表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/60

ノンビリとした人生

 僕の日常はというと…

 いたって地味なモノだった。


 寝る時間も起きる時間も特に決まってはいない。誰に邪魔されるわけでも強制されるわけでもない。24時間フルに、自由に使える。

 それは、ベーシックインカム大実験が始まる前、この街にやってくる前から変わりはしない。


 とはいえ、それなりに健康的な生活を送っていた。

 睡眠時間は8時間前後。朝は、大体8時くらいには目が覚める。テレビで放送している朝の連続ドラマを眺めながら、服を着替え、朝食を取る。

 それから、テレビのニュース番組を片目にインターネットで情報をチェックしていく。

 日によっては、ここで布団を干したり、洗濯をしたり。その後、近所を散歩する。


 外に出たついでに、近所のスーパーで買い物。いや、スーパーといっていいものだろうか?個人経営のコンビニのようなスーパーのようなお店だ。

 この街には、まともに食料品を購入できるお店が3軒しかない。その内の2軒は、僕の住んでいる家から2~3分の距離にある。ちょうど、かつての商店街の成れの果てとでもいうべき場所に、おばあちゃんの残してくれた家はあるのだ。

 おばあちゃん自身も、昔はお店をやっていた。洋服だとか、釣り道具だとか、タバコやガムといった雑貨も売っていた。それも、もうだいぶ前にたたんでしまい、今ではこの家だけが残されている。


 昔は、この街ももっとさかえていたのだけれども、過疎化によってみんななくなってしまった。僕が小学校に上がる前くらいまでは本屋さんもあったのだが、それもなくなった。街に1軒だけあったガソリンスタンドもなくなり、消防署もなくなった。小さな交番と郵便局は残っている。


         *


 僕には、永遠にも思えるほどの時間が与えられていた。

 他には何も与えられなかったけれども、時間だけは手に入れた。特別(かしこ)いわけでもなく、たぐいまれなる話術やコミュニケーション能力があるわけでもなく、人よりもお金をかせげたり、誰よりも努力できたりするわけでもない。

 ただ、自由に使える時間だけは持っていた。この頃の僕は、それがいかに恵まれたことであるのかということを知らなかった。全然理解していなかった。

 だから、無意味にボ~ッとして過ごしたり、無駄なテレビ番組を見たり、くだらないゲームをして時間をつぶしたりしていた。


 世の中には、こういう時間の過ごし方が苦になる人たちというのがいるらしい。つまり、特に何もするコトがなくボ~ッとして時間を過ごす生き方が。

 でも、僕はそうじゃなかった。こういう生き方が苦にならなかったし、むしろ、楽しかった。ただ時間が流れていく様子を眺めているだけでも充分に幸せだった。

 それとは逆に、あくせく働く方に苦痛を感じてしまう。僕は、そういうタイプなのだ。


 世の中、それぞれの人が、それぞれに合った生き方をしていけばいい。

 このベーシックインカムというシステムは、それを可能にしてくれるかもしれない。その可能性がある。


 どちらか好きな方を選ばせてくれる。

 あくせく働きたい人は働けばいい。ノンビリしたい人は、ノンビリ生きていけばいい。

 人は、自然に生きていくのが一番幸せになれるのだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ