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絵本原作

わたしと弟

掲載日:2021/03/09

 私の名前はあけみ。

 小学5年生。

 友達もたくさんいて毎日楽しい。

 学校のお友達はみんな私に優しくしてくれて、恵まれていると思うの。


 でも、1つだけ私にも悩みがあるの。

 それは私の弟、さとるのこと。

 別にさとるが嫌いなんじゃない。

 さとるは生まれつき、障がい者なの。

 知的障がいっていう。

 今年で8歳なんだけど、知能としては3歳ぐらいかな?

 支援学級に通っている。


 だからお母さんに言われて、いつもさとるの面倒は私がよく見ている。

 小学校に連れていくのもわたし。

 別にいいんだけど、さとるの行動は長年一緒に育った私でも予想がつかないの。

 急に大声で「うんち!」とか「おしりだ!」とか叫んだりする。

 だから、小学校でもクスクス笑われたりする。

 お姉ちゃんの私はいつも変な目で見られる。


 なんでさとるは他の弟と変わっているんだろう。

 いつもそう思う。

 神様がいるなら、さとるを私と同じように普通の子供に治してほしい。

 そしたらもっと私と笑える気がするの。

 ゲームだって、マンガだって一緒に楽しめる気がする。


 ある日、学校の帰り道。

 さとるがいつものように、

「あっ、おしり!」

 と知らない女の人を見て指差して叫んでいた。

 さとるのことを知らない女の人は嫌そうな顔して、私とさとるを睨んでいた。

 苦しかった……。

 知らないから仕方ないとは思うけど、なんで私まで睨むの?


 帰ってからお母さんに怒った。

「なんでさとるが弟なの!?」

 お母さんは顔を真っ赤にして怒った。

「あけみ! なんてこというの?」

「だって、さとるのせいで知らない人に睨まれたもん!」

 気がついたら私は泣いていた。

「それぐらい、いいじゃない! さとるのこと知らないんでしょ?」

「だけど……」

「あけみはお姉ちゃんなんだからさとるを守ってあげて」

 お母さんは私をぎゅっと抱きしめてくれた。

 安心したけど、辛かった。


 晩御飯のとき、さとるがご飯中なのにうんちを漏らした。

 お母さんがうんちを片付ける。

 毎日見る光景だけど、もう私は頭がカンカンだった。

「もうこんな家イヤ!」

 私は泣きながら家を飛び出た。


 家を出て、泣きながら走り続けた。

 もう空は暗くなっていて、道路に人は少ない。

 いつも遊んでいる公園についた。

 『ひこうきこうえん』

 ブランコに乗って、遊んでいると小さい頃を思い出していた。

「よく小さなさとるをブランコで押してたっけなぁ」

 さとるのせいで家から逃げたのに、こんなときもさとるのことを考えているんだろ?


「ねーね!」

 さとるの声だ。

 公園に一人で来たみたい。

 ニコニコ笑っている。

 人の気もしらないで、この子は。

「さとる、おいで!」

「うん、ねーね」

 私は大きくなったさとるをブランコにのせてあげて、おしてあげた。


10

 それからしばらく遊んだあと、私とさとるは公園から出ようとした。

「ねーね、うんち」

 さとるは犬のうんちを見つけて、喜んでいた。

 嬉しそう、こんなのが何が楽しいのかしら。

 でも笑っているさとるは可愛い。

 その時だった。

 キーッ! と大きな音が聞こえた。


11

 トラックがさとるを轢こうとしていた。

 私は咄嗟に身体が動いて、さとるを突き飛ばした。

 そのあとは覚えてない。


12

 目が覚めると病院の中。

 何かがおかしかった。

 私の脚に感覚がなくなっていたの。

 お医者さんが私に言った。

「もうあけみちゃんは歩けないんだ」

 私はその日から車いすの生活になった。


13

 それからは学校にはお母さんが連れて行ってくれるようになった。

 車いすになれない私を押してくれるためだよ。

 さとるはいつものようにニコニコ笑いながら、一緒に歩いている。

 なにもわかってないんだろうな、さとるは……。


14

 学校につくとお友達たちがみんな私に、

「かわいそう、あけみちゃん」

 と言って集まってきた。

 最初は嬉しかった。

 心配してくれてたから。


15

 でも、帰り道に小さいな子供に、

「ねぇ、ママ。あのおねーちゃん車に乗ってるよ。僕も欲しい」

 とねだっていたの。

 人の気も知らないで。

 なによ。

 私だって好きで障がい者になったんじゃないのに!


16

「ねーね、こうえん」

 さとるが私に声をかけた。

 何も知らない顔をしてニコニコ笑っている。

 怒っていた自分がバカみたい。

「あのね、ねーねはもうさとるを押せないの」

 私がそう言うとさとるは車いすを押してくれた。

「ねーね、こうえん!」

 そう言うと全速力で『ひこうきこうえん』に連れていかれたの。

 すっごいスピードでびっくりしたわ。


17

 公園につくと、見たことないブランコがあった。

 ブランコの前には『だれでもあそべるよ』と書いてあった。

 なんだろう? あのブランコ。

 変わったかたちしているわ。

「ねーね、ブランコ!」

 さとるは私をブランコに車いすを近づける。

「ちょ、ちょっとさとる!」


18

 ブランコは車いすを収納できるボックスみたいな形をしていた。

 このまま乗れるみたい。

 私は不思議に思いながら車いすをブランコに乗った。

「ねーね、ブランコ」

「じゃあさとる、おして」

「あん!」

 さとるはニコニコ笑って私を押してくれた。

 私も自然と笑っていた。

 なんか楽しい。


19

「ねーね、ブランコ!」

「うん、ブランコ楽しいね」

「ブランコ! ブランコ!」

 小さなときは私がさとるをおしてたのに、今では私のほうがおされている。

 そっか……気がつかなかっただけで、さとるも大きくなっていたんだね。

「ごめんね、お姉ちゃんが車いすになったから、もうおせないね」

 気がつくと私は涙を流していた。

「ねーね、泣かん」

 そう言って、さとるは自分のハンカチを手渡してくれた。

「ありがとう、あんたもこんな気遣いできるようになったんだね」

「ねーね、すき」

 さとるはニコニコ笑っていた。

「お姉ちゃんもさとるが大好きだよ」


20

 私はさとると同じ障がい者になった。

 ただ違うのは、私は身体。さとるは頭。

 どこかが人よりちょっと違うだけ。

 さとるの方が障がい者の先輩。

 私の方が後輩なんだよね。

 変な目で見られようと、私は負けない。

 だってさとるがついているもの!

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― 新着の感想 ―
[良い点] あけみお姉ちゃん、家族なのが嫌で嫌でしかたなかったのに、とっさにさとるを守る行動に出た。いい事しようとか何も考えなくて、本当に無意識だったのでしょうね。 弟と支え合って、心は以前より近く…
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