真珠と、マーガレット
暗い水の底のような場所だったのに、次に目を覚ましたら、回りにはマーガレットがたくさん咲いていた。水の中でぼんやり光るマーガレットは、ロイスに貰ったものと同じだった。花言葉は真実の愛だと知ったのは、ロイスからもらって随分経った後だ。
今まで、たくさんの花を貰った。戦地でも、孤児院でも、王宮でも大なり小なり花を貰った。ジョゼもくれた。ジョゼのくれる花は大輪の花ばかりだった。
本当は嬉しかった。雪加は、小さな花よりも大輪の花が好きだったから。でも、似合わない花ばかりだった。
自分にふさわしいのはマーガレットのような花だ。もっと小さな路傍の花が本当はお似合いなんだ。
似合わない花ばかり贈られて、雪加は疑問に思ったけど、丁寧なあいさつを女性たちにされたときに気づいた。雪加ではない人にもこの花を贈ったことが、ジョゼにはある。
この花の似合う女性たちに贈ったことがある。
失望しかけて、やめた。二人の間にあるものが『信頼』だと思えば、そんなことで失望することはない。
それ以来、大輪の花は好まなくなった。マーガレットのような花ばかり目につくようになった。
上を向くと、光が少し大きくなっている気がした。
そして自分の周りに目を向けるとマーガレットと一緒に、白い泡の粒がたくさん雪加の周りを漂っていた。
すごくきれい。雪加の息いがいの泡の粒がふわふわ漂い踊っていた。
一つに触れると、優しさで満たされた。もう一つに触れると、切ない気がした。
もう一つ触れると、また優しさがあふれだした。
一つ、一つ、指先で触れると、雪加は不思議な気持ちで満たされていった。
必要ない、いらないものだ。雪加は、どこかでそう思い、自分の行いを咎めるように指を引っ込めたけれど、もう一つだけとまた手が伸びていく。
そうして、不思議な気持ちをたくさん見つめていると、とうとう泡がなくなった。
なんだ、もうないんだ。また、眠ってしまおうと横になると、ふわっとまたたくさんの泡が出てきた。
なんだろう、また、出てきた。
静かで暗い海の底のような場所なのに、光る泡の粒がたくさんあって周りが明るくなり始めた。
雪加はまたせっせと泡をつぶす作業を始めた。