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13.ドラゴンさんは慈悲を見せない

 

「し、死ぬ!呼吸できなくて死にますマスター!」

「案ずるでない。喋れとるし、ブレスじゃないから空気は無くなっとらん」


 口から残り火を拭きながら、別に呼吸が出来なくなったわけでもないのに喉を押さえて転がりまわるヘルガを見ながら我は告げる。

 うむ、さすがは我がビーム。魔力を一点に集中させておるから威力が半端ないんじゃ。

 目の前に群がっていたゴブリン共は纏めて消しとばしたみたいじゃな。なんか視界の端にヘルガの鎧クマが半壊状態で倒れておるがさしたる問題ではあるまい。

 まあ、扉や壁が一部融解しとるがそこはDPを使って直さんと不味いじゃろな。

 そのままにしておったらまたゴブリンがワラワラと現れそうじゃしな。


「ほれ、ヘルガ。勇者族がそんなことで死ぬわけなかろう。さっさと起きるのじゃ。仮に死んでも生き返るじゃろ?」

「勇者族だって死ぬんですよ⁉︎ 生き返りますけど死ぬ時はめちゃくちゃ痛いんですからね!」

「死んどらんじゃろが」


 ヘルガはまあ、我の使い魔の契約を結んでおるんじゃが種族が勇者族というとんでもない奴じゃからな。

 勇者族。

 この世界における世界の守り手じゃとか魔の付くものに対しての特攻兵器、あるいはチーターなどと呼ばれておる存在じゃ。

 モンスターなどに特攻ダメージが入るのは当然で、魔王とか魔竜とか自身よりも強大な敵に対しても致命傷を与ええる一撃、『勇者の一撃』なんて物も持っておる。それだけでもモンスター涙目であるわな。

 更に特攻だけでも充分にずるい存在であるのに勇者族がチーターと呼ばれる由縁。それは勇者族全員が必ず持つという共有スキルのせいじゃったりするんじゃがな。

 ちなみに勇者族と勇者は別物じゃったりする。勇者は称号じゃからな。


「そんなことよりヘルガ、早く扉を直しとくれ。このダンジョンのDPはお前が管理しとるんじゃから我では直せんぞ。またゴブリンに襲われたいのなら話は別じゃが」


 今はまだ我のビームのせいで壁や床が融解して熱過ぎるからかゴブリン共が入ってくる気配はない。

 じゃが熱いのが冷めたらあの知能の低い連中は扉がないこの部屋に絶対に入ってくるじゃろうからな。

 それが理解できたというかまたゴブリンに群がられる事を想像したのかヘルガは残像が残る速度で頷くとDPを使い扉と壁を修復する。


 扉が修復され、一息ついた所で我は部屋の端の方に設置されてある巨大なベッドに寝転がる。

 うむ、ドラゴンの体だったら窮屈であったが人の体なら広々としとるな。力は制限されるが人の体も意外と悪くないかもしれん。

「はぁ、なんか疲れました」


 我の横の未だスペースが余っていたからかヘルガもベッドへと倒れ込んだ。

 そのまま夢の世界に旅立とうとしているのかスースーと寝息が聞こえ始める。

 そんなヘルガに我はやれやれと言わんばかりに近くにあった枕を手に取り、


「自分のしでかした始末をせずに寝るでないわ!」


 掴んだ枕でヘルガの頭を叩いたのだった。


「慈悲! 慈悲がありませんマスター!」

「いいや、今回は絶対に我が正しい。お主が買った(スポット)でこうなったんじゃからなんとかするのが当たり前じゃろが!」


 今回は絶対に我が正しい。

 ゴブリンの(スポット)を買ったのもヘルガじゃし、扉が壊れたのも運がないヘルガがそう、運がないヘルガが! 喚び出したのも命令を聞かない鎧クマじゃし!


「なんか失礼な事を考えましたね?」

「気のせいじゃ。とりあえず寝るのは当面の問題を片付けてからじゃ」


 勘が鋭いのう。

 その後、死にかけている鎧クマを発見したヘルガが慌てて回復魔法で鎧クマを癒し、何故か従順になったらしい鎧クマに適度にダンジョン内のゴブリンを間引くように指示を出し、この騒動は収まったのであった。

 クマ、ちょろいのう。

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― 新着の感想 ―
[一言] クマ、ちょろいですね。
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