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「失敗は成功のもと」と言うけど、他人の金で夢を見た人間が言っていい言葉じゃない

作者: 野志田千亜
掲載日:2026/03/14

はじめまして、野志田千亜です。

初投稿です。拙い文章ですが、よろしければ覗いていってください。

私のお仕事はケーキ屋さん。

子供の頃からの夢だったケーキ屋さん。

可愛いコックコートを着て、可愛いケーキを作るの。

それをお父さんが叶えてくれた!

チョー嬉しい!!


それでも仕事って大変。毎日がてんてこ舞いだったから、アルバイトを雇ってみたの。

でも、そのバイト、全然役に立たなくて、ため息出ちゃう。


私が「これが必要」って頼んだ材料、全然違うのを買ってくるの。

そのせいで私のこだわりのケーキが作れなくなって、お店の評判まで落ちちゃった。


何もかも、あのバイトのせいなのに、何の責任も取らないで辞めちゃった。

チョームカつく。

お陰でお店は閉店………。

チョー最悪。


でも、失敗は成功のもと、前向きにいこう!!





「──っていうのが、SNSに投稿されたメッセージです」

 ここはとある地方の中小企業の休憩所。そこのベンチに腰掛けて、一社員の咲川美里乃は、同僚にスマホの画面を見せた。画面には、キラキラした絵文字とは裏腹に、呪詛のような他責の言葉が並んでいる。

「え……、何これ……」

 同僚は引きつった表情で、スマホと美里乃の顔を交互に見た。

「ホント、何これ、ですよ……」

 美里乃は深く、重いため息を吐き出した。

「これ、課長の娘さん?」

「そうですね……。今年、専門学校を卒業してパティスリーに就職したって聞いてたんですけど。すぐに辞めちゃったみたいで」

「でも、自分の店をオープンさせたんじゃなかった?」

「はい。課長が定年退職した時の退職金を全部つぎ込んで、自宅を改装して店にしちゃったんです」

「それで、ここに書いてある『使えないバイト』っていうのが……」

恐る恐る同僚が美里乃を見る。

「私です……」

「ええ!? 何であなたが!?」

「課長に頼まれたんですよ。娘が車を運転できないから買い出しに行けない、人手も足りない、美里乃さんは気が利くから助けてやってくれって。副業になればと思って引き受けたんですけど……まさか、あんなだなんて」

 美里乃は遠い目をして続けた。

「免許は持ってるけど、完全なペーパードライバー。自分で買い出しいけないんです。なのに、日本屈指のケーキ激戦区のこの街で、修行もそこそこに店を開いちゃって……。案の定、お客さんの舌は肥えてるから口コミはボロボロ。でも彼女、自分のレシピが悪いとは微塵も思わないんです」

「どういうこと?」

「ケーキが売れないのは私の掃除が足りないからだとか、私が買ってきた食材の質が悪いからだとか、全部私のせい。予算も満足に渡されないのに『工夫して良いものを仕入れるのがあなたの仕事でしょ』って。ガソリン代も私の自腹ですよ?」

「……それは、あまりにもひどいわね」

「おまけに雇用契約書をお願いしても『お父さんのコネなんだから水臭いこと言わないで』ってスルーされて、結局お給料も未払いのまま。頭にきたから辞めて、証拠を揃えて労基署に通報してやりました」

 美里乃はもう一度、スマホの画面を指で叩いた。そこには『何もかもあのバイトのせい』『責任も取らずに辞めた』という、現実をねじ曲げた投稿が躍っている。

「それで、逆ギレしてこの投稿です。人生なめてるというか、なんというか……」


「『失敗は成功のもと』って……、他人の金で夢を見た人間が言っていい言葉じゃないですよ」


失敗は成功のもと、ではあるのだが、まずは「責任」っていう言葉の意味を辞書で引いて、それから社会の底辺でレジ打ちの修行でもやり直してくればいい、と美里乃は思った。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

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― 新着の感想 ―
方向の間違っている努力は意味がないといいますが、 失敗からきちんと学ばなければ、また同じような失敗を繰り返すだけになってしまいますね。
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