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1.ドラゴンさんはダンジョンマスター


「ん?」


 我、オリビア・ロロッソは部屋のソファーでせんべいを食べていた手を止めて天井を見上げる。

 何人かの人間らしきやつらが我のダンジョンに侵入してきたようじゃな。

 一応はダンジョンマスターであるため侵入はこう、ビビっと感覚でわかるのだ。どんなとは聞かれてもビビっとしか答えようがないわけじゃし。

 ちょっとばかし最近は食っちゃ寝食っちゃ寝を繰り返してきたからな。少しばかり体操をしておくべきじゃな。

 そう決めた我は尻尾を揺らしながら、人型から本来の姿であるドラゴンの姿へと戻り、機嫌よく侵入者を迎撃すべくダンジョンの入り口へとダンジョンを揺らしながら歩いて向かうのであった。


 二時間後。


 まさか自分のダンジョンで迷うとは思っていなかったぞ!

 いや! 迷ってはいない! ただトラップにやたらと引っかかったのだ。解除の仕方はよく覚えていなかったからとりあえず全部ぶっ壊してやったがそんな感じに多分入り口だと思われる方向に向かって歩いているとその途中で侵入者らしきやつらと鉢合わせ。

 しばらくは我をポカンと見上げていた侵入者であったがしばらくすると慌てたように武器を取り出し構えてきよった。


「ど、ドラゴンだと⁉︎」

「しかもでかい! 黒龍種がなんでこんなただの洞窟に⁉︎」


 ふふふ、我のドラゴンとしての格の高さに気づいたようだな。

 そう! 我こそは地上最強の生物! ドラゴンのオリビア様じゃ!

 バッと大げさに翼を広げてやるとそれだけで面白いくらいに顔色が悪くなりよる。

 そして我も微妙に顔色が悪くなった。我が広げた翼がダンジョンの壁へとぶつかり通路の一部をかなりぶっ壊してしまったからだ。しかも地味に痛い。

 これは後で直せるレベルかなのかが心配じゃ。

 しかし、ここで壁の方を気にして振り返るのは格好悪い気がするのう。


「くっ戦って勝つしかない!」


 決死の覚悟を決めて武器を握りしめておるようだな。

 勝てぬと思ってもそれでも挑んでくるその意気やよし!


「ドラゴンブレスゥゥゥ!」


 そんな人間たちに敬意を払いながらも灼熱の炎が口から吐き出され地面を舐めるようにして焦がしていく。

 そこには何人かの冒険者が盾などを持ち構え耐え切ろうと考えておったようじゃがそんなものは関係ないと言わんばかりの威力でついでに燃やしておく。

 あとに残るのは我のブレスで破壊された通路とそこに僅かに残る冒険者たちの影だけである。


「ふっふっふ、我最強!」


 まぁ、最強の種族であるドラゴンであるのだから当然と言えば当然なのじゃがな!

 今我がいる場所は我お手製のダンジョン! 『ドラゴンさんのお家』である。

 人間の住む街のある場所から三日ほど歩いたところにこの洞窟型のダンジョンを構えているわけだ。


「ふん! たわいのない奴らよ」


 せっかく久しぶりに現れた侵入者であったからに我が直々に入り口へと出向いてやったというのにまさか威力を抑えたというのに一撃で消え去るとは…… 最近の人間の弱さは目に余る気がするな。


「このバカマスターが!」


 機嫌よく鼻歌を歌いながらダンジョンマスタールームへと戻ろうとすると甲高い怒声とともに我の頭にとてつもない衝撃が走り、我は体を支えきれずに轟音を上げながら膝をつきながらも頭を撫り、我を殴りつけたであろう存在を睨みつけた。


「なにをするんじゃヘルガ!」


 振り返るとそこに立っていたのは見ている青い髪の少女が怒りの形相を浮かべたっていた。


「なにをする? ではありません! なにダンジョンぶっ壊してるんですか! ダンジョンを元に戻すのもタダではないんですよ!」


 二つにくくった青色の髪を振り回しながらヘルガが喚き散らす。


「いいですか? 私たちには遊びに使うお金は一ゴルドすら存在しないのです! それを自分が潰したダンジョンの修理費に当てるなんてバカですか? バカのすることなんですか? ドラゴンの頭には脳みそが入ってないんですか!」

「バカとはなんだ! ダンジョンへの侵入者を蹴散らすのはダンジョンマスターである我の重要な仕事じゃろう!!」


 そのためにわざわざダンジョン内を迷いながら出向いたたというのになんなんじゃその物言いは!

 するとヘルガの白い肌にくっきりとわかるくらいに青筋が浮かび瞬きをする間に我の視界から姿が消える。


「オォォォォォ⁉︎」


 そして再びの衝撃! しかも先ほどよりも明らかに強い一撃を頭に受けた我は頭を下げるように、いや頭を床へとメリコますようにされる。ドラゴン状態の我を!


「どこの! 世界に! 自分が前線で戦う! ダンジョン! マスターが! いるのですか!」


 声を荒げながら我の頭の上に乗ったヘルガはどこからか取り出した黄金に輝く剣で我の頭をひたすらに斬るのではなく、剣の腹で叩き続けてきよる!


「ここにおるじゃろうが!」

「このおばかマスター! なんのためになけなしのお金を使ってゴブリンやオーガといったモンスターを召喚したと思ってるんですか!」


 ああ、いたなぁ。

 ウロウロとダンジョン内を動き回ってた緑の小人ゴブリンだったわけか。


「なにぃ⁉︎ あれは我のおやつではなかったのか⁉︎」

「食べたんですか⁉︎」

「ああ! 小腹が減ったから美味しくいただいたぞ」


 ドラゴンの手で親指を立てながら答えてやる。いつもなんだかんだと我に小言を言う割にはおやつを出すとはツンデレだなぁと考えて美味しくいただいたわけなんだが……

 ゴブリンは歯ごたえはイマイチだったがオーガは非常に美味であったわ!


「あれは! ダンジョン防衛用の! モンスターなんです!」


 今度は涙目になりながらまた剣を振り下ろしてきやがる! そこには部下として主人を敬うとかそんな気持ちは一切存在しない! しかし、微妙に鱗が欠けるくらいの力はあるからいい加減にやめてほしいんじゃが。


「もうやだぁ、こんなバカなダンジョンマスターと契約した過去の自分を殴ってでも止めたい……」 


 我の頭の上から飛び降りたヘルガが床へと膝を抱えて座り込みめそめそと泣き始めてしまった。

 突然泣き出したからオロオロと慌ててしまった我はとりあえずアイテムボックスから先ほどまで自室で食べていたせんべいを取り出す泣いているヘルガの前へと持っていく。


「せ、せんべい食べるか?」

「…… たべまふぅ」


 俺からせんべいの入った袋を奪いとると袋を傾け中に入っていたせんべい全てを口の中に入れると音を立てながら食べ始めた。


 ……こいつの食費も確か結構なダンジョンの負担だった気がするじゃがのう。


夕方に2話目投稿予定です

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