やりますか?やりませんか?
クラスメートの一人が困惑した様子で男に問いかける。
「狩ってくるってどういうことですか?」
男はふとあることに気づいたようで
「狩ってくるというのは少し違いますね。正確に言うとチートアイテムとチート能力を回収してもらいます。
順を追って説明します。がその前に場所を変えましょう。」
パチンッ。
男が指を鳴らすと一瞬で周囲は先程の教室に変化した。
「それでは席に着いてください。」
男に促されて俺達は席に着く。
俺達が席に着いたことを確認して男は口を開いた。
「改めましてこんにちは。私は神です。神と言っても私が世界を造ったわけでなく、様々な世界で発生した人類を監視し、文明のレベルを管理している者です。神という名やこの姿もあなた方と意思疎通をしやすくするための便宜的なものです。ちなみに私は人類の担当ですが同僚には様々な生物担当の神や世界その物を管理している上司もいます。」
男の言葉に俺は本当に役所みたいだと思って回りを見回すと他にも同じようなことを思った様子のクラスメートが何人かいた。男は続けて
「ではなぜチートアイテムや能力の回収をお願いするかというと数が増えすぎたからです。以前から文明の調整のために異世界の移住者は送っていたのですが、あなた方の世界で異世界転生や移住を題材にした娯楽作品が増えたため異世界行きを希望する者が短期間で激増し結果的に文明のレベルの調整や世界を管理することが困難になり持ち込んだアイテムや能力を回収することが決まりました。」
男の話に疑問を持った俺は手を挙げて男に問いかけた。
「増えすぎたっていうけど希望を拒否したり別の世界に振り分けたり出来なかったんですか?」
俺の質問に俺はうつむき小さなため息をついて答えた。
「希望は生前よほどの悪行を積んだ人間以外は基本的に拒否出来ないんです。以前は希望者も少なかったのでこちらの剪定した人に交換条件を出して依頼して移住してもらっていました。もう1つの他の世界に振り分け出来ないかという質問ですが、実は私の所属している班は比較的新しいもの班で担当している世界の数も少なくその中で人類が存在するのはあなた方の世界ともう1つしかありません。ですから他に振り分けることが出来ません。」
男の話を呆れながら聞いていると男は
「私達神が直接世界に介入することは禁止されているので特例として交換条件を提示して回収を依頼することになりました。ここまでで何か質問はありますか?」
男の問いにクラス委員長の女子が手を挙げて
「2つ質問があります。1つはなぜ私達が選ばれたのか?もう1つはこの話を拒否したら私達はどうなりますか?」
と質問した。
「1つ目の質問ですが特に選んだという訳ではありません。この件が決まって後にたまたまあなた方が死にそうだったのでがここに来てもらいお願いをしています。補足しておくと私があの運転手の心臓発作を引き起こしたということもありません。私の仕事は死者の希望を聞いて希望通りの場所へ案内することと異世界への人の派遣です。2つ目の質問ですが拒否されるならあなた方の精神は元に戻ります。その後は運良く生き残ればそままですが運が悪ければまた此処へ来て死後どうするか決めていただきます。」
男の言葉は実質死ぬのが嫌ならこの話を受けろというもので俺達に選択肢は無いも同然だった。
「他に質問はありませんか?無いのなら次の話を進めます。」
男は周囲を見回し、質問が無いことを確認して話を進める。
「死にたくなければ言うことを聞けというのではモチベーションが上がらないでしょう。ですから別に交換条件を出します。」
そういうと男は黒板に星を1つ書きながら話を続ける。
「持ち込んだアイテムや能力を1つ回収するごとに星を1つ与えます。元の世界に戻るときにその星と交換で報酬を出します。
その報酬とはズバリ、いくつか条件は付きますが星の数に応じて願いを叶えます。出来ないことは、人に害をなすこと、老衰で死んだ人間を生き返らせること、自然災害をなかったことにすること、過去の出来事を改編することもできますがみなさんが今この場にいるということは覆せません。
また金持ちになりたいとか宝くじの一等当てたいと言った金銭目当ての願いもかなえられますがそう言った願いは星1つに付き一千万円が上限です。」
男の説明にいつもはふざけている長嶋雅樹というクラスメートが立ちあがり真面目な顔で問いかけた。
「歴史が改変出来るって、俺は昔事故で両親が死んでじいちゃんばあちゃんと暮らしてるけど親を生き返らせることも出来るのか?」
長嶋の質問に男は
「生き返るのではなく、事故が無かったことになりあなたの両親は亡くなっていないということになります。ただしその場合でもあなたはおじいさんおばあさんと暮らしてることになります。」
長嶋は「マジかよ・・」と呟きながら茫然と席に着いた。
それを見て男が
「歴史改変について補足しますね。1つめについて自然災害は無かったことにはできない。これは惑星の担当は私ではなくさらに上位の存在の担当なので私には権限がないためです。しかし、災害の時にその場にいなかったことにしたり、人が原因で起きた災害について無かったことにはできます。2つめについては簡単にいうとあなた方ののが産まれる前に親や先祖を殺してしまうとあなた方がいないのにあなた方の報酬で過去を改変するという矛盾が発生するので出来ません。もう1つは仮にあなた方あなた方が高校入学前に別の場所に移住するしたり他の学校を受験するよう改変をしてもあなた方がここにいなければやはり矛盾が起きるため修正力により結果的にこの場に来るようになります。3つめは分かると思いますが老衰は細胞の限界で改変しようがありません。ただしそれ以外の事故、病気、殺害、自殺なら改変により救うことは可能です。」
男の説明にクラスメート達の反応は様々だった。
話に着いていけず呆然としている者、現金が貰えると聞いて浮き足だつ者、自分の夢を語って実現できるかもと喜ぶ者、過去を取り戻せると目を輝かせる者。
俺はというとある人の顔を思い浮かべかつてないほどやる気に満ちていた。
男はクラスメートの顔を見回して口を開いた
「最終的な結論は後で構いません。ここまで話を聞いてみなさんは、やりますか?やりませんか?」