(起)
HIKARI(光)の番外編と言うことで♪
初の短編トライです!
(起)・(承)・(転)・(結)の四部で構成していきます♪
文章の勉強をしながら、書いてます。まだまだ、レベルは低いですが、せっかく勉強してるんで、本編の開始時よりは「良くなった」って言われたいなぁとか思ってます(笑)
水晶玉? 最初は、ただのガラス玉だと思っていた。手の中にシックリと馴染むその玉は、不思議と僕を求めている様で、どうしても手放す事が出来なかった。
その答えを僕が知ったのは、ついこの間の事だ。
〜ヒーローは小学生〜 HIKARI(光)−−番外編−−
日も暮れる頃、友達の「優也」(ゆうや)が、中学生にカツアゲを喰らっていると、慌てた様子の、クラスメイトでもある「将太」(しょうた)から聞き、僕は全速力で「お化け公園」へ自転車を走らせていた。
「お化け公園」は、本当は「大馬袈公園」と言うのが正しいが、「お化け」の目撃証言が後を絶たない事から、いつの間にか「お化け公園」とみんなから呼ばれ、恐れられている。
車通りの少ない道路にある、コンビニの角を曲がり、古びた民家の間を突き抜けると、一際小さな「お化け公園」が視界に現れる。
鬱蒼と生い茂る深緑色の木々が、お互いを押し合うかの様に何処までも立ち並び、そのせいで太陽の光がほとんど地面に届かなくなっている。
そんな、都会では珍しい程の森林が、「お化け公園」の一体に広がっている。
お化け公園の入口に到着すると、向こう側に見える錆だらけの滑り台の下で、詰襟の学生服を着た、四人の中学生を発見した。
中学生達に囲まれ、既に涙を目に浮かべ怯えていた優也は、僕を見つけるなり、大声で僕の名を叫んだ。
「アキラー、助けてーっ」
優也を取り囲んでいる中学生達の一人は、ガタイが良く、あとの三人も痩せてはいるが、背丈は小学五年の僕を軽く上回る程だ。
「なんだ、このガキ。お前もヤラレに来たのか?」
とガタイの大きな中学生が鋭い眼光で睨んでくる。
ついこの間までの僕なら、怖さの余りに怖じ気づき、優也の立っている場所に僕が居ても可笑しくは無かっただろう……
だけど、今の僕にはコレ(水晶玉)がある。
ゆっくりと四人の下へと向かって歩いてゆくアキラの手の中で、握りしめられた水晶玉が光り輝く。
「友達から奪ったお金、返してあげてよ」
と、四人に対して勇ましい態度で問いかけるアキラ。
痩せた三人の内の一人が、噛んでいたガムを膨らませ、音を立てて壊れた。
「ふん、お前の金も貰ってやるよ!」
ガタイの大きな中学生は、そう言うとアキラに向かって大きく拳を振りかぶった。
だが、紙一重で拳をかわすアキラ。「マグレ」では無く、アキラの目には、相手の拳の軌道がハッキリと見えているのだろう。
一発目の渾身の一打をかわされ、驚きと悔しさで、頭に血が上ったガタイの大きな中学生は、何十発もの拳をアキラに打ち放つ。しかし、それらの攻撃も全て、紙一重で回避してゆく。
アキラの驚くべき動きに、口をポカンと開いたままになっている残りの三人。
さすがに疲れが顔に出てきたのを見抜いたアキラは、強烈な一撃の拳を相手の腹部にめり込ました。
鈍い音と共に、ガタイの大きな中学生の体が「くの字」に曲がるや否や、後方に大きく吹っ飛び地面に崩れ落ちる。
崩れ落ちた中学生は、余りの拳の力に内臓が悲鳴を上げ嘔吐した。その姿に、残りの三人の中学生は、お互いの顔を見合わせ一目散に逃げていった。
アキラは、地面に転がっている優也のお金を拾い集めた。
「ほら、お金返ってきて良かったな」
差し出された優也の掌に、アキラの手から小銭がジャラリと返される。
優也は、先程までの悲愴感溢れる表情から、まるで救世主を見るような憧れの眼差しへと変わっていた。
「マジ凄いよアキラ。やっぱしアキラは、ヒーローだよ」
「ははは、また困った事があったらいつでも呼んでくれよな」
笑顔で返すアキラ。
二人は、ゆっくりとお化け公園を後にした。
始めは、自動車に撥ねられそうになった時だ。塾の帰り道で信号を渡ろうとした時、白いスポーツカーが、信号を無視しながら突っ込んできた。
速度を落とす気配も無く、物凄い勢いで僕に迫ってくるスポーツカー。
もうダメだ! と思った瞬間、ズボンのポケットに入れていた水晶玉……まぁ、この時は綺麗なガラス玉だと思っていたけど、それが一瞬光った様な気がした。
次の瞬間、僕は、無意識のうちにスポーツカーのボンネットに強烈なパンチを放っていた! 自分でも驚いたよ…
ボンネットを凹ました時の、不思議な感触は今でもハッキリ覚えている。
−−(何て柔らかいんだ……)
まるで、ダンボール箱を思いっ切り殴った時のようだ。だが、金属が悲鳴を上げながら形を変え、千切れていく音が凄まじかったのは言うまでもない。
スポーツカーは僕のパンチで、瞬時に急停止し、凹んだボンネットの隙間からは、見た事の無いような複雑な機械の部品が飛び散っていた。
運転していた人は、衝撃で、フロントガラスにヒビが入る程に頭をぶつけていたが、何とか助かったみたいだ。
正直、水晶玉の力なんて考えもしなかった。でも自分ですら、説明する事の出来ない事が、起こった事は確かだった。
そして、次に起こった出来事で、僕は水晶玉の力の存在を知る事となる。
あれは正しく決定的だった。
笑い事じゃないけど、学校の屋上から落ちたんだから。何で落ちたかって言うと…屋上に整理されていた古い机や資材を使ってアスレチックジムを作って遊んでいたんだ。
なんとなく「危ない」って解るだろ?
トランポリンを使って障害物を飛び越えようと思ったら、勢い余ってフェンスを飛び越えてしまったってわけ。
「もうダメだっ!」って思ったとき、目の前で水晶玉が輝きだして、無意識のうちにその玉を掴んだんだ。
そしたら、急に体が軽くなって、ゆっくりと地面に着地ができた。
友達もビックリしていたけど、僕自身が一番驚いたね。
その時に思った……この玉は僕に凄い力を与えてくれるって。
それから、どうやったらこの水晶玉の力を自由に使う事ができるのか、毎日練習しているうちに少しづつ「コツ」が解ってきて、今では、意のままに力を使う事ができる。
この水晶玉がある限り、僕はヒーローだ。
ガタイの大きな中学生の意識が戻った時には、既に辺りは真っ暗になっていた。「お化け公園」に一つだけある外灯がぼんやりと不気味に辺りを照らし出す。
ゆっくりと立ち上がり、ふと前を見るとブランコの前に、赤い服を着た、長い黒髪の女が俯きながら一人でじっと立っている。大人の女が、こんな夜に不気味な公園で一人でいるのは、余りに不自然だ。
暗闇の中、外灯に照らし出された、女の顔をよく見ると、大きな白いマスクが見える。腰までありそうな黒髪が、顔の上半分を隠し、大きな白いマスクで、顔のほとんどが見えない。
途端に、ガタイの大きな中学生に悪寒がはしり、体が震えだした。
女は、中学生の方へ顔を向けると、ゆっくりと歩み寄る。ジャリ……ジャリ……と一歩一歩、距離を縮める女。
「私……キレイ……?」
ガタイの大きな中学生の耳には、確かにそう聞こえた。
弱弱しく、細い声が彼女をより不気味な者へと感じさせる。
「あ……はい……」と、不気味な程に感じる恐怖を押さえるかの様に、平静を装いながら答える中学生。
すると、赤い服の女は、ゆっくりと白く細い手で、マスクを外した。
中学生は、その女の衝撃的な姿を目の当たりにし、絶句し、凍り付く……
女の口は、耳の後ろの方まで裂け、涎にまみれた無数の鋭利な歯が、尋常じゃない程生えている。
全身の鳥肌が立ち、電気が走るかの感覚が襲う。
「これでもキレイ……?」と大きく不気味な目を見開き語りかける女。
余りの恐怖と、信じられない光景に腰を抜かし、尻餅をつく中学生。
すると、女の顔が急に険しくなる。
「あら……そんなに私の顔が醜い……?」
ズリズリと足で地面を蹴りながら、立つ事も出来ず、後退りをする事で精一杯の中学生。
女は、おもむろに懐から、刃渡り五十センチ程の巨大なハサミを掴み、中学生に見せびらかす様にジャキン……ジャキン……と刃を開閉させる。
外灯の光が、ハサミの刃を照らし出すと、赤い液体がまとわり付き、滴る液体がポタポタと地面を濡らす。
ガタイの大きな中学生でも、その液体が何なのかが直ぐに解った。
−−血だ……!
「止めて! 助けて!」と言いたいが、声が出ない。
女の大きな口からは、人間の声とは思えない様な恐ろしい笑い声が聞こえるが、その顔は、怒りと憎しみに満ちている。
次の瞬間、ジャキン!! と言う音と共に、中学生の首が無くなった。
「あの……水晶玉が欲しい……」
そう言い残し、女は闇へと消えていった。
月の光さえ届かないお化け公園は、静寂に包まれた。
〜つづく〜