第6話
「おい。おい伸晃!聞いてんのか!?」
「ん?あぁ悪い。なんだ到?」
彼らは千代田区にある高校に通う学生で百瀬伸晃と湯浅到。
「何ボーッとし…ははーんさては亀田さんを見ていたな?」
「ち、違う!断じて無い!」
百瀬の慌ただしさを見るに湯浅が言った事はどうやら的を得ているようだ。
彼らが通う学校には亀田も通っているが彼らと亀田は接点がない。
亀田は学校ではかなりの優等生で運動神経も良く容姿もいい為学校では有名人で男女共に人気が高かった。
運動神経がいい為運動部の勧誘もよくされるが亀田は半魔人の為部活に入る事は無いしそもそも学校では半魔人の事を隠している。
その為下校後に巡回に回る時には学校の近くにある大きい公園の個室トイレで変装して巡回へと加わる。
学生は平日は14時〜22時の巡回しか出来ないが学生は下校後から22時の巡回となる。
普段の姿は髪は短く眼鏡をかけているが変装姿は眼鏡を外しコンタクトを付け金髪で長髪のウィッグを被り巡回に回る為今のところ亀田を知る人達は変装している亀田を本人とは誰も知らない。
「まあ伸晃…無理だ諦めろ」
「なっ!うるさい!」
百瀬のように亀田に好意を抱く男子生徒は数多いがその皆が玉砕しており湯浅は百瀬もダメだろうと思っている。
そして放課後を迎え亀田は友達に別れの挨拶を済ませ下校しいつも通り変装して流翠、楠見、別所達と合流した。
時刻は21時半頃で魔人の反応を示したので流翠達は移動を開始しそして魔人と対峙し見事討伐に成功した。
「今日はこれでおわりかなー?ねぇりゅうくん?この後咲夜華ちゃんに会いに行っていい?」
「最近来すぎじゃないですか?しかもその度に泊まっていくし…」
「えぇーいいじゃーん。しおりんとまっさんも一緒にどうですかー?」
「私はまだ未成年なので帰ります!」
「比良濱が迷惑だろ。俺は帰って酒を飲む。それとその呼び方やめろって言ってんだろ」
「えぇーみんなつまんなーい…」
「あなたには彼氏がいましたよね?そちらへ行ってください」
楠見は不貞腐れ諦めたがちょうどその時に誰かの叫び声が聞こえて来てその声はだんだん近付いて来て声の主は遂に流翠達の視界に映る距離までに現れた。
「殺す殺す殺す殺す殺す!魔人は俺が全員ころーす!」
そう叫びながら全速力で走って向かってくる男は右腕全体を変化させその変化した部分は大きな刃となり流翠に対して攻撃を仕掛けて来た。
流翠は即座に右手を変化させ振り下ろされた攻撃を右手で受け止め「俺は半魔人だ!」と男に言うも男は興奮していて聞く耳を持たなかったので左手で男の顔面に向かって拳で殴りつけた。
すると男はそのままそこで倒れ込んでしまい状況を確認すると男は意識を失ってしまったようだ。
「なんだこいつは?」
流翠がそう言うと男が走って来た方向から一緒に巡回していたであろう三人が現れた。
「お前ら岩泉と古野間じゃねぇか!どうなってんだお前らの奴は!」
「別所さんすみません!魔人の反応があったんで来たんですがまさかこんな事になるとは」
「歳上の自分と岩泉の責任です!本当にすみません!」
別所と言葉を交わしたのは岩泉純弥と古野間進で遅れてもう一人現れると亀田が口を開いた。
「あれ?たしか同じクラスの湯浅君?」
「えっ?確かに俺は湯浅ですけど誰っすか?」
湯浅の言葉で自分が変装している事を思い出した亀田は「同業ならいっか」と言い湯浅に自分は亀田だと告げて先ほど流翠が倒した男を見ると「百瀬君?」と言い湯浅は「そうだよ」と告げた。
「なになにー?しおりんの知り合い?うわーりゅうくんしおりんの知り合いを殴ったのー?(笑)」
「いやだってこいつが攻撃して来たから!」
流翠と楠見のやり取りを聞いた湯浅が二人の間に入り口を開いた。
「すみません。そのーなんて言うか…漫画とかでたまにいる何かをする時に人が変わる、みたいな奴なんですこいつ…巡回中はいつも周りが見えなくなって…」
そんな奴が実際いるんだなと思った流翠と楠見は納得したようだ。
「んでどうするの?このままここに置いとけないよ?湯浅君だっけ?家は近いの?」
「いえまあまあ距離はあります」
その言葉を聞いた楠見は目を輝かせた。
「んじゃりゅうくんの家で意識戻るまで見ましょう!そうしましょう!」
「勝手に決めないでください!」
「あれれーこうなったのは誰のせいかなー?」
そう言われた流翠は返す言葉が見つからず渋々了承し百瀬を背中に乗せ移動を開始した。
「岩泉と古野間は俺に付き合え!いいな!」
別所がそう言うと岩泉と古野間は「はい!」と答え三人はこの場を去った。
「でもビックリした。その姿もだけど何より亀田が半魔人だったなんて」
「私もです!まさか同じクラスに二人もいたなんて!世間は狭いですね(笑)」
ここで湯浅は何かを思い出し流翠達に少しコンビニに寄りたいと伝えコンビニへと入っていった。
結果的に流翠の部屋に楠見、亀田、湯浅、そしてまだ意識が戻らない百瀬が到着した。
部屋に入ると楠見は直ぐに咲夜華の元へと向かい亀田と湯浅はリビングで腰を下ろした。
それからやっと百瀬の意識が戻り湯浅は百瀬の頭を掴み下げ、改めて流翠達に謝罪をした。
「その本当にすみませんでした。以後気を付けます」
「お前さっきと全然違うな。さっきは殺すとか言って攻撃して来たくせに。一歩間違えたらお前人殺しになってたぞ」
「本当にすみません!これからはそんな事をしないように努力します!」
「えっと分からないと思うから改めて百瀬君と同じクラスの亀田です!」
「えっ?亀田?でもその姿…でも声は亀田だ…???」
亀田は巡回中は変装している事を百瀬に伝えた。
時刻は23時になっていてここで亀田が先ほど湯浅がコンビニで買った商品を百瀬に渡した。
「んでこれ。湯浅君から聞いたのだけど今日は誕生日だって。湯浅君が買ったケーキだけど誕生日おめでとうございます!」
今日6月24日は百瀬の誕生日だった。
「えっ?あ、ありがとう…」
「あれ?あんまり嬉しくなかった?ごめんねあんまり会話した事ない私が言っても嬉しくないよね…」
「い、いや!そんな事はない!ありがとう!」
その光景を見ていた楠見は「青春だねー♪」と言って楽しそうに眺めていた。
そして百瀬がケーキを食べ終わり解散する事となった。
帰りは亀田、百瀬、湯浅で帰っていたが湯浅はここでいつもとは違う道で帰ろうとし亀田と百瀬に「俺こっちだから」と言い去っていった。
「その今日は迷惑かけた。本当にごめん」
「まあ流翠さんは許してるからもう大丈夫だと思うよ!それよりこれからも一緒に頑張ろうね!あと連絡先交換しよ?」
亀田がそう言うと百瀬は亀田に連絡先を伝えた。
「学校でも仲良くしようね♪それじゃ私こっちだからまた明日!」
「お、おう…ま、また明日!」
お互い別れの挨拶を済ませそれぞれの帰路に着く。
百瀬はすぐさま湯浅に連絡を入れた。
「俺今日死ぬのかな?」
ーーー
「ごめんな最近ずっと騒がしくて」
「いえいえ私は楽しいですよ!」
みんなが帰宅した後流翠と咲夜華は食事を取り会話を交わした。
「それより飯を食べる時間俺に合わせなくていいんだぞ?」
「いえ。誰かと一緒に食べる方が美味しく感じるので!」
「そうか」
そして二人はお互いの部屋へと向かい今日を終えた。