ゴリラピンチ!クラスは嫌なやつばかり、地獄の高校生活の始まりか!?
チュン、チュン、クルックー、クルックー、クルックー
サトシが目を開けると目の前には鳩の顔があった、サトシは野鳥に好かれるタイプで周りには鳩や雀が集まりうろうろしていた。
何とか上体を起こすサトシ。
「痛たた~頭がガンガンするウホスウホ」
……あれ?俺はいったいここで何をしているんだ?
「ウホーーー!!」
何かを思い出したサトシ、びっくりして鳥たちがバサバサバサと飛んで行く。
「今日は高校の入学式だぁ!」
サトシはウホウホ大慌てで学校へとなめらかに走った。
* * * * * *
都立玉金高等学校。
ウホッウホッ、サトシは自前に知らされていた自分の教室、一年三組の引き戸を勢いよく開いた。
バンッという音にびっくりしてクラスメイト全員がサトシに注目する。
そこには登校中に出会ったマスクの少女も居て、サトシの存在に気づくと机に伏せた。
サトシが教室に足を踏み入れると、クラスメイト達は何事もなかったようにそれぞれ雑談や読書に戻った。
どうやら授業には間に合ったようだとほっと胸を撫で降ろしたサトシだが、何者かに突然後ろから蹴りを入れられ床に倒れる。
「こんな所で突っ立ってんじゃねえよゴリラ。」
「うははは、いきなり蹴るとか忠敏やば杉。」
蹴りを入れたのは穴熊忠敏という、うす茶色のツーブロックソフトモヒカン風ヘアの鋭い目をし、両瞼から目袋にかけて縦線のような痣があるヤバイ男で、ネクタイはせず、シャツはちくびが少し見え隠れするくらい開けて、右手に持った鞄を肩にかけてサトシを蔑むような眼で見下ろしていた。
彼の後ろには取り巻きの一夜と鉄がにたにたして立っている。
サトシが床に手をつき起き上ろうとするが、忠敏はサトシの頭を思いきり踏みつけ顔面を床に強打させて何事もなく通り過ぎて行った。
そこへ担任の先生がやって来た。
「みんな席に着けー。」
丸メガネをかけた長身黒髪イケメンの担任、綾小路一郎は、手に持った何らかのプリントを見ていて、床に倒れているサトシに気づかずに直進した右足でサトシの股座に思い切り蹴りを入れる。
玉に走った物凄い激痛に口から泡を吹いて完全に気を失うサトシ。
思わぬ障害物に足を取られバランスを崩した担任はサトシの上に倒れ、その衝撃で丸メガネを床に飛ばした。
一郎は手を支えに上半身を起こして自分が倒れかかった物を見る。
「何だこれは!?……」(物凄いイケボだ。)
黒くてフサフサしている大きな物体だが、一郎は視力が悪くて何かよくわからない。
再び顔近づけクンクンと匂いを嗅いでみる……わからん。
手で触り心地を確認……ん、気持ちいい
「ああ、何だかモフモフする……たまらん」(イケボだ。)
そうなのだ、綾小路一郎二十九歳、牡羊座O型独身の彼は大のもふもふ好きなのだ。
玉金高校の教員達の間では、『猫にマタタビ、綾小路にもふもふ』という諺で知れ渡っているほどだ。
頬を染めてよだれを垂らし頬ずりに夢中になる担任を、目の前の席で頬を染めながら眺めている前髪ぱっつん黒髪ロングの頭が良さそうで品のある少女は、学級委員長の白井華だ。何故かごくりと唾を飲んでいる。
その時だ、一郎の顔にバシャーーンと大量の水が降ってきた。
「マジありえないんだけど、キモすぎ」
鼻からも喉からも大量の水を吸い込んで咽る一郎先生。
空になった水色のバケツを手に持ちそこに立っていたのは銀髪ギャルの本田輝美。元ヤンの問題児だ。
彼女は一旦無言で立ち去った。
ゴホッ、ゴホッ……オェ、まだ苦しそうにしている先生。その時だ!
バシャーーン、追い打ちをかける様に、また大量の水が一郎先生を襲う。
ゴボゴボゴボ、ゥオエ、ゴホッ、ゴホッッツ
水を汲みに行っていた本田が戻ってきたのだ。
「コージーめっちゃ鼻水出てんじゃんウケる」
本田は担任の綾小路の事を略してコージーと呼んでいる。
一郎の咳が収まるのを待って「ほら」っと拾ったメガネを差し出す本田。
長く続いた咳に体力を奪われた先生は、息を切らしながら酸欠に震える手でメガネを受け取り、耳にかける部分で目を刺しそうになりながらも何とかちゃんとかける事が出来た。
本田は先生がメガネをかけるのを確認すると、拾い集めてあったプリントを「はい」っと渡し自分の席(一列三番目)に向かった。
女子高生に叱られてちょっぴりしょぼんとした担任は、ゆっくり立ち上がり身なりを軽く整え教卓の前に立つ。
びしょびしょの先生を見て何故か頬を赤く染める華。
「……それではホームルームを始めます」落ち込んだ声もイケボだった。




