第4話 〜はじめてのたたかい〜
書きだめが早速なくなったので、次話を投稿するまで間を開けようと思います。
石の扉に手を触れさせると、石の扉がゆっくりと開き、祭壇が露わになる。
ゲームの中だとそこまで大きく見えなかったけど、こうやってゲームの主人公の目で見てみるとこんなにも大きいんだね。
僕は、そのまま扉の中へと歩みを進める。
───だが、何かがおかしい。そう、ボスモンスターの姿がみえないのだ。
いつもなら祭壇の上に座っていたり、仁王立ちしてたりするんだけど...
少し不審に思い、辺りを見回していると、突然Xから声が掛かる。
(おい!優希!上から来るぞ!伏せろぉ!)
その声に反射的に応じ、僕は伏せる。すると、伏せたのもつかの間。凄まじい衝撃波が僕を襲う。
その衝撃波で僕は3mほど吹っ飛び、なんとか受け身は取ったのでそれ程ダメージは無いが、不覚を取ってしまった。
このダンジョンの裏ボス、太陽神ラー【アナザーフォルム】は肉弾戦を基調とし、その俊敏さで相手を翻弄する闘い方だ。
まさに今、スピードが遅くなってる僕には、攻撃の来る場所を予測し、攻撃を対処するしか闘い方は無い。
(油断するなって言ったろ?今のお前は呪いシリーズを装備しているスキルも何も無いkaiserなんだ。正直なところ今のお前の勝率はかなり低い。いざと言う時は俺が出るが、どうする?俺に任せるか?)
「そんなの絶対嫌だ!」
確かに。幾ら僕が色々武術を齧っているからって呪いシリーズを装備していて俊敏さに欠けるし、攻撃を避けきれるかもわからない。
行動パターンも熟知しているけど、それでもまだ不安だ。
でもだからって誰かに任せてこの強敵と闘わず終わるなんて、そんなの...
「全く面白く無いっ!!」
そうこうしている内に敵は第二撃の準備をしている。
さぁ、来るぞ...相手の攻撃が。
腰を低くし、構えてじっと見ていると、
───相手が消えた。
「ッッッッ!?後ろか!」
右手に持った大鎌を振り切り、敵の攻撃を防ぐ。
これだ、目にも止まらぬ速さで拳を突き立ててくる。だが、コレには弱点がある。
それは、この攻撃を攻撃で防ぐ事によって相手にダメージが与えられるという事だ。
《これなら耐久でいけるか...!》
そう思いながらも表情には油断や慢心は見えない。それ程に真剣で、そして本気でやらなければこの敵には勝てないと心から思ったのだ。
なんとか攻撃を防ぎつつ、たまに隙を見つけて攻撃を当てる。
そんな攻防を繰り返すこと数分、遂に敵が動きを見せた。
攻撃が先程とは比べ物にならない程に速くなり、更に、攻撃に緩急を付けてきたのだ。
パターンは分かってはいるが、攻撃の対処が難しくなり、苦虫を噛み潰したような顔になる。
「くっ...そぉぉ!」
1度後ろに飛び退き体制を立て直す。
敵の攻撃があまりにも速く、自分も動きが遅くなっているのでどうしても対応出来ない攻撃が当たってしまう。
このままではジリ貧になるばかり、どうにか勢いをこちらに持っていきたいのだが、そうできる策がない。
相手の動きを探り、対策を練ろうとするもそれも考える暇すら与えてくれない。
だが、相手にもダメージは少しづつだが入っている。
こちらとしては、一刻も早くこの闘いをおわらせたいのだが、全くと言っていいほど策が出てこないので、もう、このままポーションガブ飲み耐久プレイでも良いかと思った瞬間、ある事を思い出す。
『アイテム使用キャンセル』
ソロで狩りに行くにはほぼ必須のテクだ。裏を返せば、パーティーではそこまで必要ではない、というかパーティーでそれをすればメンバーに迷惑がかかるので、やろうとする人は居ない。
『アイテム使用キャンセル』とは、言葉通りアイテムの使用モーションをキャンセルする技である。
これに一番適しているのは投擲アイテムの投げナイフで、丁度投擲モーションが終わった直後に、キャンセルのタイミングが来るし、投擲モーションもある程度省略出来るので、スキルと重ねるとかなり攻撃がヒットする。
スキルの方はさっきからガンガンと打ち合っているので大鎌の熟練度がどんどんと上がり、スキルが3つ解除された。
てっきりアイテム使用キャンセルはこの現実と化したゲームでは出来ないと、頭の中で考えを排除していたが、今はこれしか出来ることがない。
インベントリにある投げナイフのアイコンをタップし、使用する。
すると、やはり投擲モーションが入り、半自動的に体が動く、それをゲーム内のキャラクターの真似をして体を少し捻らせ動きを省略しナイフを投げたが、妙な事が起きた。
「ナイフを...避けただって!?」
普通のシステムでは有り得ない。
確かに、ゲームの中でも敵が攻撃の為にステップをして、その際に避けたというのはあったが、今回は違う。
首を傾け、あからさまに回避したのだ。
だが、驚いている暇はない。
今はアイテム使用キャンセルの最速コンボを決めなければ行けないのだ。
取り敢えずスキルを発動する。
『デッドスライサー』
大鎌の最初に取れるスキルである。
元々ゲームでは1本しか大鎌は持てないので、スキルを使うと1本だけを振るのかと思いきや、ちゃんと2本で攻撃しているので、やはりこの二鎌流は仕様なのだろう。
そして、それに続いて
『ブラッドドレイン』
これは3番目に取れるスキルであり、先程のデッドスライサーと組み合わせると最速で発動する事が出来る。
それに、名前の通り、攻撃を当てるとダメージの半分HPが回復する。
残り一つスキルがあるが、これは滅多に使わない、死にスキルなので今回は使わない。
アイテム使用キャンセルのおかげで、戦況がガラリと変わり、一方的になる。
だが、まだそれでも気は全く抜けない。何故なら、HPが半分を切ると、攻撃に魔力が乗ったり、至近距離で魔法を撃ってくるのだ。
現時点での魔法はかなりくるものがあるし、今まで通りアイテム使用キャンセルでも、タイミングを見計らってしなければいけない。
面倒な事極まりないが、これを成し遂げなければ前には進めない。
残りあと少しで相手のHPが半分を切る。
───来た!
かと思いきや、敵の動きがピタリと止まる。
こんな事、前じゃ有り得なかった。
だけど、こんなチャンスを見逃すわけないので、すかさず最速コンボをぶち込む。
だが、HPのバーも減っていないし、まるで効いている様子がない。
攻撃をやめ、相手の動きを探ろうと見つめていると、突然、敵の背後から白いモヤが出てくる。
それは瞬く間に敵の体を包み込み、どんどんと敵の体を変化させていく。
気付けば変化は終わっており、目を見やると、そこには、なんとも神々しく、悪などという文字が全く思い浮かばないような存在がそこにいた───