181、亀山制圧
永禄五年 (1562年) 六月上旬 丹波国 今岡城 伊勢虎福丸
「これより亀山の地に兵を向ける。その後で古世城を落とす」
俺は家臣たちを見回す。重臣たちに加えて、並河一門や福井一門も顔を揃えている。国人衆を味方としたことで志気は高まっている。
「もう少しで京に辿り着く。それで一息が付けよう」
亀山一帯を制圧すれば、波多野に対して一気に有利に振る舞うことができる。丹波の王として君臨してきた波多野もその勢威は衰えるだろう。代わりに俺たち伊勢家がこの地域を治めることになる。
伊勢家の内政は活況を呈する。人も物も伊勢家に集まる。
「先鋒は堤三郎兵衛、二陣が大沢内記、三陣は河村権之助とする。本陣は俺が率いる。遊軍として並河、福井、新田を置く。香西軍も共に進軍する。力を合わせて亀山の地を取るのだ」
重臣たちが返事をする。
順調だ。何かもな。波多野孫四郎は焦っているという。国人衆を城に集めて、物々しい動きをしているのだそうだ。
波多野家は領内に年貢減免に触れを出しているという。民への懐柔策だろう。ただ急な減税は収入減になる。波多野家は財政に苦しむことになるはずだ。
この戦は勝てる。そう思う。評定を終えると、すぐに出陣だ。
永禄五年 (1562年) 六月上旬 丹波国 亀山 伊勢虎福丸
亀山の地はあっさりと手に入れることができた。大した抵抗もない。町衆など金子を持って参上する程だった。
俺の前に町衆が五人いる。いずれも中年の男たちだ。
「波多野孫四郎はそれ程ひどいか」
「はい。町衆は恐れて口を閉ざしております。年貢も安くすると言っては奪い取り、金を貸してはその倍の利を取る。泣く泣く娘を遊郭に入れた町衆も少なくありませぬ」
知らなかったな。波多野がそれ程、腐り果てているとは。
「相分かった。町衆は伊勢家が守る。波多野の兵など追い返して見せる。それでだな、伊勢家には親しい商人がいるのだ。敦賀にも数多くな。その者たちを快く迎え入れて欲しい。この地をもっと豊かにしたい」
「若様の仰せとあらば」
「皆、喜んで迎え入れまする」
町衆が笑みを浮かべながら平伏する。これで亀山の地も伊勢家の物になった。町には投資しよう。伊勢家の主要な拠点になるように大事にせねばな。




