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第二話 ソロモンへ

 「ミッドウェー海戦」は日本の勝利に終わった。「加賀」「蒼龍」の被弾後、無傷で生き残った「赤城」「飛龍」が発進させた第二次攻撃隊は、空母「ヨークタウン」を撃沈、さらに第三次攻撃隊が編成されこちらは「ホーネット」を撃破、「エンタープライズ」にも打撃を与えた。

 米海軍第16・17任務部隊は、主力部隊(山本五十六大将直率)の接近を知ると撤退、日本海軍はミッドウェー島の占領に成功した。一方、被弾した空母「蒼龍」は内地に帰還できたが、大炎上した「加賀」は消火活動も空しく復旧不能と判断され自沈処分された。


 この海戦では、空母の誘爆対策の必要性や秋月型、対空電探の有効性が証明された。一方、阿賀野型軽巡の存在には再び疑問符が付けられた。対空火器の不足が指摘されたのだ。せめて長10センチ高角砲を連装で4基は欲しいとの現場からの声により、3番艦以降の設計変更が計画されたりもした。



 8月7日、日本海軍が飛行場を建設していたガダルカナル島にアメリカ海軍海兵隊が上陸、長きにわたるガ島攻防戦が始まった。


 日本軍は、第八艦隊、第二十五航空戦隊による反撃を試みた。しかし、ラバウルーガダルカナル間は1,000キロメートルと非常に距離が離れており、航空作戦が困難であるとして空母機動部隊の派遣を求める声(特に泊地への殴り込み作戦を計画していた第八艦隊が主張)が上がった。これに対し、第三艦隊(第一航空艦隊を改組)は「主力空母はいずれも内地におり、即時派遣は不可能」としながらも、第四航空戦隊(空母「龍驤」「隼鷹」)を派遣した。四航戦は、内地に戻った主力空母群の圧詰めとして7月18日にトラックに進出していたのだ。


 小規模ながら空母機動部隊の支援を受けられることを知った第八艦隊は、四航戦の出撃に合わせ8月9日夜のガ島突入を計画した。


 一方、トラック泊地の四航戦は出撃準備を始めていた。「阿賀野」の姿もそこにあった。



 「阿賀野」はミッドウェー海戦後、内地に帰投していたが、四航戦の護衛としてトラックに進出していた。「阿賀野」は7月14日付けで第十戦隊旗艦の任を解かれ、四航戦附属となり、旗艦は軽巡「長良」に引き継がれた。「長良」は2月17日に英潜水艦からの攻撃によって損傷し、その修理も兼ねて防空巡洋艦に改造されていた。空母を守る部隊の旗艦は防空能力も高い方が望ましいと判断されたからだ。


 その結果、役割がなくなった「阿賀野」は四航戦の護衛艦として動員されることになる。水雷戦隊旗艦にすべきだ、防空能力を強化すべきだ、複数の空母機動部隊を動かすため新たな空母護衛部隊を結成するべきだなどの意見も出たが、結論が出ぬまま四航戦とともにトラックに進出した。そして宙ぶらりんな状態のまま新たな作戦行動をとることになってしまったのだ。


 8月7日、四航戦はトラック泊地から出撃、翌8日には第八艦隊もラバウルを出て一路ガダルカナルを目指した。


 第八艦隊 司令長官:三川軍一中将

 【重巡洋艦】「鳥海」(旗艦)

  第六戦隊【重巡洋艦】「古鷹」「加古」「青葉」「衣笠」

  第十八戦隊【軽巡洋艦】「天龍」

  第二海上護衛隊【軽巡洋艦】「夕張」

   第二十九駆逐隊【駆逐艦】「夕凪」


 支援部隊 司令官:角田覚治少将

  第四航空戦隊【空母】「隼鷹」【軽空母】「龍驤」

        【軽巡洋艦】「阿賀野」

   第七駆逐隊【駆逐艦】「曙」「漣」「潮」


 四航戦の護衛は先述した「阿賀野」と輸送任務を終え、内地に向かうところを呼び止められた第七駆逐隊だ。空母機動部隊と殴り合うには心もとない戦力だが、上空直掩任務には役に立つだろう。


 しかし、当の四航戦司令官はその程度の任務で満足する人物ではなかった……



 8月9日 8時20分

「攻撃隊、全機準備整いました」

 飛行長の報告に四航戦司令官角田覚治少将は大きくうなずいた。艦橋の外には飛行甲板に並べられ、発動機を唸らせる零式艦上戦闘機と九九式艦上爆撃機の姿が見える。


 第三艦隊が命じた四航戦の任務は「第八艦隊の支援」、ここで言う支援は上空直掩のことを指していた。

 しかし、角田は猛将として知られる指揮官だ。彼は支援と言う言葉を過大解釈し、輸送船団への攻撃を目論んだ。さらに8月7日に二十五航戦が、ガ島沖の輸送船団を攻撃するも艦載機と思われる戦闘機に迎撃された、と知ると米海軍の空母機動部隊が近くにいると確信、敵空母の撃破をも計画した。

 四航戦は9日払暁とともに偵察機(九七式艦上攻撃機12機)を出していた。角田は、ミッドウェー海戦の戦訓を踏まえ、手持ちの九七艦攻(「隼鷹」「龍驤」にそれぞれ9機ずつ計18機)の大半を偵察に使うという思い切った手に出たのだ。


「それで、結局空母は見つからんか」

「はい、残念ながら」

 角田の問いの首席参謀が答える。米空母は見つからなかった。二十五航戦と共同して輸送船団攻撃を行おうと目論む四航戦に時間は残されていない。角田は決断した。

「仕方あるまい。攻撃目標は敵輸送船団とする」


 8時30分、「隼鷹」より零戦9機、九九艦爆18機、「龍驤」より零戦9機、九七艦攻6機の計42機が発艦しガ島を目指した。



 次々と空へと舞い上がる艦載機、それをどこか口惜しそうに眺める人物がいた。「阿賀野」艦長中川浩大佐だ。新鋭軽巡の艦長を拝命し四か月、これまでやってきたことは空母の護衛のみである。大切な任務ではあるが、駆逐艦艦長を歴任した中川にはやはり水上戦をやりたいという思いがあった。しかし、すでに海戦の主役は空母と航空機に移っている。この「阿賀野」が水上戦をやる機会は訪れるのか——攻撃隊を見送りながら中川はそう思った。

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