表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

162/248

162、決戦!吉田城外の戦い

永禄五年(1562年) 一月下旬 三河(みかわ)(のくに) 牛久保(うしくぼ)(じょう)   伊勢虎福丸


「何、結城(ゆうき)七郎(しちろう)軍勢(ぐんぜい)だと?」


「はっ、千葉(ちば)那須(なす)旗印(はたじるし)も見えまする」


 忍びの大木(おおき)()兵衛(へえ)が耳元で(ささや)く。目覚(めざ)めが悪いな。


()連木(れんぎ)で見た忍びは四万は下らぬ数と」


 午前六時。忍びに(たた)き起こされた俺は北条の大軍が迫っていることを知らされた。今川が牛久保の援軍に来なかったのは北条を待っていたからだろう。


清源寺(せいげんじ)には武田の旗印が翻っておりまする」


 武田まで、か。岡崎から海を渡って逃げて来たか。恐ろしい奴らよ。


「武田の軍勢は?」


「一万は下らぬかと思いまする」


 とんでもない大軍だな。


「それと……大崎(おおさき)(じょう)には六角、北畠の軍勢(ぐんぜい)がおりまする」


 俺は息を()く。


「どうせ三好の()(がね)であろうな。ふん、どこまでも愚かな男よ」


 三好(みよし)(よし)(なが)の顔が思い浮かんだ。俺を屈服させようとしているようだ。いや、殺す気か。ならば受けて立つまで。


「吉田城に軍を進める。二郎(じろう)()衛門(えもん)玄蕃(げんば)にそう下知せよ」


 廊下(ろうか)にいた小姓が足早に下知を伝えに行く。逃げるわけにはいかない。ここで今川を打ち破る。









永禄五年(1562年) 一月下旬 三河(みかわ)(のくに) 吉田城近く 伊勢虎福丸


 壮観(そうかん)だな。今川勢三万の軍勢が布陣している。そこに北条軍四万、武田軍一万が加わっている。


 二郎(じろう)()衛門(えもん)床几(しょうぎ)に座っている。少し緊張しているようだ。俺も戦場は初めてだ。


「まずは本多平八郎の軍をぶつけまする」


 二郎左衛門がぼそりと言った。口元は(かた)く結んでいる。大丈夫か。もっとリラックスしろ。


「うむ」


 本多平八郎の軍が動き出した。牛久保でも城門を破ったのは本多軍だ。やはり平八郎は強い。


 本多軍と戦うのは今川の先鋒(せんぽう)、岡部軍。(やり)合戦(かっせん)が始まる。怒号(どごう)がこちらまで聞こえてきた。


「北条は動かぬな」


 北条軍は微動だにしない。武田軍もだ。流言(りゅうげん)飛語(ひご)を流しておいた。三好は関東の北条を(つぶ)したがっている。そのため、今川を利用して北条・武田の両家を(ほろ)ぼそうとしている。


 北条(ほうじょう)(うじ)(まさ)は困り果てているだろう。万事において慎重で義侠(ぎきょう)(しん)(あつ)い。それは良さでもあるが、同時に弱点でもある。


 酒井、石川、深溝(ふかみぞ)松平(まつだいら)が動き出した。今川軍も瀬名、庵原(いはら)、長谷川軍が対応する。今度は織田勢の金森、丹羽、村井が槍を()り出した。応戦するのは武田軍だ。あちこちで(やり)合戦(かっせん)が起きる。鉄砲の音も聞こえてきた。


 瀬名、庵原(いはら)、長谷川がじりじりと後退する。良い傾向だ。これは勝てる。もう一押しだ。










永禄五年(1562年) 一月下旬 三河(みかわ)(のくに) 吉田城近く 井伊(いい)(なお)(もり)


「ええい、何をやっておるのだ! 北条め、今動かねばいつ動くのだ!」


 思わず立ち上がった。伊勢軍は手強い。我が軍の奥にまで入り込んできている。


「殿、ここは退()きましょうぞ」


 但馬(たじま)(あせ)っている。(めずら)しいことよ。ここで討ち死には()けねばならん。


「殿より伝令! 本陣は南に動かしまする!」


「相分かった。我らも南に下がる!」


 伝令が引きつった顔になった。


「ここに踏みとどまって下され! 本陣を、本陣を守らねば」


「黙れ! 我ら井伊は犬死(いぬじに)にせぬわっ! 但馬(たじま)、全軍に伝えよ! 南に退くぞ――――っ」


 但馬(たじま)(うなず)いた。伊勢軍は強い。これは我らが負けるかもしれん。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 井伊直盛って桶狭間で死んでなかったっけ? この世界でも桶狭間は史実通りならだけど
[一言] 多勢に無勢と思いきや、虎君側が優勢。 一気に敵を叩き潰したれ!!!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ