブリンだけなら嫌がらせくらいに感じるがスケルトンを混ぜて傘増ししたら軍勢に見えるじゃろな。
「何より使い減らしても問題ないゴブリンとスケルトンです。私も背後から魔法を撃ちまくれます」
こやつ、背後から巻き込んで撃つ気じゃな。
まあ、タダみたいなスケルトンと増えすぎたゴブリンなわけじゃし何も問題はないじゃろうな。
むしろゴブリンが減るのは賛成じゃ。
ゴブリンが一匹死ねばその分ダンジョンも清潔になる。さらにはDPも入る。誰も損をするものもいないのう! 死んだゴブリン以外。
「それで? どうやってゴブリン供を外に連れ出すんじゃ?」
あやつらはバカじゃが何かが危険かはなんとなくわかっておるからな。
ダンジョンの外に行くのも補給や人を拉致したりする時だけみたいじゃし。
「そこはDPでアイテムを購入して使います」
「モンスターを外に燻り出すアイテムでもあるのか?」
DPで手に入るアイテムの数は膨大じゃ。
我も全部把握してるわけではないし、把握しようする気すら起こらん。
「はい、DPで交換できるアイテムの中に『ひきこもり、外に出る』というアイテムがあります。これで外に強制的に出させます」
「なんて恐ろしいアイテムじゃ」
そんなの使われて無理矢理外出させられたらたまったもんじゃない。
「まあ、我が出るわけじゃないからよいがな!」
面倒じゃから全部ヘルガに任せておけば問題ないじゃろ。
ヘルガが暴れている間は我はまんがを読んで楽しめそうじゃしな。




