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その悪役令嬢はなぜ死んだのか  作者: キシバマユ
最終章 過去・現在・未来

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65 勲章と爵位

 アーサーさんと食事をしてから半年。

 来る日も来る日も論文作成に潰やし、たまにハリス先生の診療所を手伝った。

 動物実験をしていないという問題点は、ハリス先生の伝手でハールズデン医大の研究室の一角を貸してもらい、そこで改めて行うことができた。

 これで当初の問題はクリアされた。

 アーサーさんとはあの日以来会えることはなかった。




 そしてついに論文が完成。

 医学雑誌で発表されると新聞で連日報道され、私のところにも多くの記者が毎日訪れるようになった。

 日常は一変し、日用品の買い出しもままならなくなり、ハリス先生の診療所も手伝えなくなった。

 困った私はハリス先生に相談した。


 「どうしたものでしょうか?」

 「ナオを追いかけてこの家の外にも記者が張りついていますね。しかしこの状況は想定済みです」


 さすが先生! じゃあ早く助けてくれませんか?


 「記者会見をします。場所も押さえました。ハールズデン医大です」


 医大ではたまに記者会見をするから丁度いい場所があるのだ、と先生は言う。

 そこでは先生の教え子のような人が医学部長をしていて、以前研究室を借りられたのもその人のおかげだった。


 「記者会見をすれば少しはこの騒ぎも収まりますよね……。それでいつなんですか?」

 「明日です」

 「…………あした?」

 「明日です。準備しておいてください」

 「ちょっ、え? もっと早く言っといてくれません!? 何喋ればっ、カンペ! カンペ作らないと!」

 「記者が張ってるからってあなたがここに来ないからですよ」

 「私のせい!?」



 記者会見も無事に終わり、1週間も経てば周辺から記者の姿も消えていた。

 まぁそうだろう。

 会見では研究成果の発表の他にも、私が過去の記憶がないことも公表した。

 今はその私も知らない過去を掘り当てようと記者達は躍起になっていることだろう。

 それに私に張りついたところで、ハリス先生の診療所と自宅の往復しかしないのだから面白いネタが取れるはずもない。

 正直、どんな過去が明るみになるのか。私が以前見た夢は実際にあったことなのか。だとしたら晒された後に世間がどう反応するのか。

 どうなってしまうのか怖い。

 けれども、後悔はしていない。

 これでこれから多くのがん患者が救われるのだから。

 今は全てのがんに適応した魔法ではないが、別のもっと優秀な研究者が私の魔法を発展させ、未来には全てのがんが治療可能になると信じている。


 (この国にいられなくなったらまた大森林に戻ればいい。いや、あそこでも後ろ暗い過去はついてまわる。けど治療魔法師だから居場所は作れる。……グエンさんみたいに)


 私の過去が暴かれる日はそう遠くないだろう予感がしている。

 だだその時まで私は診療所で治療をするだけだ。


 ◇


 記者会見から3ヶ月後。またしても私は世間を騒がせることになった。


 「ナオ先生! おめでとうございます! 新聞見ましたよ!!」


 と、患者さんに言われたのは今日で何度目だろう。


 「ありがとうございます。それで今日はどうしたんですか?」

 「いやぁ、膝が痛くってね。って先生! 勲章貰うんですよね!? 爵位も! 爵位ですよ!? 先生お貴族様になるんじゃないですか!」

 「勲章も爵位もハリス先生はすでにお持ちですよ。行使:検査(スキャン)。……うーん、この膝の痛みは痛めたとかではなく軟骨がすり減っていることによる慢性的なものですね。紙に日常の注意と運動療法の仕方を書いておくので実践してみてください」


 紙に書きながら患者さんには簡単に説明し、運動の方は少し一緒にやってみる。


 「なんだか淡々としてるなぁ。嬉しくないんですか?」

 「光栄なことだと思ってますよ。ではお大事にしてください」


 午前診最後の患者さんを見送ってふぅと一息。

 今日は診察した患者さんほとんど全員にお祝いの言葉をもらった。

 新聞はすごい。

 今日の朝刊の今年の勲章受章者の記事に私の名前と顔が載っただけでこの騒ぎだ。


 (ちょっと疲れたわね……。これ受章後はどうなっちゃうんだろう……?)


 私は受章を今日知ったわけではなく、すでに1カ月ほど前に封書で知らされている。

 綺麗な飾りの入った見るからに格式高い封筒に、これまた物々しい封蝋。

 開けなくても察した。

 王家からの封書だった。

 中には受章が正式に決まったこと、それから授章式とパーティがあることが記されていた。

 そう、式とパーティがあるのだ。


 (……気が重い……)


 ドレス都合はなんとかつけた。

 招待状を持って真っ先にハリス先生に助けを求めに行った。

 しかし「紳士服の仕立て屋なら分かりますが、女性のものは知りませんよ」と言われてしまい途方に暮れていたところ、受付のテイラーさんが患者さんに話を通してくれて、その患者さんが贔屓にしている仕立て屋さんに頼むことができた。

 でも問題は他にもある。


 (この世界のマナーなんて全く知らないのよね)


 このまま行ってしまったらきっと恥をかくに違いない。


 (これもハリス先生に……って自分が出来てることでも人に教えるのは難しいよね。こういうことはプロに教わるのが一番良さそうだけど……。この世界に鬼のマナー講師の方いらっしゃいますかー!?)


 鬼でも悪魔でもいい。人前に出られるようにしてください!


ぜひ評価の⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎&ブクマよろしくお願いします!!

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