翼人
空を飛ぶこと。
それは、私たちの夢であり。
希望であり。
願いだった。
「ルル、行くよ」
自転車のペダルをクーアは思いっきり漕ぎ出した。
「大丈夫?・・・・クーア、やっぱり無理なんじゃ」
「無理じゃない!」
自転車の二人乗り。
後ろには少年を乗せ少女は顔を真っ赤にしてさらにペダルを漕ぐ。
「島で、この坂が一番長い・・・・これで最後なんだ」
父さんが言っていた。
あと5日でルルは十五歳。
その日までに彼が飛べなかったらその羽根を切り落とすって・・・・
______そんなの嫌だ。
「翼を広げて、ルル」
少年は頷くと背中に折りたたんでいた白銀の翼を広げた。
大きな翼は、彼の身長の倍はある。
翼が風の抵抗を受けて自転車はもっと重くなるがそんなことは問題じゃない。
もうすぐ坂のてっぺん。
風を受けてルルの体が浮かび上がる。
「ルル、行って!」
少年は頷いて羽根を動かす。身体がどんどん地上から離れていく。
_______やった、成功したんだ
少女は、坂を下りながら少年が空へ登っていく姿を見た。
「クーア、やっぱり僕・・・!」
風が、止まった。
「あぁ!」
少女は叫んだ。
少年の翼が羽ばたくのを止めたのだ。
糸が切れた凧のようにその体は下へと降りていく。
「ルル!」
叫びながら少女は、坂を下りている途中の自転車から飛び降た。
上手く着地出来ず坂を転げ落ちる。
一番下まで転げ落ち少女は、いててと飛び起きた。
すぐに辺りを見渡し少年が少し先の道端に倒れているのを見つけ駆け寄る。
「ルル、大丈夫?」
「う・・・」
少年は、呻いた。身体は泥で汚れているだけで何処にも怪我はないようだ。
羽根もどこも折れている様子はなく、大丈夫そうで少女は安心し息をついた。
ルルは、翼人。
島で、世界で最後の生き残りかもしれない人。
飛べない翼人なんていない。
(生きていくには翼が無い方がいい。飛べなければ邪魔なだけだ_______ルルにとってこの島で生きていくには・・・・翼は、障害だ)
_______生きていくのに不自由じゃないよ。ルルの翼は障害なんかじゃない。
少年の翼は少女の夢。
綺麗な白銀の翼が、切り落とされてしまったら少女の夢まで奪われてしまいそうで。
目の前が真っ暗になった。
続きモノ。
元気な女の子クーアと賢く優しい少年ルルのお話です。
投稿はゆっくりだと思いますがよろしくお願いします。