常闇に潜む小さな花
受験勉強中だった。
家中寝静まっているのに、自分のいる部屋の勉強机の明かりだけもの寂しく光っている。音を立てると暗闇が吸い込んでいくようだ。
カリカリ……。
シャープペンで大学ノートに何度も重要な単語を書き連ねていく。
かたん。
ビクッとして振り向く。誰もいない。
背中を恐怖が這い上る。
音。
木を隠すには森。
イヤホンつけて大音響で音楽を聞く。
ここで眠っちゃうのは、なし。
コーヒーやコーラを常備している。でもカフェインはちっとも効きやしない。
眠りかぶり、浅い夢を見る。
昼間の雑踏、喧騒。太陽の光。
はっとして、現実に帰る。どこまでも深い夜の闇。
本棚に「月は無慈悲な夜の女王」のタイトル。
果たして朝はやってくるのだろうか?
牡丹灯籠の怪談を思い出す。
朝を待ちわびて、一番鶏の声を聞いて戸を開けると、闇。
その絶望。常闇に潜む小さな花。やがて開花する。
いろんな怖い話が頭を悩ます。
音楽、音楽!紛らわせよ!
書いて、書いて、書いて!
夜が明けるまであと何時間あるの?
そして、これをクリアできたら、受験に勝てるの?
自分との闘い。
狂おしい闘い。
起きているだけで精神力が削がれる。
若いときにしかできないことだよ。