表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

夏のホラー2023『帰り道』

追い付かれる!

作者: 家紋 武範

 俺は今、峠の道を猛スピードのオートバイで駆け下りている。

 なぜなら、血まみれの看護婦に追いかけられているからだ。


 彼女の身体の血色はなく衣服も肌も真っ白だ。だからこそ、血がついた衣服と唇の赤さが妙に際立つ。


 なぜ現在の状況になったか覚えていない。家に帰るためのこの道に気付いたら看護婦は俺の横に並走していたのだ。

 手には死神が持つような大鎌を持って、俺に狙いを付けて振り上げている。


 オートバイと並走できるなんて、確実にこの世のものではない。それに俺を殺そうとしているのは明白だ。


 しかし、アクセルを全開にしコーナーをうまく利用することによって、差を広げることに成功している。


 彼女がどこまで追って来るかは知らないが、行けるところまで行くしか生き延びる術はない。


 中腹まで下りてくると、彼女の気配を感じなくなったので振り返る。するとそこにはすでに彼女の姿はなかった。


 よかった──。どうやら振り切ったようだ。


 俺はスピードを落として大きなカーブをゆっくりと曲がる。


 しかし、そこにはヤツがいた。カーブを曲がったしばらく先に大鎌を持って待っているではないか!


 スピードを落としていて良かった。俺はすぐに上り坂へと向きを変える。看護婦は、また俺に向かって駆け出してきたが俺のほうが早かった。


 先ほど来た道を引き返す。しかし、どうして彼女は先回りできたのか? 瞬間移動でも出来るなら、こんなに走り回っても無意味だ。


 その時、ガサガサと山のほうから音がした。


 あっ!


 つまり看護婦は山を駆けて直線にショートカットしているんだ。

 このままではまずい。追い付かれてしまう。


 その予感は的中してしまった。俺の首に衝撃が走り、俺が股がったオートバイはガードレールに衝突するのが見えた。

 俺の首は回転して夜空を見上げていた。




 すると、空の上に『continue?』の文字が浮かんでいるのが見えた。




 そうか──。俺はゲームのキャラクターで、訳の分からない看護婦はクリーチャーなのだ。俺は何度も何度も彼女に殺されては同じ帰り道を……。





 俺は今、峠の道を猛スピードのオートバイで駆け下りている。

 なぜなら、血まみれの看護婦に追いかけられているからだ──。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 不気味なのに、ちょっと笑える物語ですね。 エンドレスのラストも魅力的です。 [気になる点] 何もありません。 [一言] 都市伝説的な始まり方で、こう落とすとは思いませんでした。お見事!
[良い点] 最後に「おお!そういう事か!」と納得でした。 短い中に起承転結が綺麗に収まっていてすごいですね! 無駄のない言葉選び、勉強になります。
[良い点] 看護婦。 この文字に新鮮さを感じました。 以前は当たり前に見ていたのに……最近はとんと見かけなくなりましたね。 本編。 ゲームのなかでしたか。 都市伝説の匂いがしました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ