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月に8万円じゃ足りない…

 この生活を始めてみて、わかったコトが1つある。

 それは、“1ヶ月に8万円というのは意外と少ない”ってコトだ。


 そのほとんどは食費に消えていく。油断していると、6万円くらいすぐに消えてしまう。だから、なるべく節約しながら生活するのだが、それでも4万円くらいは簡単に飛んでいく。

 それ以外にも、電気代や水道代や通信費用などで1万円は必要になる。健康保険に5000円以上払っている。なんやかんや雑貨なども購入していると、趣味の為に自由に使えるお金なんてほとんど残りはしない。

 これは、どうにかしなければ…


 しかし、家賃を全く支払う必要のないこの僕でも、こんなに大変な思いをしているのだ。この上、毎月家賃まで請求されるようになったら、どうなるのだろうか?家を持っていない人たちは、これでどうやって生活しているのだろうか?

 僕は、他のベーシックインカム受給者の生活が知りたくなってきた。この街に元々住んでいる3000人はいいとしても、2000人は家賃を払いながら生きているはずなのだ。

「どうにかして、コンタクトを取ってみたいな」

 そんな風な好奇心が僕の心の中でムクムクとき上がりつつあった。


 だが、とりあえずは、それはいい。さしあたっては、日々の生活の方をどうにかしなければ。

 それに、人と接するというのはエネルギーを必要とする。人と触れ、会話し、人間関係を構築していく。そういうのは結構面倒なものなのだ。今の僕に、そこまでの気力はなかった。


         *


 布団の上に寝転がり、考え事を続ける。

 僕はひとりごとをつぶやきながら、考えを進めていく。

「持ち家っていったって、お金がかかるものだよな。固定資産税に、修繕費用。何十年もったら、家を建て替えないといけなくなるだろうし、そうでなくてもリフォームする必要は生じてくるだろう。それらは、1年あたりに割ったら、いくらくらいかかるのだろうか?」

 この家の名義は僕のモノにはなってはいない。なので、固定資産税も親戚の誰かが支払ってくれていた。僕はただここに住んで、維持するだけでいいのだ。

 そういう意味でも非常に有利な条件下にあった。他の人たちは、こうはいかないのだ。何かとお金がかかる。世界を回しているのは、なんだかんだいいつつも、やはりお金なのだ。お金がなければ、生きてはいけない。


「それに、年金だとか介護保険料だとかもかかる」

 僕は収入が少ないので、年金の支払いの方は止めてもらっていた。介護保険料を支払うような年齢でもない。40歳までは大丈夫。だが、いずれは、それらの問題についても考えなければならない時期がやって来るだろう。

「でも、待てよ。もしも、このままベーシックインカムという制度がうまくいって、全国へと広がっていったとしたら、そういったモノは全部なくなってしまうのではないだろうか?」

 その可能性は充分にあった。

 実際、テレビの討論番組などでも、そういった議論はよく行われていた。

「ベーシックインカムが普及した世界においても、国民健康保険だけは残すべきだろう」とか「年金制度は完全に破綻はたんしてしまっている。そこは全てベーシックインカムに含めるべきだろう」とか、そういった議論だ。

 そりゃ、そうだよな~。毎月8万円もらったって、そこから2万円も3万円も引かれるようになってしまっては意味はない。それだったら、最初から5~6万円を振り込めばいいだけの話だから。

「けど、人によって年金や健康保険の支払額も変わってくる。そうなると、一律に同じ額を配るという考え自体が間違っているのかも…」

 段々と、頭が混乱してきた。どうやら、僕の頭ではこの辺が限界のようだ。きっと、その辺りのことは、誰か偉い人がよく考えて決めてくれることだろう。

 そう思い直し、僕はそれ以上考えるのをやめにした。

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