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政府への報告書

 アレから僕は報告書を書き始めた。政府に提出する報告書だ。

 政府からは、“ベーシックインカム大実験”の恩恵おんけいを受ける代わりに、毎月1度、報告書を提出することが義務づけられていた。

 僕は、そういうところはマジメだったので、毎月欠かさずメールを書いて送っていた。

「月に8万円ももらっているんだものな。このくらいはしないと…」

 そういいながら、がんばって長文のメールを作成した。


 政府への報告書は、手紙でも構わなかったし、メールでもよかった。

 パソコンをうまく使えないお年寄りなんかは手書きで書いた文章を郵送で送っているらしかったが、僕は手書きの方が大変だと思っていたので、いつもパソコンで文章を打って、電子メールで送っていた。

 中には面倒くさがってサボっている人もいたが、特に罰則などはないようだった。少なくとも、今のところは。でも、ある日突然、支給を打ち切られる可能性だってある。そういうのが嫌だったから、僕はマジメに報告書を書き続けているのだった。


 特に、今回は念入ねんいりに詳細な文章を書きつづった。

 普段は、「畑で農作業をしました」とか「近所の人たちと集まって、一緒にご飯を食べました」みたいなコトしか書かない僕だったが、今回は違っていた。

 シェアハウスの人たちとの間でわされた会話の内容や、インターネットで調べた情報、自分なりに考えた解決策や財源案などなど。

 余計なコトを書くと怒られる可能性もあったが、その時はその時で仕方がない。せっかく、このようなチャンスを与えられたのだ。何もしないよりかは、何か1つでも行動を起こした方がいい。そう思って、僕は書きまくった。


「こんなコトに意味はないのかもしれない。でも、何かをせずにはいられない。これも、ゲームと同じなんだ…」

 そうつぶやきながら、僕は長文の報告書を完成させていく。

 そう!これもゲームと同じ!駄菓子屋に置いてあるビデオゲームと。ブロックを押し、敵を倒す。そうやって、ステージをクリアーしていく。それができるようになってきたら、今度はより高得点を狙ったプレイに切り換えていく。

 頭の中には常にゲーム画面があった。世界はゲームと同じ。そう考えると気持ちが楽になった。農作業もゲーム。お金をかせぐのもゲーム。きっと、このベーシックインカムだって、ゲームだと思えばうまくいくはず。

 国家の運営だって、それは同じはず。基本は経営シミュレーションと同じ。ただ、規模がより大きくなり、複雑になってしまっているだけで。今の僕の実力では、問題を解決できるだけの対応能力はない。でも、それはレベルが低いから。ゲームの腕を上げれば、より難しいステージがクリアーできるようになるように、国の問題だってレベルが上がれば処理できるようになってくるに違いない。

 僕はそう信じて、毎日必死になって勉強し、報告書を書いた。テレビで見る番組もアニメを減らし、ドキュメンタリーやニュース、政治討論番組などを増やすようにした。


 こうして、また時は流れていく。

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