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カタナシ   作者: ともふみ
序章
2/2

雪の金沢

楠木(はるか)は金沢駅に降り立った。新幹線到着ホームから見えるのは、一面の銀世界である。

「うわー、めっちゃ降ってる...」

年末という時期もあり、駅のホームは帰省客で混雑している。運よくベンチの空きを見つけた遥は素早く近づいて腰を下ろした。他の乗客に比べると、遥はかなり身軽である。

実家には遥が上京する前まで使っていた部屋がそのまま残っている。着替えなども十分にあるため、遥の荷物は普段、大学に持って行くトートバッグのみである。中には予備のコンタクトや財布などの最低限の私物が入っている。

遥はバッグから携帯電話を取り出して、実家に電話をかけた。

明後日の総会のために、今日は親戚も多く実家に来ていることだろう。案の定、1コールで電話がつながる。

「はい。楠木です」

「もしもし、遥だけど」吐く息が白くなり、見ているだけで寒気がする。

「ああ。遥、久しぶりじゃん。元気だった?」

電話に出たのは、遥の従姉妹にあたる美琴(みこと)であった。

「うん。久しぶり。そっちはどう?」

「いや、毎年のことだけど、チビも多いから戦争状態よ」

例年、年末には親戚一同が遥の実家に集まる。しかし、今年は特別であった。父の後継問題を審議するため、いつも顔を見せない親戚連中も実家に来ていることだろう。大多数が家族ごとやってくるが、その中には未就学児も多い。遥も実家にいた頃は、年少の子供の世話係に駆り出されていた(もっとも、サボって親戚と麻雀ばかりしていたのだが...)。

「ところで、アンタいつ帰るの?」

「いや、今ようやく金沢駅には着いたんよ」遥は目の前の風景を見ながら応える。風はないので吹雪にはなっていないが、雪はしんしんと降り続いている。止む気配は全くない。「そしたら、雪がやばくて。多分この雪やと駅から車での移動は無理だな。」

「それなら、どうするの?歩く?」

遥の実家は駅から徒歩で30分ほどの石川県庁の近くにある。少し頑張れば歩けない距離ではない。が、それは通常の天気の場合である。雪道ならばもっと時間はかかるだろうし、下手すると遭難する。

「いや、今日は大人しく駅前のホテルに一泊するわ。予報見たら明日は晴れみたいだから、一晩したらバスも動くと思う」

「ええー、ずるい。さっさと来てよ。こっちは全然人手が足りてないのよ」

美琴が散々不満を言うのを聞き流してから、遥は母に電話を代わるように頼んだ。しかし、母は夕飯の支度で忙殺されており、台所を離れられないと美琴が言う。仕方なく美琴に言付けを頼んだ。「だから、今日は帰れないって伝えてくれ。明日、できる限り早くそっちに戻るから」

電話を切ってから、遥は立ち上がり、改札に進んだ。連絡は済んだが、肝心の宿探しはこれからである。年末のため、ビジネス客はいないだろうが、金沢は観光客も多い。目下の最重要課題は、本日の寝床の確保である。



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